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2018年度秋季英文学会が開催されました。

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 2018年11月28日、大東文化大学板橋校舎の多目的ホールで、秋季英文学会が開催されました。

 例年同様、秋季英文学会は二部構成になっており、第一部では、学生有志からなる英文学会委員が「音象徴」についての研究発表を行い、第二部では慶應義塾大学言語文化研究所准教授、川原繁人先生がご講演をしてくださいました。

 午前の部では、研究発表の前に、実行委員が行ってきた活動紹介をし、その後、五班に分かれてそれぞれの研究成果を発表しました。一班は、音象徴とはなにかについて紹介し、二班は濁音の仕組みを解説し、濁音の音象徴についてゲームや映画など具体的な対象を通して考察しました。三班は、オノマトペと音象徴について日本語・英語にみられる事例を紹介し、四班は児童文学、音楽、純文学における音象徴について、実際に本文や音声を用いて発表し、五班は日本文化・日本文学に見られる音象徴について発表しました。

 午後の部では、川原繁人先生によるご講演「続・『あ』は『い』より大きい!?」を拝聴しました。川原先生は、音声学・実験音韻論・理論音韻論、特に音韻論と音声学、形態論や統語論とのインターフェイス論や音象徴、実験言語学一般を専門となさっており、ご家族との身近なエピソードをまじえつつ、わかりやすく音象徴についてご講演してくださいました。

 第一に、わたしたち学生が研究発表の際に参考にさせて頂いたご著書『「あ」は「い」より大きい!?』の内容に即して、音象徴とはなにかについて説明して下さいました。音というものは、その音を発音する際の口の動きが喚起するイメージを帯びており、たとえばわれわれが何かに名前を付けるときなどにも、そのイメージがわたしたちの選択に影響を与えていると考えることができるのです。

 続いて、音象徴の中でも、特に濁音の持つイメージについてお話しして下さいました。濁音には、「大きい」や「強い」というイメージがあり、実際に『ウルトラマン』『ポケットモンスター』『妖怪ウォッチ』などの作品において、濁音が悪役や力の強いキャラクターに多用されています。その理由として、濁音を発音する際に、口腔内が大きく広がるという動きと、濁音が喚起するイメージとの関連を見出すこと――それが川原先生のご研究のポイントの一つであり、濁音を発音する際の口の動きが、その話者/聴者に対して濁音=大きいという無意識の連想を引き起こすのだという観点は、私たちにとって大変興味深いものでした。

 最後に、共鳴音と阻害音の音象徴についてお話しして下さいました。阻害音は角ばった形を連想させ、男性的なイメージを与えやすく、共鳴音は丸い形を連想させ、女性的なイメージを与えやすいのだというご指摘自体がまず刺激的であり、加えて、阻害音は男の子の名前に多く含まれ、共鳴音は女の子の名前に多く含まれるのだという実例を紹介していただいたため、人の「名前」というものの捉え方が根底から揺さぶられるような感覚を得ました。川原先生は、この音象徴と名づけとの関係性を、メイド喫茶のメイドさんの名前に当てはめて調査を進められ、優しい「萌え」メイドの名前には女性らしいイメージを伴う共鳴音が多く含まれているのに対し、強気な「ツン」メイドには男性らしいイメージを伴う阻害音が多く使われているという結果が得られたのだということについてもお話をして下さいました。同様の関係性が、宝塚の男役、女役の役名にも見出されうるのだそうです。

 今回のご講演では、川原先生がご著書で取り上げられている事例のほかにも、多くの事例や研究結果を用いてお話をして下さり、たいへんわかりやすく、なおかつ好奇心をかきたてられながら、音象徴について学ぶことができました。

 質疑応答の時間にも、川原先生と学生たちとの対話が活発に交わされ、たいへん有意義な時間となりました。