大東文化大学法学部 野口ゼミナール


実践・不動産売買契約書の作成


課題の設定:

 不動産の取引をする場合、事前に調査を十分に尽くすことは、契約に過誤が生じないためには非常に大切である。不動産の調査には、様々な方法があるが、過誤がない契約をするために、唯一とか絶対という調査はない。したがって不動産の取引をする場合にはどれだけ調査をしても十分ということはない。
 また、不動産売買契約書を作成する場合には、締結後に発生するさまざまなトラブルを想定してそれに対応できるように、契約書を作成する段階で可能な限り契約内容を検討する必要がある。

 われわれ日本人の契約観念は、締結後のトラブルをあまり意識しないまま契約書の内容を検討することなく署名・捺印する場合が多いといわれる。しかし、現実には締結後に発生したトラブルを解決するために、その交渉は多くのエネルギーと費用を使わざるを得ず、最終的には裁判を通じて解決を図ることになる場合も少なくない。
 したがって、契約社会といわれるアメリカでは、契約書に
サインするまでが契約交渉で、締結後のトラブルは契約書にしたがって解決すればよいことになるが、日本人の契約は締結後から交渉が始まるといわれる。

 現実の不動産売買契約では、多くの場合に一般消費者は不動産業者を契約の相手方としたり、あるいは不動産業者に契約の媒介を依頼して土地付き建物やマンションの売買を行う。その場合には国内各県の(社)宅地建物取引業協会が作成した不動産売買契約書(約款)などを用いて契約が行われることが多い(とくに媒介の場合)。各県の宅地建物取引業協会の契約書は簡単なものが多いが、簡単な契約書でも誠実に契約が履行されて当事者間にトラブルが発生しなければ問題はない。
 しかし、これらの契約約款には内容に疑問を感じる条項を含んだ契約書が長年堂々と使用されているものもある(約款を作成された方には申し訳ないが、民法の規定を勘違いしたか?)。
 売買契約も契約自由の原則を基本とする諾成契約であるから、内容が、強行法規や公序良俗に反しない限り、当事者がそれに合意すれば、どのような内容でも有効と思われるが、契約書の中には契約書作成者の意図に疑問を感じるもの、あるいは債務不履行による契約解除に関して一方当事者に不利な内容のものなども現実にある(宅建業法37条(書面の交付)を前提としても)。

 ゼミでは、民法の契約法の基本的知識の修得と、不動産の取引実務を通じて具体的に契約法を学ぶことが目的であるから、現実の契約書には記載しないような項目についても検討することにしている。

1.契約の合意――永田

契約が成立して、その効果として当事者に権利義務が発生するためには、申込の意思と承諾の意思が合致していなければならない。

@意思表示の意義と効果。
A意思表示が合致したといえる場合と合致したといえない場合。
B契約交渉途中の合意と契約の成立(買付証明書と売渡証明書)。
C制限能力者の意思表示、詐欺・脅迫による意思表示。
D申込の意思表示の撤回と承諾の意思表示の撤回。

2.売買の目的物――吉原 

土地建物の売買契約では、売買の目的物となっている不動産を明確に確認することが不可欠である。

@    不動産の表示は、公募上の面積と実測面積とが異なる場合、実測面積と異なる場合に代金増減請求ができるか(民法565条――数量指示売買の場合)。
A    登記の公信力
B    建物のみを購入する場合――敷地利用権
C    未登記建物の売買
D    一筆の土地の一部の売買
E    土地の境界が不明の場合
F    土地について、建築基準法上建物を建てられるか。
G 繞地通行権は当然発生するか

3.手付金・融資の利用――荻原

@    手付の意義と性質
A    手付と内金の違い
B    申込証拠金とはそのようなものか。
C    手付で解除できる場合と解除の時期(履行の着手とは)
D    契約が成立したとき、手付金に利息を付して返還するるか。

4.売買代金の支払方法――原田

@    売買代金支払いの時期(代金や利息支払いはいつするか)。
A    支払方法
B    代金支払いを確保するにはそんな方法があるか。
C   
予定していたローンが成立しなかった場合(なぜ融資利用の特約が必要か)。
D   
買主が代金を支払わないときどうするか。
E    売主が移転登記や引渡しをしないときどうするか。

5.所有権の移転時期・登記申請手続――岩澤

@    公図とは
A   
売主と真実の所有者とが異なっていた。
B    他人所有の土地・建物の売買で、買主はいつ所有権を取得するか。
C    所有権移転登記義務がいつ発生するか。
D   
購入した建物が未登記である場合。
E    移転登記をする前に目的物が相続された。

6.引渡し時期――吉田

@    売主の引渡しが遅れた場合はどうするか。
A    購入した家屋に他人が住んでいる場合。
B    建物明渡猶予制度とは(短賃制度廃止に伴う395条)。

7.売主の担保責任――小池

@    担保責任の内容(他人の物の売買、数量不足はたは一部滅失、他人の権利の付着)
A 他人の権利を売買の目的とした場合の担保責任と債務不履行責任
A    抵当権の抹消に関する条項(抹消されない場合、契約はどうするか)
B    購入した土地に第三者の抵当権が設定されていた。抹消のための費用は誰が負担するか。
C    抵当権の設定されている土地・建物を購入したが、抵当権を抹消する方法は。
D    所有権移転登記までに抵当権を抹消しなかった。

8.瑕疵担保責任――佐々木

@    不動産(目的物)の瑕疵とは(目的物の瑕疵とは、環境瑕疵とは)
A   住宅性能表示・保障制度とは。
B   
契約の要素の錯誤と民法570条の適用範囲
C   
リゾートマンションで眺望が阻害された場合
D    建売欠陥住宅を購入した(建築士、建設業者、販売業者など損害賠償の相手方は誰か)。
E    土壌汚染と瑕疵担保責任
F    損害賠償の範囲
G    担保責任免除特約 

9.危険負担――助川

@    なぜ危険負担の特約が必要か
A    危険負担の債権者主義と債務者主義(立法政策)
B    民法の規定と現実の取引の実態
C    引渡しを受ける前に建物が焼失した(売主に過失が有る場合とない場合)。

10. 解除権・違約金――宮澤

@    解除権の発生と債務不履行による解除の要件
A    履行の提供
B   
解除の手続き(催告)
C    解除の効果
D   
合意解除の効果

11.連帯債務――伊藤

@    連帯債務とは
A    保証債務と連帯債務

12.    媒介契約・報酬の支払い――大村

@    媒介契約の種類
A    宅建業者が法律で罰せられる行為はどんなものがあるか。
B    報酬請求権の法的性質
C   
売買契約成立後に契約が解除された場合の媒介報酬
D   
直接取引と媒介報酬支払い義務

13.公租公課の分担に関する条項

 @ 固定資産税等の分担方法
 A 1月1日起算日と4月1日起算日の計算方法(事例:630日に引渡しがあった場合)