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法学部
2013年01月18日

国際政治学(五味俊樹先生)

開講される学科:政治学科

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先生の講義「国際政治学」は、どのような内容の授業ですか?

 この講義では、1年を通して20世紀から21世紀に起こった具体的な国際政治の事例をたどり、それぞれの出来事を国際政治学的にはどう見るのかということを学んでいきます。そもそも国際政治学というのは、伝統的には主として政府と政府の関係や安全保障を取り扱う学問のことです。他方、それだけでは国際政治や国際関係は語れないだろうということで、第一次世界大戦時にイギリスで国際関係論という学問体系が生まれ、第二次世界大戦以後、アメリカを中心に世界的に広がっていきました。これは経済、社会、文化、宗教などの分野まで幅を広めて、国際問題全般を学際的に研究する分野です。ですから、今の国際政治学は、同じように学際的な考え方に基づいて現実の国際政治を読み解こうとしています。例えば昨今、話題の尖閣問題にしても基本的には領土問題ですから、第一義的には、それをどう守るのかという安全保障の話になるのですが、それですべてが解決できるわけではありません。今、まさに動きつつあると思いますが、日本と中国は経済相互依存の関係にありますから、やはりお互いに歩み寄らざるをえないのではないかという雰囲気が出てきています。つまり経済分野から見ることで、解決の糸口があるはずだということです。ですから単に安全保障という視点だけで、この問題を見ていたのでは理解が難しいのです。こんなふうに「国際政治学」の講義でも、安全保障を中心に据えつつ、国際関係についてのさまざまなことをケースバイケースで扱っていきます。

 講義の進め方としては、まず主要な理論を紹介し、それが具体的にどう現実問題と関わるのかを説明していきます。例えば、伝統的な理論に「勢力均衡論」というものがあります。これは、ある一方の勢力がすごく肥大化・強大化してくると、それに対する勢力が団結して対抗し、勢いを増しつつある側を暴走させないようにするという考え方の理論です。例えば、2012年の12月に入って新聞やテレビなどでも報じられていますが、中国が南シナ海を中心に自分たちの領有権を断固、確保するという姿勢を鮮明に打ち出しました。それに対してベトナム、フィリピン、そしてインドまでもが、当然のことながら、強く反発しています。これなどは、まさに勢力均衡論に当てはまる事例です。また、中国があまりにも肥大化・強大化することに対してアメリカや日本が協力してそれを抑え込もうとしますし、アメリカは今、オーストラリアを巻き込んで、さらにはインドにも協力を求めて、中国の囲い込みをしようとしています。そういうことも、基本的には勢力均衡政策の現われだと言えます。このように国際政治学における理論を、具体的な事例に則して紹介し、学生に理解を深めてもらっています。

 また、扱う範囲は、だいたいテーマごとに、約10年を単位としています。冷戦時代はアメリカとソ連、冷戦後はアメリカのクリントン政権時代の世界政策や、ブッシュ(父)政権の湾岸戦争とブッシュ(息子)政権のアフガニスタン戦争およびイラク戦争を併せて扱います。ですから1年間の講義の後半は、アメリカの対外政策の話が中心となります。時代の流れに沿って見ていき、最終的にブッシュ(息子)のイラク戦争までは触れられるようにしたいと考えています。


では講義を進めるうえで、工夫されていることはありますか?

 ひとつは、授業が始まって最初の10分で、今、実際に起こっていることを話題にし、できる限り、それが国際政治学の学びのどの部分と関係するのか結び付けて話すようにしています。最近は、やはり尖閣問題・竹島問題に終始しているところがありますが、学生の食いつきはよいですね。

 それから今は、パワーポイントを使って授業を進めることの多い時代ですが、私はあえてそれを使わないようにしています。パワーポイントを使うと安心するのか、学生がノートを取らなくなることもあります。またパワーポイントは、次々に画面が変わるので、意識がどんどん新しい画面へ移って、記憶に留めにくいのではないかと思うんですね。ですから、私は基本的に自分の手を動かしてノートを取るべきだと考えています。ただ、説明に必要なレジュメや扱う時代の国際情勢がわかる地図のプリントなどを配布して、学生が理解しやすいようにしています。

授業を通して、学生には何を身に付けてほしいですか? また、大学時代に国際政治学を学ぶ意義とは、何だと思われますか?

 学生には物事の見方、国際政治の見方を身に付けてもらえたらと期待しています。例えば、2001年9月11日に起きたアメリカ同時多発テロ。あの事件の首謀者とされるアルカイーダのウサマ・ビン・ラーディンは、1979年から10年間、ソ連が軍事介入したアフガニスタン戦争の時、アメリカと一緒に反ソ連を掲げて戦った仲間です。それが、なぜ「9.11」で敵対するようになったのか。そこには宗教問題があります。ソ連によるアフガニスタン戦争の時には、ソ連軍がアフガニスタンを軍靴で踏みにじるようなことをしたということで、ビン・ラーディンは義憤を抱き、義勇軍として参加しました。また面白いことに、この時、中国もアメリカやビン・ラーディンと一緒に反ソ連で動いたのです。ですから、これはイデオロギーでの結束や対立ではなく、中国やアメリカは地政学に基づいた行動様式から、反ソ連・反政府勢力のイスラム聖戦士たちに加わったビン・ラーディンは宗教的理由から動いていたわけで、それぞれ思惑は違うのです。私自身は、そうしたものの根底には、アフガニスタン内部のことは別にして国際政治的意味としては、やはり“勢力均衡”という基本的な問題があり、その背後に安全保障や経済的な利益が隠れていて、それプラス宗教問題があるのではないかと思っています。このようにひとつの事例を通して、多角的に物事を捉えることを学生にもしてほしいと思います。

 また、国際政治学の知識は、社会に出てからも役立つはずです。例えば、証券会社に就職した場合、世界の動向によって株価や為替は変わりますから、国際政治を無視することはできません。政治と経済は、リンクしているのです。あるいは、カントリーリスクを捉えることにも役立つでしょう。尖閣問題を機に中国各地で反日デモが起こりましたが、他国でビジネスを展開するには、その国の事情や政治体制、国民性、人治の国か法治の国かなどを知っておかなければなりません。今はグローバル化の時代ですから、日本とは違う、世界各国の文化や価値観を知っておく必要があるのではないかと思います。

最後に高校生や受験生へのメッセージをお願いします

 今、日本の若い人たちは、一般に内向き志向・安定志向で、リスクを負いたがらないと言われています。私が大学生の頃は、商社などに勤めて、海外で仕事をしてみたいという人が割に多かったですし、外交官志望の人も結構いましたが、今はそれも減っているようです。けれども、日本がこれだけの発展を遂げられたのは、私は輸出によってお金を稼いだからだと思っています。つまり、日本が誇れるのは、人的資源や技術力なのです。それならば、おのずと海外との関係の中で生き残っていくしかないように思います。そんな未来の日本を背負って立つのが、若い皆さんです。ですからあまり内向きにならず、多少、人生にチャレンジしようという気概を持ってほしいですね。例えば、大学在学中に留学を考えるのも手です。日本にいると当たり前に思えていることでも、一歩海外へ出るとまったく違うということを知る、よいきっかけになります。大東文化大学は奨学金留学制度など留学制度も充実しているので、ぜひ活用してもらいたいです。また、これは本学の学生にも伝えたいことですが、今は情報化時代ですからインターネットを駆使すれば、たいてい海外の新聞が読めますし、FMラジオも聞けます。情報収集という点においても語学力はあったほうが武器になるので、英語に限らずツールとして外国語を何かひとつ、自分のものにしてほしいですね。

この内容は大東文化大学メールマガジン2013年1月号において配信した内容です。
そのため、他の授業ゼミ紹介ページと原稿テイストが異なります。

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