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「大学生のための県内企業魅力発見事業」報告・問題解決学入門(2)

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 「問題解決学入門」(キャリア特殊講義)は、細田咲江先生(株式会社ベネッセi-キャリア担当講師)の指導の下で、40名の1年生が、二つの企業の経営課題に取り組む授業。後半セッション(Project B)を、2回に分けてレポートします。

新規蒔き直し

 5月27日に「Project A」(前半セッション)の最終プレゼンが終了すると、ほのかな達成感や感傷に浸っている暇もなく、翌週には、慣れ親しんだチームを解散。新規蒔き直しです。「Project B」のため、新しく6つのチームが編成されました。「T-ボーダー姿勢」「T-BIG 6」「T-SUGARLESS」「T-Sunflower」「T-Metropolitan」「T-Country」

 新チームでは、「Project B」を前に、Critical Thinking(クリシン)やディスカッションの技法など、課題解決に必要なスキルをブラッシュアップ。まとめの演習として「1兆円で日本を元気にするプロジェクト」の企画書を作成しました。事業内容は、次の通り。「地域活性化を目指して地域の歴史や伝統を生かした建造物の建設」。待機児童問題を解消するための「保育園の増設」と「保育士の給与アップ」。「フランスの少子化対策に学んだ出生率アップのための施策」「火山の多い国土利用による地熱発電所の建設」「観光先進国NIHONによる日本の国際化」。

課題出し(Missionの提示)

 「『Project A』からどれだけ成長しているでしょうか。大いなる飛躍を期待しています」(細田先生)。6月17日には、後半セッシン(Project B)の課題出しが行われました。

 後半セッション(Project B)で課題出しをご担当いただく企業は「株式会社アドバンスサービス」。40名の学生のボスは、永島信之代表取締役です。アドバンスサービスでは、社員の誰一人として、永島社長のことを『社長』と呼ばす『のぶさん』という愛称」で語りかけてくるのだそうです。そういえば、永島社長から頂戴した名刺にも、写真の下に「通称:のぶさん」とあえて明記してあります。和気藹々として、活気に満ち溢れた職場のようすが目に浮かびますが、ここまでの道のりはけっして平坦でも順風満帆でもなかったようです。

 大学卒業後に「平凡な大企業の営業職」に就くも「営業ノルマに追われる人生」への疑問から退職。永島社長から、紆余曲折を経て、現在のアドバンスサービスを創業するまでのさまざまな体験談が語られました。創業後、業績が向上していくにつれ「人をお金で動かす人間」になってしまっていること、そこに倒産の危機さえ感じた永島社長は、経営者とは何かを一から考え抜き、心機一転、現在の「のぶさん」に生まれ変わったのだといいます。

 社長の改心は、社員のイキイキした表情と活気のある職場の雰囲気となってあらわれ、離職率が目に見えて低下していったそうです。「うちは値段では勝負しない」と永島社長。「利益率を上げれば、社員に還元できるからです」。埼玉中小企業家同友会がその基本理念に掲げる「社員を生かす経営」が見事に実践されているように感じました。

 課題出しの前置きとして、永島社長から「就職のための『ちょこっとアドバイス』」をお話いただきました。「人は何のために働くのか?」業種にかかわらず「顧客からありがとうと言われ、感謝されるためではないのか」。「よい会社とは?」「継続収入がある会社」「10年後の自分が予測できる会社」。「10年後主任、20年後課長、30年後部長でいいのか?」。これからは「手に職」の時代。誰にでもできる「総務と営業職」の将来はきびしい等々。次から次へと、学生の「常識」に揺さぶりをかける刺激的な言葉が飛び出していました。

課題(Mission)

 永島社長からは、以下のような課題(ミッション)が提示されました。

 あなたは、アドバンスサービスの新規事業プロジェクトメンバーに選出されました。今後の社会情勢を考慮して、ビルメン事業部・家事代行事業部に加え、新しく3本目の柱となる新規事業を考え、提案せよ。

 

 新規事業の考案に際しては、以下の4つの条件を満たす必要があります。条件1:3年で軌道に乗せること。条件2:「密着軸」であること。条件3:鉄砲玉産業であること。条件4:シナジーがあること。

 それだけではありません。4つの条件に加えて、新規事業戦略(BASiCS)を明確化することがもとめられています。「B(戦場)」「A(資源)」「S(強み)」「C(顧客)」「S(セーリングメッセージ)」。戦場を探し、戦場の課題を発見する。課題を解決できるサービスを検討する際には、当社の独自資源=強みを生かせることが大前提。具体的な顧客と顧客を惹き付けられるメッセージに智恵を絞ってもらいたいということ。  

 学生たちが、限られた時間で、効率的な問題解決が進められるよう、最大限の配慮がなされたミッションになっています。ここにも「社員を生かす経営」の一端が窺えるような気がします。

質疑

 課題(ミッション)に関して、学生から次のような質問がなされました。「ビルメン事業に家事代行業を加えた理由を教えてください」「新規事業の年間の売上げ目標(マーケット規模)をどのあたりに設定すればよいのでしょうか?」「海外展開を視野に入れていいのでしょか?」「下請けを想定してもいいのですか?」等。いずれも、的を射た「いい質問ですね!」

永島社長から

 課題出しの最後に、永島社長からは、次のような激励の言葉を頂戴しました。「大企業にあるのは『お金』と『知名度』。中小企業にあるのは『知恵』と『スピード』」。「提案された新規事業がよいものであれば、お金を借りてでも実現します。本気です! すばらしい提案を期待しています。」

 Project Aに引き続き、田ノ上哲美、古川佳子両氏の他、埼玉県産業労働部就業支援課の石井悠史にもご参観いただきました。ありがとうございました。

第一次提案(中間報告)に向かって

 6月24日の授業の前半は、6月10日に作成した「1兆円で日本を元気にするプロジェクト」の企画書の発表。それぞれの提案に対して「数字的な根拠が不足」「事業内容の具体性に欠ける」「費用対効果の視点が弱い」「イニシャルコストとラーニングコストのバランス感覚が希薄」「根拠資料の利用法を工夫すべき」「提案事業の継続性や将来展望が欠落」「事業の実効性への視点がない」等、直球のきびしい指摘がなされました。

 7月1日には、第一次提案(中間報告)が行われます。永島社長の食指を動かす魅力的な「新規事業」を案出することができるでしょうか。報告会の終了と同時に、これらの指摘の一つ一つを念頭に、第一次提案に向けた必死の取り組みがはじまりした。