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「アジアとの交わり50年・大東30年」原隆一教授の最終授業が行なわれました。

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 1月20日、7144教室において、原隆一教授の最後の講義が、40名以上の学生や教職員の参加のもとに行われました。テーマは「アジアとの交わり50年 大東30年―体験のなかで学んだこと、教えたこと」。

 「すべてはインドからはじまる」(第1章)。1966年に19歳でインドを放浪したのがアジアと交わるきっかけだったそうです。第2章「イランでの体験(革命と戦争)」では、専門調査員としてイランに滞在した激動の数年間がリアルに語られました。第3章の「大東文化大学時代」では、ゼミ生との学びや現地研修の思い出が、卒業論文集『チャイハーネ』と現地研修報告『ヴァリキャラー』を懐かしそうにめくりながら語られました。

 原先生は、30年以上の研究生活を振り返り「平凡な人間でも、時間をかけて地道にやったものはすぐれているし、後世に残るものになる」。そして、奇しくも、最終講義が同年齢のトランプ大統領の就任式と重なったという原先生。今後の世界を展望しながら「我々は日本人である。アジア人とどう付き合っていくのかをよく考えてもらいたい」と一言。アジア研究者としての熱い思いが、静かなメッセージに凝縮されているように感じました。

 原先生は、ご自身の今後の「夢」にも言及されました。最近、お仕事を整理するなかで、50年前にインドを放浪したときの日記を読み、もう一度インド旅行をしてみたいと思うようになったのだといいます。さらに、恩師の大野盛雄先生がされたように、日本各地をまわり、いろいろなことを調べてみたいとも。アジア研究に専念したこともあり、日本国内をほとんどまわれていないことに気づいたそうです。

 原隆一教授は、1987年に本学に着任、社会学や西アジアの地域研究を中心に教鞭をとってこられました。主著『イランの水と社会』(古今書院、1997年)は、日本国内ばかりかイランの研究者の間でも高い評価を得ています。同書が、ゴドラットラー・ザーケリー氏(Zakeri Ghodratollah)によってペルシア語に翻訳され、2016年9月に、テヘランのチャハール・デラフテ社から刊行されたことはその証左にほかなりません。

 共著も含め著書29点、在外研究33件、科研を中心とする受託研究32件。抜群の研究業績はもとより、教育への熱意も、前述の『チャイハーネ』と『ヴァリキャラー』が雄弁に語ってくれています。

 このようにすぐれた研究者であり教育者でもある原先生から、30年もの長期にわたって授業や演習の場で親しくご指導いただけた学生諸君はたいへん幸運だったと思います。

 なお、原先生には、2017年度も「社会学概論A・B」「西アジアの社会A・B」「ペルシア語上級」を引き続きご担当いただくことになっております。

 インド旅行や日本国内の調査という「夢」の傍ら、国際関係学部の教職員及び学生への変わらぬご指導をお願いする次第です。