高橋学務局長(以下、高橋):世界選手権(1975年)、モントリオール五輪での金メダル(1976年)をはじめ、現役時代は華々しい活躍をされた上村先生ですが、現在講道館の館長として心がけていること、また目指していることは何でしょうか。
上村館長(以下、上村):嘉納師範が常々言われているのは「柔道の修行を通じて人格形成し、世の中のためになれ」ということです。1909年に師範がIOC委員を引き受けたのは、柔道精神そのものがオリンピズム、すなわち「オリンピックとはスポーツを使った青少年の健全育成、そして国際交流による世界平和」という哲学に共鳴したからにほかなりません。ですから、競技としての柔道を世界へ普及していくことはもちろん、人づくりとしての柔道も広く伝えていかなければなりません。