新型コロナウイルス感染症のパンデミック(世界的な流行)により、ここ数年、これまでになく、“手を洗う”という行為に注目が集まっています。新型コロナウイルス感染症の流行前と後では、“手洗い”に対する意識が完全に変わったという人も多いのではないでしょうか。では、あなたは、自分の“手洗い”に自信を持って「正しい」と言えますか? 感染を防ぐための「正しい」“手洗い”について、本学のスポーツ・健康科学部健康科学科特任准教授、丹波泰子先生に話を聞きました。
まずはこちらの動画をご覧ください。

丹波先生に紹介いただいた動画、衝撃を受けました。きちんと手を洗っているつもりでも、意外と汚れは落ちていないのですね……。

丹波:感染を避けるためには、手や指についた菌やウイルスは洗い流すことがとても最も重要です。ただ、多くの方が普段行っている手洗いでは、細菌などの汚れはきちんと落とせていません。厚生労働省HPでは、「流水で15秒、ハンドソープで10秒もみ洗いし、流水15秒」の手洗いを推奨しており、この方法なら汚れを洗い落とすことができます。指の付け根や指先、指と指の間、手首までしっかり洗浄するのが理想です。

たしかに、厚生労働省のHPには、「手や指に付着しているウイルスの数は、流水による15秒の手洗いだけで1/100に、石けんやハンドソープで10秒もみ洗いし、流水で15秒すすぐと1/10,000に減らせます」と書かれていますね。

丹波:体験していただくとわかると思いますが、15秒って意外と長いですよね(笑)。ただ、そこまでやると、かなりの確率で感染を防ぐことができるはずです。一方で、手を水で濡らす程度の手洗いをしている人を見かけることがありますが、あれでは洗っていないのと同じです。

意識して”手洗い”をする必要がありますね。

丹波:蛇口は菌の温床です。最近は自動で水やお湯が出るところも多いですが、蛇口に触れなければならない場合は、できればアルコールで蛇口を消毒してから水やお湯を出すといいと思います。その後、流水で手の汚れを洗い流し、ハンドソープで洗浄するといいでしょう。

ハンドソープはどのようなものを使えばいいのでしょう? おすすめのものはありますか。

丹波:大前提として、手洗いですべての菌を除去することはできません。手洗いや消毒は、菌を減らすことが目的です。また、ツルツルの手より、ガサガサの荒れた手のほうが菌が繁殖しやすい傾向があります。

なんとなくイメージできます。

丹波:手が荒れないようにするためにも、肌に優しい素材のソープを使うといいですね。最近は、保湿成分が入ったアルコール消毒液が出ているので、そういったものを使ってみるのもいいかもしれません。
洗ったあとしっかりと手を拭くことも大切です。水気が残っていると菌が付着しやすく、手荒れの原因にもなります。出先のトイレなら使い捨ての紙で拭くのがいちばん安心です。ハンカチもご自身だけで使う分には問題ありませんが、友だちなどとのハンカチの貸し借りは控えてください。手を拭くものは出かけるときの必需品です。私もウェットティッシュは常に携帯しています。

感染を防ぐためにほかに私たちが知っておくべきことはありますか。

丹波:そうですね。時々、アルコール消毒液とともに置いてある、次亜塩素酸ナトリウム水溶液では手指についたコロナウイルスを洗い流すことはできません。ただ、ノロウイルスの消毒や、ドアノブや手すりなど身近なものの消毒には有用です。アルコール消毒液とは役割が違うので覚えておくといいと思います。
また、手洗いからは少し話が逸れますが、飲食店でお客様が退席したあと、スタッフの方がテーブルに消毒液を吹きかけているところを目にしたことはありませんか。あれは、じつはとても危険なんです。

よく見かけます!

丹波:スプレーで噴霧することでテーブルの上の菌が飛んでしまいます。きちんと知識を持っている店なら、布や紙などに消毒液を吹き付けて拭いているはずです。

知りませんでした。ちょっとショックです……。ところで、消毒液の話が出ましたが、お店の出入口で機械から自動噴出されるときなど、「こんなに少量でしっかり消毒できるのかな?」と不安になるのですが。

丹波:適量が出てくるはずなので、それを手全体にまんべんなく擦り込んでください。ただ、洗いすぎたり、消毒しすぎたりすると、逆に感染のリスクを高めることもあります。手はもちろん、口や鼻の中には常在菌という私たちの体の味方にもなってくれる菌が存在しています。常在菌には皮膚のバリア機能も担っていて、これを必要以上に洗い流してしまうのは避けたいところです。要はあまり神経質になりすぎる必要はないということです。

冒頭でおっしゃっていた15秒の流水で汚れを落とし、その後、ハンドソープで洗うという流れで十分ということでしょうか。

丹波:そうですね、それで十分です。また、すぐに手が洗えないときは、その手で顔を触らないことです。洗う前の手で口の周りに触れなければ、感染の確率はかなり下げることができるはずです。今後、感染段階のステージが引き下げられると、現在、さまざまなところに設置されている消毒液が撤去されることが予想されます。自分を守るための手洗いがこれまで以上に重要になってくるはずです。

 

 

 

 

スポーツ・健康科学部健康科学科 特任准教授 丹波 泰子

学歴
1975年 3月 宮城県立鼎ケ浦高校卒業
1978年 3月 大東文化学園 大東医学技術専門学校卒業
2002年 3月 放送大学卒業
2011年 3月 大東文化大学スポーツ・健康科学部 大学院卒業

職歴
1978年4月~1985年3月 大東医学技術専門学校実習助手
1985年4月~2001年3月 大東医学技術専門学校臨床検査科 講師
2005年4月~2007年3月 大東医学技術専門学校臨床検査科 科長
2007年4月~2013年3月 大東文化大学 スポーツ・健康科学部 健康科学科 実習助手
2013年4月~2019年3月 大東文化大学 スポーツ・健康科学部 健康科学科 講師
2019年4月~2022年3月 大東文化大学 スポーツ・健康科学部 健康科学科 准教授
2022年4月~現在に至る 大東文化大学 スポーツ・健康科学部 健康科学科 特任准教授

研究
2005年6月 日本臨床衛生検査技師会学術奨励賞 シスメックス検査総合管理賞受賞
ハチミツ中のボツリヌス菌の検出
鶏肉中のカンピロバクターの検出率について
豚肉・牛肉中のカンピロバクターの検出率について

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