研究所案内/About Us
所長からのごあいさつ
世界は今、大きな転換期を迎えています。かつてないほどの変革に直面しているといっても過言ではないでしょう。不確実性が高まる中で、歴史の教訓を踏まえながら、現在の経済の実態や課題にきちんと向き合い、激動の時代を生き抜くための新しい経済モデルを模索することが求められています。
大東文化大学経済研究所は、個別研究や研究プロジェクトを通じて、現代経済の状況や変化の動向などを的確に捉え、それに基づいた理論的、実証的な研究を進めています。また、現代の経済、社会が直面する急激な変化を理解するために過去の経済秩序の変遷を振り返ることも重要であり、現状をより深く理解し、さらに今後の動向を探り、どのような対応策が有効なのかを見極める手がかりを得るよう取り組んでいます。
これまで総体的に安定していた国際関係は再編されつつあり、多層的な要因が複雑に絡み合い多方面で不安定になっています。同時に、世界の秩序が激変しており、それとともに経済秩序の再構築が進んでいます。特に、コロナ禍を経て加速したデジタル経済の発展やグローバルサプライチェーンの再構築は、国家や企業の競争力を根本から問い直す要因となっています。
このような時代において、激変する世界のダイナミズムを的確に読み取り、理解していくために、経済の本質的な課題を明らかにし、実践的な知見を提供することが、当研究所の一つの重要な使命であると考えています。新たな地政学リスクや経済の再編については、米中対立やロシア・ウクライナ問題をはじめとする国際関係の変化、経済のブロック化やサプライチェーンの分断が世界経済に及ぼす影響、国際通貨体制の変化や金融市場の不安定化などを的確に理解するための研究が不可欠です。また、AIや量子コンピューター、ブロックチェーンなどが経済、社会に与える影響、自動化・ロボティクスなどによる労働市場の変化や雇用創出面の課題、データ主導型経済と国家デジタル主権など、新たな技術革新、テクノロジーがもたらす影響などを分析することも極めて重要でしょう。同時に、世界共通の課題である環境・エネルギー分野におけるカーボンニュートラル政策の進展や再生可能エネルギー戦略の進捗、資源争奪戦の行方、ESG投資や企業戦略、さらには、人口動態の変化と社会経済の適応なども重要な研究課題となるでしょう。また、気候変動やエネルギー問題への対応も、世界的規模で喫緊の課題となっています。再生可能エネルギーの活用やカーボンニュートラル政策をどのように推進していくかも大きく問われています。持続可能な社会を実現、維持していくことが非常に重要な課題であり、経済、社会と環境のバランスをどのように整えていくかを真剣に考え、行動しなければならないことは言を俟ちません。
世界が大きく変化している今だからこそ、冷静な分析と柔軟な思考をもって次の時代に向けた知見を提供することが求められています。自由主義市場経済と国家資本主義の対立と融合、デジタル通貨の台頭や金融システムの再構築、企業の社会的責任と持続可能なビジネスモデルの構築など、我々が直面している課題は枚挙に暇がありません。換言すれば、これらは「人間同士の共生」、「人と自然の共生」という根源的かつ人類究極の課題であるといえます。
経済研究は、単なる理論や数字の解析にとどまらず、社会全体の発展に貢献するものでなければなりません。大東文化大学経済研究所は、幅広い研究活動を展開し、そこから得られた知見や成果を広く社会に発信することを通して、持続可能で安定した経済社会の実現に貢献できるよう努めて参ります。
経済研究所所長
内藤二郎