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経済学部
2015年03月23日

経済学特殊講義(ゲーム理論入門A)(土橋先生)

開講される学科:社会経済学科

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「経済学特殊講義(ゲーム理論入門A)」とは、どのような授業ですか?

 この授業では、ゲーム理論の考え方を教えています。ゲーム理論というのは、名前からすると何か楽しい内容を想像させてしまうかもしれませんが、もとは応用数学の一分野です。また、これは経済学に限らず、生物学や政治学、ビジネス、法学といった様々な分野で使われている理論になります。ですから分野(対象)は何でも構わないのですが、例えば人や企業、動物や植物などをゲームのプレーヤーと捉えて、簡単にいえば相手より少しでも優位に立ちたい、あるいは得点を上げてできるだけ自分を有利にしたいというように、利害の対立する2人以上が関わる物事をあたかもゲームの勝ち負けを争う状況に見立てて分析するというものになります。
 具体的なゲーム理論の考え方としては、例えば「囚人のジレンマ」というゲームがあります。これは、お互いに協力した方が裏切るよりもよい結果が得られると分かっていながら、お互いが自分の利益を優先させると、結局は裏切りあって、よい結果にならないという概念を表したものです。この「囚人のジレンマ」の概念を踏まえて、「節電をするか、しないか」ということについて考えてみましょう。電力不足のとき、みんなが節電をしないと、ある段階で全員が電気を使えなくなるということは、みんな共通で認識しています。その状況下で、一人ひとりが節電をするのか、しないのかということを考えてみると、たいていの人は自分以外の全ての人が節電してくれるのであれば、自分は節電しなくても済むと考えます。みなさんも、できれば自分だけはクーラーの効いた涼しい部屋で快適に過ごしたいと思いますよね。この考え方でいくと、他の人が節電するなら自分は節電しなくてよいということになります。一方で、もし他の人が節電しないのであっても、今さら自分一人だけ節電しても仕方ないという考えになって、結局は節電しないという行動を選びます。ですから、誰もが節電したほうがよいと分かっていながら、自分の利益を考えて戦略的に行動すると、最終的には誰も節電をしないという結果になってしまうのです。このように個々の選択について考えていくことで、最終的な目標の達成が非常に難しいとわかるのが「囚人のジレンマ」と呼ばれる概念で、ゲーム理論の重要な考え方の一つです。

授業でも、今のような例を取り上げて説明されているのですか?

 そうですね。「経済学特殊講義」という名前はついていますが、必ずしも経済学の現象だけを扱うのではなく、より身近でシンプルな題材を使いながら、ゲーム理論の考え方を説明するようにしています。簡単なところでは、じゃんけん。これも2人以上の人がいて、相手がどういう手でくるかを読み、自分が勝てるように考えるという典型的なゲームですよね。また、サッカーのPKなども取り上げています。あるいは、ご存知かどうか分かりませんが、ジェームス・ディーン主演の古い映画『理由なき反抗』に出てくるチキンレース(チキンゲーム)。車2台を崖に向かって走らせ、先にブレーキを踏んだ方がチキン(臆病者)だから負けというゲームで、意地を張って最後までブレーキを踏まなければ、崖から落ちてしまうというものです。そういう状況で、お互いにどちらが先にブレーキを踏むのか、もしくはブレーキを踏まないのかという行動を簡単なゲームに置き直して分析するということもしています。
 それから授業期間の中盤には、ゲーム理論を使って分析できる経済学の典型的な事例を扱ったりもします。例えば、2つのビール会社があって、一方の会社が新製品をいつ、いくらで、どのくらいの数、発売するかを考えるときは、その会社のことだけを考えていればよいわけではありません。ライバル会社が、自分たちの動きに対してどんな反応をとるか、新たにどういう製品を出してくるかといったことを見込んで行動しなければならないのです。しかし、ライバル会社ももう一方の会社と同じようなことを考えて、新商品の発売日などを決めてきます。このようにお互いがお互いのことを考えたうえで、できるだけ自分が有利になるような行動をしようと双方が考えた場合、結果的にどんなことが起きるかということを分析するのが、経済学におけるゲーム理論の使い方の一例です。ちなみにこうした企業の行動原理は、クールノー競争と呼ばれるスタンダードな経済学のモデルです。

授業を進める上で、工夫されていることはありますか?

 授業中、ゲーム理論を使って分析するときは、「ゲームの木」と呼ばれるものをつくって考えていきます。先ほどのビール会社の例で言えば、一方の会社がAという行動を選択するかBという行動を選択するか、その場合、ライバル会社はCを選択するか、Dを選択するかというように、それぞれが選択できる行動を表していくのが「ゲームの木」です。また、時には数式を使う場合もあります。ただ、経済学部の学生の中には、入試科目で数学を選択していない人もいるため、数学が苦手な人も少なくありません。ですから数学に苦手意識のある学生がいることを前提に、授業では一から丁寧に説明するようにしています。そのうえで授業中に練習問題をいくつか用意し、難易度を少しずつ高める形で問題を解いてもらっています。もちろんこの練習問題は試験ではないので、解くときに周りの人と相談してもよいし、協力し合って解いてもよいことにしています。そういうふうに学生自身に手を動かしてもらうことを繰り返して、数式に慣れてもらっています。

では授業を通して、学生にはどういうことを理解してもらいたいですか?

 ゲーム理論では、まずは常に相手がいるということ、そしてその相手も色々と考えて行動するのだという考え方が重要になります。2人以上の人がいる状況では、自分だけの意思決定で行動し、自分だけがその影響を受けるのではなく、他の人が自分の行動の影響を受けたり、逆に他の人の行動に自分が影響を受けたりという相互依存の関係が必ずあります。そういうときにゲーム理論の考えを使って、自分がこういう行動をとったら相手はどう反応するのか、どう思うのかという相手の行動を分析したうえで、意思決定することが大切なのだと理解してもらいたいと思っています。ある状況で何が起きるのかという問題に対して、ゲーム理論を使えば、非常に精度の高い予測を得ることができますからね。また、先ほどの節電の例でいえば、最初は「みんな節電に協力するに決まっている」と思い込んでいる人も少なくないと思います。しかし、実際にゲーム理論で分析してみると、当初のイメージが覆り、いかに自分たちの直感があてにならないかということがわかったりするわけです。こういう自分たちの思い込みを疑ってみるということも、経済学に限らず、あらゆる分野で重要な姿勢だと思いますね。

最後に受験生や高校生へのメッセージをお願いします。

 高校生や受験生にとって経済学というと、いわゆる“需要と供給”が全てであるように思うかも知れませんが、実際はそうではありません。先ほど例に挙げた、じゃんけんやPKのことも、さらに言えば合コンで誰もが後悔しないカップルのつくり方みたいなことだって経済学の範囲で考えることができるのです。そのくらい経済学は、幅広いテーマを扱う分野ですから、まだ具体的に学びたいことが決まっていない高校生・受験生の方は特に、経済学を勉強してみることをおすすめします。経済現象以外にも幅広いことが学べる経済学の世界に、ぜひ足を踏み入れてみてください!


この内容は大東文化大学メールマガジン2014年7月号において配信した内容です。
そのため、他の授業ゼミ紹介ページと原稿テイストが異なります。

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