1985年、トンガ伝統の巻きスカート姿で成田空港に降り立つと、全身がぶるぶると震えた。
「2月2日だったね。日本のことは何も知らなくて、冬ってこともわからずに巻きスカートで来たから、めっちゃ寒くて。だからあの日のことは忘れられないです」
俊足のラガーマン、ワテソニ・ナモアと来日した。同胞2人の勉強不足を見越し、冬服を抱えて空港で出迎えてくれたのが、先輩のホポイ・タイオネとノフォムリ・タウモエフォラウだ。2人は80年にトンガ国王が大東文化大学に送った留学1期生で、ラグビー部で活躍したのち、日本に残って就職した。日本代表としてもプレーしており、トンガでは英雄的存在として知られる。
トンガと大東大を結びつけたのは偶然の出会いだった。75年、商業簿記が専門で、大東大ラグビー部長だった故・中野敏雄名誉教授がニュージーランド遠征の際に、トンガの教育次官とたまたま飛行機内で隣り合わせた。聞けば「親日家の国王がそろばん大会を開く」という。そろばん話に花が咲き、その日にトンガ国王に謁見する運びになった。
その後、国王から「そろばん留学生」の受け入れを依頼された中野名誉教授は、自身がラグビー部で支援できるように「ラグビーのうまい子が欲しい」と伝えた。そして80年に1期生として来日したのがホポイとノフォムリだった。以降、大東大ラグビー部で活躍したトンガ出身の選手は29人を数える。