ウルドゥー語 

《ウルドゥー語はどこで話されているか》

パキスタンの地図

みなさん、ウルドゥー語とはどこで話されている言葉だと思いますか。
普通、フランス語といえばフランス、ドイツ語といえばドイツで話されているのではないかとおよそ見当がつきます。ところが、ウルドゥー語と言われ、どの国や地域が思い浮かぶでしょうか。おそらく誰にも見当がつかないでしょう。ウルドゥー語とはパーキスターンやインドで話されている言葉で、現在パーキスターンの国語であり、インドの公用語のひとつであります。

《ウルドゥー語の起源と歴史》

ウルドゥー語のもとはインドのデリー周辺で話されていたカリーポリー方言であったと言われています。それが10世紀頃ペルシア語やアラビア語の単語を借用語としてアラビア文字を表記法として使い、新しく出来た言でした。

ではインドで出来た言葉なのになぜ、ペルシア語やアラビア語の多数の単語が借用語として使われ、その表記法にアラビア文字が使われるようになったのでしょうか。

10世紀以降インドに西の方から盛んにイスラーム教徒やイスラーム文化が入ってきて、インドのイスラーム化が進み、西から入ってきたイスラーム教徒とインドでイスラーム教に回収した人々との間の共通の言葉になったからであります。16世紀の初め、即ち1526年デリーを中心にイスラーム教徒の帝国、ムガル帝国ができ、その宮廷の言葉はペルシア語でしたが、第5代皇帝シャー・ジャハーンの治世になる頃、その都城で、ヒンディーとかヒンダヴィーと呼ばれていたこの言葉が、「ザバーネ・ウルドゥー・ムアッラーエ・シャージャハーナーバード」と呼ばれるようになりました。その意味は「シャージャハーナーバード(デリー)の高貴な陣営の言葉」となります。しかし、18世紀ムガル帝国の力が弱まってくると、宮廷でもこの言葉が使われ、ウルドゥー(陣営)という短い呼び名になりました。しかしムガル帝国の絢爛たる文化のもとにウルドゥーは詩の言葉として浄化されました。1857年ムガル帝国が崩壊すると、インドはイギリスの植民地になりました。しかし、1947年インドはイギリスからイスラーム教徒多数のパーキスターンとインドに分かれて独立しました。その時以来、ウルドゥー語はパーキスターンの国語となり、インドに残ったイスラーム教徒も公用語としてウルドゥー語を使うことになりました。そういう訳で、一概にこの言葉に国名をつけてパーキスターン語と言えないのであります。

パキスタン

《ウルドゥー語とヒンディー語との関係》

ムシャイラ(詩会)

ヒンディー語の起源もウルドゥー語と同じカリーボリー方言にあると言われ、ウルドゥー語とヒンディー語は姉妹関係にあります。そこで 違うのは表記法だけ、日常使用される話し言葉は殆ど同じで、ウルドゥー語を使ってインド中、用が足りるといっても言い過ぎではありません。ですから、インドでウルドゥー語を話すと「あなたはそのヒンディー語をどこで習いましたか」とよく聞かれます。

《ウルドゥー語とペルシア語やアラビア語との関係》

ウルドゥー語の中にはペルシア語やアラビア語の単語が借用語として沢山入ってきております。そこでウルドゥー語の勉強の中で自然とそれらの単語が身につきます。またこれら三つの言葉は表記法がすべて同じアラビア文字なので、ウルドゥー語をきちんと学習した人にとっては、ペルシア語やアラビア語の勉強になんの抵抗もなく入っていけます。

《ウルドゥー語の将来》

ムシャイラ その2

ある言語学者によれば、2050年になると、英語を除きウルドゥー語・ヒンディー語の使用人口が世界でも1・2位を争うところまで増えていると言っております。これは現在インド・パキスタンの人口数をその増加率を見れば明らかなことで、その頃はみなさんが社会の中心になって活躍している時期でもあります。今ウルドゥー語を習得しておけばその時、必ず生きてきます。

《ウルドゥー語学習者数の現状》

このような将来有望であるウルドゥー語であるにもかかわらず、ウルドゥー語という呼び名のせいで誰も学ぼうとしません。学ぶのはわずかに日本中じゅうで皆さんと同世代の人の内の約50名です。東京と大阪にある外語大と、わが学部の中でも先見の明があり、進取の気性に富むみなさんだけです。

ウルドゥー語の詩の一節に次のような言葉があります。

“愛とは外から力が加えられず 燃える火だ ガーリブよ
付けようとしても 付けられず 消そうとしても 消せない燃える火だ”

みなさんのうち、誰でもいいからウルドゥー語とこのような関係になってもらいたいと思います。そしてその関係を続けていけば、前人未踏の地に入っていくことができます。

(写真提供:堀口麻衣)

※このページは大東文化大学国際関係学部パンフレット「アジアのことば」より転載しました。

ウルドゥー語テキスト

大東文化大学国際関係学部では、「アジア理解教育の総合的取り組」刊行物シリーズ No.13 としてウルドゥー語のテキスト『?????』を文部科学省の補助金を得て出版しています。このホームページ上でも公開していますので、興味のある方は以下のリンクからご覧下さい。

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