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英米文学科

2017年秋季英文学会が開催されました。

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 2017年11月18日(土)に秋季英文学会が、大東文化大学板橋校舎の多目的ホールにて開催されました。

 

 今回の秋季英文学会では、第一部では英文学会実行委員による「ウィリアム・フォークナーについて」の研究発表を行い、第二部では首都大学東京助教の山根亮一先生にご講演を頂きました。

 第一部ではまず、学生発表の前に実行委員がどのように研究を進めてきたかを紹介しました。その後、五つの班に分かれそれぞれが研究した成果を発表しました。

 

 一斑は、生い立ちと作品について、二班はフォークナーの生きた時代やその歴史的背景について映像資料などを用いて発表しました。三班は、『あの夕陽』についての説明と黒人女性に対するステレオタイプの考察を、四班は『エミリーにバラを』のあらすじを劇で紹介し、また色の観点から作品を考察し、五班は『納屋は燃える』のあらすじの紹介と階級の視点から父親と息子の関係性を考察しました。

 第二部では、山根亮一先生による「アメリカ自由民主主義文学の残余 南部作家ウィリアム・ギルモア・シムズをめぐる政治と文化について」と題するご講演を拝聴しました。山根先生は、本校の本学部を卒業しており、学生時代のお話や当時指導していただいた栗栖先生とのエピソードを和やかに話してくださり、学生の間でも笑いが起こるなど、温かい雰囲気で始まりました。

 

 最初に、「Google Ngram Viewer (Google社が所有する膨大な出版物のデータを自由に検索し、どのような単語がどれほどの頻度で用いられているのかを知る事が出来るシステム)」を用いてシムズの名が検索される順位を示したのち、彼が南部で奴隷制を熱心に支持していた作家であり、そのことからアメリカでは不人気であることを説明して下さいました。しかし、これは奴隷制に反対していた北部的な観点から見た話であり、確かに彼は奴隷制を支持し、歴史的にアメリカ大陸の分断を望んでいたかのように捉えられていますが、実際は正反対である接続の一面も持ち合わせていると仰いました。

 

 当時、世界では印刷技術(Print Culture)が発展していました。本は、店に客を呼ぶためのオブジェとして使われ、新聞や雑誌などのメディアも発達していきました。また、ロール状の紙が使用されるようになり効率よく大量印刷が可能になり、一般市民にも広く流通し、世界中に情報が行き交うようになりました。それはアメリカ大陸も例外ではありませんでした。アメリカ大陸の北部、南部、西部関係なく、様々な情報が真偽を問わず錯綜したのです。新聞の編集者でもあったシムズは、新聞記事を利用し国内外に情報を発信していました。これは、情報によって世界と繋がっていたことになり、また歴史的に分断されていたアメリカ大陸を接続していたと考えられます。ですが、その情報の中には、「太平洋と大西洋を繋ぐ地下運河が発見された」などの嘘の記事や誇張表現、脚色が多く見受けられました。

 

 また、19世紀は、著作権が無く同じ記事を他の新聞社に貸し出し共有していたため、同じ記事を多くの新聞会社が扱っていました。シムズには南北戦争による分断とは正反対の面があるとはいえ、彼が奴隷制を熱心に支持していたことは変わらず、一概に彼を判断することは出来ません。政治面では分断の論理がある一方で、印刷文化面では接続の論理が見受けられるからです。

 

 最後に、文学の研究を進めるにあたり、小説を読むだけではなく、パソコンやメディアなどを使用し、多面的に調べていくことがこれから必要になると、今までにないアプローチの存在を教えてくださいました。

 

 ご講演終演後には、質疑応答が活発に交わされ、有意義な時間となりました。

 

その後行われた懇親会では、多くの学生が訪れ、英米文学科の先生方と学生が交流できる良い機会になりました。