いよいよ冬も本番。日に日に寒さを増す季節ですが、楽しいイベントも盛りだくさん。クリスマス、年末年始と、気の置けない仲間と楽しく食事をする機会が増えてきそうです。そんななか、気になるのはやはりダイエットのこと。どうにか、太らずに、美味しいものをいただく方法はないものでしょうか。そして、ここ何年か、話題になっている炭水化物抜きダイエットが実は危険という話も耳にしますが、それって本当……? 

そんな疑問を解決すべく、本学の健康科学科蕪木智子教授にお話を聞きました。

流行の炭水化物抜きダイエットのデメリットとは?

主食となるご飯やパンなどを食べない炭水化物抜きダイエットが流行っていますが、実はデメリットもあるって本当ですか?

蕪木:炭水化物を抜く食事は、たしかに体重を落としやすいですし、数週間程度なら問題ないと思います。でも、長期的に炭水化物を抜くことで、体内の酸化ストレスが高まってしまうのです。

酸化ストレスとはなんでしょうか? 

蕪木:酸化ストレスは老化の原因の1つといわれています。わかりやすくいうと、体を錆びさせるイメージです。ガンなど多くの病気の原因としても知られています。炭水化物を制限したマウスは、肌の老化によりシミ、しわが増え、脱毛が起こるという実験データもあるんですよ。つまり炭水化物抜きでは痩せても肌がしわしわになるなど、キレイなダイエットは難しいということです。

炭水化物を抜くことが体内の酸化を促してしまう、ということですか? 

蕪木:もともと私たちのカラダには、酸化ストレスから体を守る抗酸化力があります。ただ、体のいちばんのエネルギー源となる炭水化物を抜くと、抗酸化力が弱くなりその結果、体がさびやすくなってしまうのです。

また、炭水化物抜きダイエットで一時的に体重を減らすことができたとしても、その後、リバウンドしてしまう人は少なくありません。急激に摂取カロリーが減ると、体内の糖質(*1)が消費され不足します。すると、体は筋肉を分解してエネルギーを作りはじめます。その結果、筋肉の量が減り、基礎代謝(*2)が落ちて太りやすくってしまうのです。

健康的にダイエットを成功させるコツは、基礎代謝をキープしながら、あるいは高めながら行うこと。基礎代謝の大部分を担う筋肉、脳、肝臓のなかで、自分の意思で大きくできるのは筋肉だけです。つまり、健康的に痩せるには、筋肉量を減らさずに痩せることが大切なんです。

炭水化物抜きダイエットで体重を減らしても、すぐにリバウンドしてしまう人が多いのは、糖質が不足して筋肉量が減ってしまっているからなんですね。とはいえ、すぐに効果が出る、炭水化物抜きダイエットはやはり気になるところです(笑)。どの程度なら、炭水化物を減らしてもいいのでしょうか。

蕪木:日本人は、摂取エネルギーの6割程度を炭水化物から摂っていると言われています。これを4割程度まで減らす分には問題ないと思います。また、酸化を予防する抗酸化作用がある食べ物を積極的に摂ることもお勧めしたいです。

積極的に摂りたい!抗酸化作用が高い食べ物

抗酸化作用が高い食べ物には、どのようなものがありますか。

蕪木:赤ワインやチョコレート、緑茶などに含まれるポリフェノールは抗酸化作用が高いことが知られています。緑黄色野菜に含まれるβ-カロテンや、サケやカニなど赤いモノに含まれるアスタキサンチンも、カロテノイドと呼ばれ、強い抗酸化力を持っています。特に、旬の野菜や果物はカロテノイドが多いのでお勧めです。秋から冬にかけては、カロテノイドの多い柿やみかん、カボチャがいいですね。

昨今は、たくさんの種類のサプリメントがありますが、私のテーマは、「美味しく食べてキレイに」(笑)。きちんと食事を味わうことが大切だと考えています。季節ごとに、抗酸化作用のある食べ物をうまく選ぶのも楽しいですよ。ぜひ美味しく、上手に、体に必要な栄養を摂取してみてください。

また、太りにくくするには、食事を摂る時間も大切です。ビーマルワン(BMAL1)という遺伝子をご存じですか。

わからないです!

蕪木:体脂肪がエネルギーとして分解されるのを抑え、体脂肪の合成を促進する遺伝子です。時間によって増減するという特徴があり、体内でビーマルワンが増えているときに食べると体脂肪になりやすいと言われています

え、いつ増えるんですか⁉

蕪木:15時前後に最も少なくなり、22時から深夜2時頃に最も増えると言われています。なので、おやつを食べるなら、やはり15時前後がいいでしょう(笑)。

夕食は20時までに食べ終えるのが理想ですが、アルバイトなどで忙しい学生にとってはなかなか難しいですよね。

そこで私は、深夜バイトをする学生には、夕食は、バイトが終わった後ではなく、休憩中など早めに摂ることを推奨しています。帰宅後、お腹がすいてしまったら、ココア、コーンスープなどをいただくといいでしょう。

温かい飲み物は体を温めますし、乳製品には、睡眠の質を向上させる働きがある、トリプトファンという必須アミノ酸が含まれています。

「美味しく食べてキレイに」痩せることを目指して

最後に改めて、美しく痩せたいと思っているみなさんへのアドバイスをお願いします。

蕪木:繰り返しになりますが、炭水化物を長期的に抜くことは危険です。体にさまざまな不調をもたらします。大切なのはバランスとタイミングです。

また、ダイエット中の人も、好きなものを我慢しすぎないこと。ビーマルワンが減っている15時前後を中心に、時には(週1、2回)好きなものを食べてください。私は甘いものが大好きで、毎日15時頃に甘いおやつを食べます。我慢ばかりではストレスが溜まりキレイになれないでしょ。

 

 

*1糖質

炭水化物は糖質と食物繊維から構成されている。糖質は体内に吸収され、カラダのエネルギー源を生み出す。食物繊維は消化吸収されずエネルギーにはならない。

*2基礎代謝

人間が生命活動を行うために最低限必要なエネルギーのこと。体温調整や呼吸、心拍など、何もしていないときでも無意識のうちに代謝は行われている。一般的には10代をピークに、年齢とともに低下すると言われている。

 

【参考文献】

・低炭水化物ダイエットの皮膚機能変化
Kanaki K, Kaburagi T et al. J Clin Biochem Nutr  70(1),14-20, 2021

・BMAL1
Shinba S et al. Proc Natl Acad Sci U S A. 23;102(34):12071-6, 2005

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