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「企業と雇用A」・第2セッション(グローバル商社の魅力と将来性)報告

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 「企業と雇用」第2セッションは「グローバル商社の魅力と将来性」。東亜電気工業株式会社の岩渕知行氏(総務部人事課・シニアマネージャー)に講師をご担当いただきました。

 なお、東亜電気工業株式会社では、国際関係学部の卒業生が1年目社員として活躍しています。

1時間目(10月20日)

 東亜電気工業は「エレクトロニクスの専門商社」。「あらゆるところに『東亜電気』の棲み家が!」というフレーズに違わず、自動車、プリンタ、スマホ、パソコン、カメラ、家電製品など、わたしたちの暮らしを助ける製品、そこに使われる電子・電気・オプティカル部品や材料等、約3万点を扱っているそうです。戦略的な強みの一つです。

 東亜電気工業を一言で表現すれば「世界中のMonodzukuriを実現する会社」。「世界中のお客様のものづくりを、グローバルネットワークを活用した最適な価値創造で実現します」と岩渕氏。事業内容の詳細、海外での売上げが年々増加傾向にあること、そして、スーパーコンピュータやAI(人工知能)や交通インフラなど新規分野への事業展開の具体的な事例も説明されました。

 世界と日本の人口予測をふまえたグローバル市場の動向が簡潔に説明されました。購買力の中心は73億の人口を擁するアジア・アフリカに確実に移行していること、したがって「アジアの成長モデルが変化する中で日本が果たすべき役割が変わる」。

 商社のグローバル化とは? 二つの方向が明示されました。第1は、販路を持たないメーカーの「独占販売権」を取得し、国内外の販売網を活かし代行販売をすること。第2は「商社機能」に「メーカー機能」を加える方向。すなわち自社で工場を保有し製造販売体制を構築するということ。

 時代環境や世界的な技術動向の多様化・スピード化に対応した東亜電気工業のビジネスフィールドが提示され、課題との関連でとりわけ「企業創生ビジネスユニット」の将来性が強調されました。

 課題の提示の前に「グローバルで求められる人物像」。「社会人基礎力」に加え、異文化理解の力を強調されました。国際関係学部の目指す人材像と重なるところです。その他「理想と希望を実現するための強い起業家意識」や「ファジーやグレーは通用しない!」等、グローバル商社に不可欠なコンピテンシーが、ご自身の海外駐在の体験をふまえて説得的に語られました。

課題

 低コストで製造する新興国の存在。商品は大量生産されるが、次世代型に移るスピードが速い。商社は、国内外を問わず幅広い分野に販売展開ができる。これらの三つの条件を前提に、以下のような課題が提示されました。

 商社機能を軸に、どのような「コラボレーション」を創造し、国際ビジネスモデルを構築しますか? 具体的なビジネスフローを考案し、提案せよ。

 岩渕氏は、来週から課題解決に取り組む学生に向けて、新入社員にも徹底するという「三カク運動」の話をされました。「汗をカク」「恥をカク」「紙にカク」の「三カク」です。とりわけ「紙にカク」は、考えを整理するためにも、説得力を高めるためにも重要な構えだと思います。3時間目のプレゼンの際に、すべてのグループが、岩渕氏から「図解」すなわち「カク」ことを求められることになります。

 

 当日は、岩渕氏のほか、落合理恵氏(総務部人事課)にもご参観いただきました。

2時間目(10月27日)

 課題のキーワードは「コラボレーション」。まずは議論のきっかけを得るために、次のようなトピックでブレストを行ないました。「10年後の日本社会はどんな社会か?」「10年後日本社会において、多く人が直面する「困ったこと」は何か?」「10年後のアジア地域はどうなっているだろうか?」「10年後のA・A地域ではどんな「困ったこと」が生じるか?」。

 困ったことを解決するためにどんなビジネスが考えられるか? どのようなコラボでビジネスを展開できるか? なかなかの難問です。

3時間目(11月10日)

 どのような「コラボレーション」事業が提案されるのでしょうか。G6は、2020年東京五輪に向けて外国人観光客が増加することと、グローバル人材として外国語のスキルを向上させたい若者層の存在に着眼、旅行会社と英会話学校等の語学スクールを結ぶ事業を行う会社を提案しました。

 G5は、アジア諸地域において、ハラールなど宗教に配慮した食材などを手がける食品加工会社の提案です。

 G4の提案は「バイオマスエネルギー資源の提供及び森林の管理」。国内の材木業者から出る廃材や端材を木質チップに加工する工場を設立。冷暖房やボイラーのメーカーと契約しチップを燃料とする商品を開発、まずは国や自治体の施設への普及を試みるといいます。

 G3は、インドネシアにおいてゴミを再利用することで文房具を製造する会社を設立するという提案。G2は、中国におけるエネルギー資源開発プロジェクト。ソーラーパネルが主軸になりそうです。

 G1は、日本の介護士不足を「介護用通訳ツール」の開発によって解消するCDAIの提案。日本とドイツやイタリアの技術と、東南アジアの労働力のコラボ事業。

 6つのグループは、岩渕氏から、提案内容を黒板に図解するよう指示されました。「三カク運動」の実践です。図を描くことで、提案がかなり具体的になる反面、ビジネスフローとしては詰めの甘さが目だっていました。岩渕氏と落合氏には、学生たちが智恵をしぼった提案の真意を汲み取るべく、熱心にさまざまな角度から丁寧な質問を繰り返していただきました。

 最優秀に選ばれたのは「バイオマスエネルギー資源の提供及び森林の管理」を提案したG4。提案内容が具体的でビジネスとしての可能性が感じられること。プレゼンが論理的に構成され発表も明解だったことが評価されました。準優秀はG1に。介護用通訳ツールというアイディアにはもっとも拡がりが感じられたと岩渕氏。

まとめ

 岩渕氏のいう「三カク運動」のポイントは「汗」と「恥」と「紙」です。「エレクトロニクスの専門商社」を標榜するグローバル商社の原動力を垣間見た思いです。今回の取組みには2週間という限定があり、「紙にカク」を実行することは辛うじてできましたが、さすがに「汗をカク」ことができたグループはなかったようです。

 「恥をカク」はどうでしょうか? 学生にはもっと恥をかいてもらいたかったと思います。「10年後の日本で多くの人が困ることは何だろうか」「10年後のアジアにおける『困った問題』は何だろうか?」。どのグループのワークシートにも版で押したように「少子高齢化」「環境汚染」「食料問題」等々の言葉が記されています。出来合いの言葉を並べて問題を発見したつもりになっているうちは思考が深まることは絶対にありません。若い学生がほんの少し想像力を働かせればもっと違った「困った」が出てきたはずです。

 「困った」への貧困な想像力からは、グローバル商社を牽引するような斬新なコラボレーションが生まれるはずはありません。「恥」をかくことを恐れずに、思い付きをどんどん言ってみる。実に簡単なことです。グローバル商社には、案外こんな態度こそがもとめられているのではないでしょうか?。

 

謝辞 

 このセッションを通して、商社という業界への理解がより深まり、国際関係学部で学んだ異文化を糧にグローバルなマーケットで活躍する学生が増えることを期待したいと思います。多忙なスケジュールの合間を縫って、課題出しをご担当いただき、学生に「コラボレーション」の意義をご教示いただいた東亜電気工業株式会社の岩渕知行氏と落合理恵氏には深く感謝する次第です。