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【先生に聞いてみた】飲みすぎに注意!今知っておきたいカフェインのリスクと可能性

#授業・ゼミ#スポーツ・健康科学部#受験生

政治やカルチャーをはじめとした幅広い分野から「今注目が集まっているトピック」をピックアップし、テーマと関連の深い専門家に、それぞれの視点から考察・解説をしてもらう企画「先生に聞いてみた!」。  

今回のテーマは、コーヒーや緑茶、エナジードリンクに多く含まれている「カフェイン」。今や多くの方にとってなじみ深い成分ですが、一方で過剰に摂取することで起こる「カフェイン中毒」が問題になっています。近年の研究で明らかになったカフェインの新たな可能性をはじめ、摂取する上でのリスクや注意点まで、スポーツ・健康科学部 健康科学科の福島先生にお聞きしました。

 

インタビュープロフィール

福島 洋一先生
スポーツ・健康科学部 健康科学科 教授
研究領域:食と健康科学

INDEX
  • カフェインを飲むとどんないいことがある?
  • 研究で明らかに!カフェインの新しい可能性
  • 若者のカフェイン摂取に潜むリスクとは
  • 学生必見!カフェインとの適度な付き合い方

カフェインを飲むとどんないいことがある?

様々な飲料に含まれているカフェインですが、多くのメディアにも取り上げられており、世間の認知度も高い現状があります。

 

カフェインを摂取することで、私たちの体どんなメリットがあるのでしょうか?

福島先生:コーヒーが発見されたころの伝承として、エチオピアのヤギ飼いカルディが夜元気に跳ね回る山羊の食べた赤い実を発見する話や、街を追放されて山野をさまよった聖人オマールが鳥が落としていった赤い実を食べて知った「元気になる実」で疫病の街モカを救ったという話が残されています。

いずれもカフェインの「元気にさせる効果(眠気を覚ます効果、覚醒作用)」の発見がそこにあったわけです。カフェインには「眠気を覚ます」他にも「集中力を上げる」「計算量を高める」、「交感神経を刺激して心拍数を上げる」「胃酸分泌・消化促進」「気管支拡張」「倦怠感を抑える」のように、「元気にする」をイメージするとわかりやすい、体感できる効果があります。

最新の研究で明らかに!カフェインの新しい可能性

カフェインの主な効果として、世間では「眠気覚まし・集中力アップ」といった効果を持つというイメージがありますが、その他にも様々な効果が報告されています。

 

先生が今注目しているカフェインの効果を教えてください

福島先生:新しい効果という訳ではないですが、カフェインには「スポーツパフォーマンスの向上」効果があることが知られています。日本のトクホや機能性表示食品と同じような制度がヨーロッパにもあり、カフェインの「注意力の向上」と並んで「持久運動能力の向上」効果は科学的根拠が十分にあると評価され、機能性が表示できるとされています。

日本ではなじみがあまりないかも知れませんが、カフェインを上手に適量摂取すると1500m走のタイムが約4秒縮んだり、サッカーを模した90分走で後半でタイムが落ちない、バレーボールのジャンプ力が上がる、ゴルフのスコアが上がるなど、スポーツ領域での研究報告が主に海外で多く出されています。

 

ただ、カフェインを多く摂ると気分が悪くなるなどマイナス面も大きくなり、多く摂取したからといってパフォーマンスが上がるわけではありません。日常生活でのコーヒーレベルか、これより少し高い量がちょうどよいわけです。なお、カフェインは現在ではドーピング指定から外れていますが、高い用量での不正使用を防ぐため、モニタリングは行われているようです。カフェインのスポーツパフォーマンス向上効果は、もっと注目されてもよい分野と思っています。

 

若者のカフェイン摂取に潜むリスクとは

カフェインは身体に良い作用をもたらす一方で、学生のカフェインの過剰摂取による健康リスクが指摘されています。

 

カフェイン中毒に関して、先生が印象に残っている事例を教えてください

福島先生:10年ほど前に、エナジードリンクを日常的に飲んでいる九州の20代男性が、カフェイン中毒で死亡したというニュースがありました。

カフェインは薬としても売られていて、致死量は数g~10g程度、死に至らないまでも有害な反応が出る目安は1gくらいからといわれています。一般的なコーヒーに含まれるカフェイン量は1杯80mg程度、エナジードリンクはコーヒーと同等~2倍程度のカフェイン量で設計されていることが多いです。エナジードリンク数十杯を一度に飲むと致死量に達する計算になります。この男性は日常的にエナジードリンクを多量に飲み、かつカフェインの錠剤も使用したため、致死的な過剰摂取につながったのではないかと考えられています。

エナジードリンクのような糖分を含む清涼飲料水は、毎日何杯も飲むのに適した飲料ではありませんが、コーヒーや緑茶は1日に数杯飲むことを日常としている方が多いですよね。

カフェインはコーヒーなどから適量を飲んでいる限り、安全な食品成分です。目安としては1日400mg(コーヒー5杯程度)、一度に飲む量としては200mgまでなら特に健康上の問題はないといわれています。ただし、これはあくまで目安。カフェインの感受性は遺伝的に決まっていて、これより多い量でも全く問題のない方もいれば、少ない量でも気分が悪くなったりドキドキして不安感を感じたりする方もいます。

 

カフェインを多く含むコーヒーですが、1日3~5杯飲んでいる方は飲まない方よりも死亡リスクが低いという研究が世界中で報告されています。

害の多いタバコのニコチン、お酒のアルコールと異なり、カフェインは適量を知って上手に付き合ってさえいればメリットのある食品成分です。コーヒーや緑茶から一定量を習慣的に摂る場合は、豊富なポリフェノールの摂取も手伝って健康面のプラスが大きくなるといえます。

 

学生必見!カフェインとの適度な付き合い方

若者を中心にエナジードリンクの人気が広がっていることもあり、学生の中には受験期やテスト期間などに、集中して取り組めるようカフェインが含まれる飲料を選ぶ人が増えてきています。
カフェイン中毒を未然に防ぐために、適量を守って摂取することはもちろん、摂取する時間帯も気になります。

 

カフェイン中毒に気を付けながら、より効果的にカフェインを摂取するためにはどんなことに注意をしたらよいのでしょうか?

福島先生カフェインは夜ではなく、日中をより活動的に過ごすために活用していただきたいです。日中元気に過ごすことで、夜の睡眠にもプラスになりよい生活リズムが生まれます。

試験前、眠気覚ましに夜にエナジードリンクやコーヒーを飲む方がいらっしゃいますが、カフェインを寝る前に摂取すると、寝つきが悪くなり、睡眠時間が減り、睡眠の質も低下することが知られています。カフェインは飲んでから30分で血流に入り、約1時間後にピークを迎えます。その後だんだん血中量は減っていきますが、割と長く体内に残り、4時間たってようやく血中量がピーク時の半分まで減ります。夜飲んでも大丈夫と思っている方でも、血中に残ったカフェインにより睡眠に影響が出ることを知っておいてください。

 

試験前に寝ずに勉強したい気持ちはわかりますが、質の悪い睡眠は翌日のパフォーマンス低下につながります。勉強は計画的に実施し、夜遅くのカフェインは避けることをおすすめします。
試験前は、いつも通りによい睡眠Good Sleep(ぐっすり)でハイパフォーマンスを目指しましょう。
 

また、最近はカフェインレスやカフェイン少なめを選んで、1日のカフェイン摂取量とタイミングを工夫する「カフェイン・チョイス」という考え方も注目されています。

朝はコーヒーなどカフェインの入った食品を摂るよいタイミングのひとつです。

ただ、カフェインは胃酸の分泌を増やします。胃の調子の悪い方がすきっ腹でブラックコーヒーを飲むと、胃酸が食べ物で中和されることなく胃壁と接触し、胃がシクシクする原因となることがありますので要注意です。コーヒーが胃潰瘍などのリスクを上昇させないことが研究で示されていますが、胃の健康が気になる方は、カフェインの入った飲料の摂取は食中食後にするのがよいかもしれません。

 

福島先生、ありがとうございました!

 

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