先生の講義「芸術学(舞台芸術論A・B)」(全学共通科目)では、どんなことを教えているのですか?

この授業は全学共通科目(1年生~4年生まで、全学部生が履修できる科目)なのですが、簡単に言ってしまえば、「舞台芸術ってどんなの?」ということを扱っています。舞台芸術というと、演劇やオペラ、ミュージカルなどを思い浮かべるかもしれませんが、実際はもっと範囲が広いものです。ですから、まずは「舞台芸術には、こういうジャンルがあるよ」ということを、学生たちに知ってもらうところから授業が始まります。例えば、普通の台詞劇からオペラやバレエ、ダンス。日本の伝統芸能である歌舞伎、能・狂言。さらにはスポーツとして捉えられているフィギュアスケートや新体操。サーカスも直接的な身体表現ということで、舞台芸術だと言えます。そこから今度は、オペラとは何か、バレエとは何かというように、個々の舞台芸術について学んでもらいます。
また、舞台芸術と呼ばれるものには、共通する4つの必須要素があります。ひとつは、演者。それからそれを見る観客、演じられる作品、そしてそれを共有する場所、いわゆる劇場です。その4つを軸に授業を展開させて、劇場の形、客席と劇場の関係、演じるとはどういうことか、あるいは舞台準備にはどんな人が関わり、どんなふうに進められているのかといったことを、ドキュメンタリー映像などを通して学んでもらいます。それから喜劇とは何か、悲劇とは何かといった定義的なことも、映像を使って教えます。例えば、喜劇って、笑えるものと思っていませんか? 本当は、笑えなくてもハッピーエンドであれば、喜劇になります。逆にアンハッピーエンドが悲劇です。では、シェイクスピアの四大悲劇のひとつ『ハムレット』は、本当に悲劇なのでしょうか。当然、悲劇ではありますが、フランスの古典悲劇の定義からは外れています。17世紀のフランスにおける悲劇の定義は、実に細かいルールがあって、『ハムレット』はそれから大幅に外れているんです。もちろん『ハムレット』はイギリスの作品ですから、関係ないと言えばそれまでですが、そういう比較をすることも面白いでしょう。また、例えばフランスの劇作家であるモリエールの芝居を取り上げて、300年以上も前の作品がなぜ今でも上演されているのかということについて考えてみることもしています。なぜ古典が今でも上演されるのかというと、新しい演出を加えたり今日的な解釈がなされたりしているからという部分もありますが、やはり300年前と今とで通じるものもあるからなんですよね。そういう話から、舞台芸術の今日的な理解を深めてもらいます。ですから前期の「芸術学(舞台芸術論A)」は、どちらかというと理論的な部分を中心に覚えてもらう授業になります。一方、後期の「芸術学(舞台芸術論B)」では、実際に観劇することで舞台芸術への理解を深める取り組みをしています。
具体的には、どんなことをするのでしょうか?
例えば、現代演劇の世界的な演出家であるピーター・ブルックのシェイクスピアの舞台や、歌舞伎役者である中村勘三郎さんが主宰する平成中村座の舞台を映像で観るなどして、作品の鑑賞とその分析をします。また、学生にきちんと作品批評する力をつけてもらうため、授業中に取り上げた作品に対する新聞評を読み、どう書かれているか、どう分析されているかという批評の方法を学びます。そういう練習を積み重ねて、学期末には、学生に自費で好きな舞台芸術を鑑賞しに行ってもらい、その劇評を2000字以上のレポートにして表紙にはチケット半券添付で、提出してもらうことにしています。
また、私は二十数年前からフィギュアスケートにも関わっているんですね。NHK杯国際フィギュアスケート競技大会の実行委員でもあるので、毎秋のこの大会の開催週は、そちらにかかりっきりになります。ですから大会前に授業で、フィギュアスケートの基本的な見方やルール、ジャンル、採点の方法などを取り上げて、学生にはテレビ中継で実際にNHK杯を観てもらい、自分なりに採点して順位を付けたレポートを提出してもらっています。これには学生たちもかなり興味を持って取り組んでくれますね。面白いもので、だいたいの学生たちの採点する“目”は、当たっているので侮れません(笑)。
では、この授業で先生なりに工夫されていることはありますか?
ひとつは授業終わりに、時々、リアクションペーパーを書いてもらっています。この授業は、約80名の学生が受講しています。ですから授業中に学生から質問を受けたり、細々とやりとりしたりすることは難しいです。ただ、私としては、みんなに授業に参加している意識を持ってもらいたいんです。ですから例えば、その日の授業で、劇場の構造について映像を使って教えたとしたら、「今日見た中で、自分が一番印象に残った劇場はどこか?」ということを、その理由と一緒にリアクションペーパーに書いてもらいます。それを元に、次の授業では「パリのオペラ座が一番人気でした」ということをフィードバックする。あるいは、授業への要望や質問なども書いてもらい、それに答えるようにしています。そうすれば、一人ひとりと対話ができなくても、リアクションペーパーを通して学生の意見を聞き、授業へ反映させることができますから。
また、舞台芸術に関する作品名や劇作家名などの固有名詞は、外国のものですと口頭で伝えても覚えられませんし、板書に時間がかかるので、プリントで配布するようにしています。それに加えて、学生がノートをとりやすいように、授業ではパワーポイントを用い、要点がすぐわかるようにしています。手取り足取り過ぎるのもどうかとは思いますが、1年生もいる授業ですから、その辺は配慮して、ノートテイキングのコツみたいなものを掴んでもらえればと思っています。
最後に、学生には大学の4年間をどんなふうに過ごしてほしいと思いますか?
最近の傾向とも言えますが、私の所属している外国語学部英語学科には、すぐに役立つことを目指して入学してくる学生が少なくありません。もちろん語学の習得や語学力を伸ばすことは大事ですから、それを否定するつもりはありません。ただ、すぐに役立つことだけでなく、自分の好きなことや今は無駄に思えることでも、興味があったり新しいことだったりすれば、一生懸命取り組んでほしいです。そういう経験が、今すぐではなくても、いつかどこかで役立つのだと思います。大学は、高校までとは違って、さまざまな地域、国から学生が集まっています。新しい出会いを大切にして、すぐに結果が出ることや役立つこと以外にも目を向けて、チャレンジしてほしいです。
この内容は大東文化大学メールマガジン2012年5月号において配信した内容です。
そのため、他の授業ゼミ紹介ページと原稿テイストが異なります。
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