研究所の活動/Report
2025年度 研究班活動報告
景教資料の総合的研究
- 代表者
- 宮井 里佳
活動の内容
2025年度の「景教資料の総合的研究」班では、前「中国三教と景教の相互交渉研究」班に引き続き、5名の研究員によって、2006年に発見された景教碑(洛陽碑)を対象とし、中国三教と景教の相互交渉を探求した。
昨年度に引き続き、最重要テクスト「洛陽碑」前半の『大秦景教宣元至本經』を共同で分析した。次に、中国三教の各専門家が、それぞれの間テクスト性を指摘した。具体的には、他の景教テクストとの間テクスト性を武藤研究員が主に担当した。同様に、道教テクストとのそれを高橋研究員が、仏教を宮井研究員が、儒教を湯城研究員が、景教の影響作用史を新居研究員が主に担当した。
方法としては、『大秦景教宣元至本經』の狭義の文脈と広義の文脈の両方を研究する方法を採った。具体的には、まず共同でテクストの邦訳とその註釈を行って、全体のテクスト内照応を明らかにした。その際、既出の翻訳や先行研究についても調査を行い、参考にすべきものを注記した。次に、テクストの各々の部分の背景として、三教の多くのテクストとの照応関係を広く辿っていった。最後に、相互に発見したテクスト外照応関係のある可能性があるテクストを持ち寄り、それぞれのテクストと『大秦景教宣元至本經』のテクスト内照応とを照らし合わせていった。
この研究成果を踏まえ、武藤・湯城・新居・宮井の4名がIAHR2025(第23回国際宗教学宗教史学会世界大会 2025年8月 ポーランド・クラクフ)において“Accommodation Theory Contributing to Jingjiao ‘s Understanding of “Religions” in Tang China in Comparison with That in Other Religions“(唐代中国の景教による「宗教」理解に資した適応論―他の宗教と比較して)と題するパネル発表を行った。
また、人文科学研究所の2025年度研究報告会において本班の報告として「中国浄土教の仏身観――唐代景教の「適応論」と関連して」と題して宮井が行った。
活動の日程
- 2025年5月31日
- 第1回研究会(Zoom開催) 『大秦景教宣元至本經』読み合わせ(高橋)
- 2025年8月5日
- 第2回研究会(Zoom開催) 研究発表(IAHR2025パネルにおける各自発表予定の梗概発表:武藤・湯城・新居・宮井)と討論
- 2025年8月28日
-
IAHR2025におけるパネル発表(ポーランド・クラクフ・ヤギェウォ大学)(武藤・湯城・新居・宮井)
※打ち合わせ:2025年4月10日(板橋キャンパス)、リハーサル:2025年8月27日(クラクフ宿泊先)
- 2025年11月15日
- 第3回研究会(Zoom開催) IAHR2025総括と研究発表(高橋)
- 2025年11月29日
- 人文科学研究所2025年度研究報告会(Zoom開催) 研究報告(宮井)
- 2026年3月3日
- 第4回研究会(Zoom開催) 『大秦景教宣元至本經』読み合わせ(宮井)
波紋的共同体で紡ぐ学びと育ち
- 代表者
- 田尻 敦子
活動の内容
本研究班においては、「波紋的共同体で紡ぐ学びと育ち」をテーマとして、2025年4月1日~2027年3月31日の期間で、調査や研究を行った。本年度は、新しいテーマのもとで研究を立ち上げるため、二年後の研究成果の執筆を目指して、編集委員が、紀要や報告書の計画を立てている。研究班の人数が多く、インドネシア語を母国語とする兼任研究員も多いため、編集委員として、研究代表者と今井が、2027年3月31日の研究期間で研究成果を刊行できるように、会議を行い、実務を進めている。
インドネシアからは、研究代表者が数十年間の共同研究を行ってきたI Ketut Budiana氏、I Wayan Karja氏、I Wayan Seriyoga Partaが参加し、オンラインでフィールドワークの代替となる情報の共有やデータの収集を行うことができた。
また、本研究班には研究代表者のゼミの卒業生である今井崇恵、佐藤悦子、長野遼らが参加している。編集員の今井を中心に、大学院に在籍して学んでいる本学卒業生達が参加するミーティングなども開催し、学びの共同体を活性化することができた。本研究班に参加することを目標に、論文執筆を試みるゼミの卒業生もおり、本研究班自体が波紋的な学びの共同体として醸成されつつある。また、人文科学研究所の企画する報告会や座談会に参加し、多様な専門分野の知見を深めることができた。
研究活動日程
- 2025年4月28日
- 人文科学研究所 部会(本研究班の編集委員会のミーティング)
- 2025年6月23日
- 人文科学研究所 部会(本研究班の編集委員会のミーティング)
- 2025年9月29日
- 人文科学研究所 研究部会(本研究班の編集委員会のミーティング)
- 2025年10月3日
- 本研究班メール会議(論文執筆の申し込みの再確認やアンケートの確認等)
- 2025年10月27日
- 人文科学研究所 研究部会(本研究班の編集委員会のミーティング)
- 2025年11月29日
- 人文科学研究所 研究報告会 参加
- 2026年1月26日
- 人文科学研究所 座談会 参加 / 人文科学研究所 研究部会(本研究班の編集委員会のミーティング)
東アジア美学史研究
- 代表者
- 河内 利治
活動の内容
2025年度、本研究班は昨年度に引き続き、「東アジア美学史」という大きな共通テーマのもと、班員各自の問題関心にもとづく研究を進め、月例研究会でその成果を相互に検討するかたちで活動を行った。研究会は年間七回、すべてオンラインで実施し、研究計画の共有から個別発表まで、継続的な討議の場を確保することができた。
今年度の発表は、詩論における批評術語の検討、書道研究におけるデジタル・ヒューマニティーズ(情報人文学)の応用、篆刻を媒介とする日中書法交流、「蘭亭詩」にみる王羲之の思想、死者を悼む「哭○○」詩の例、さらに絵画作品《清明上河図》に見える文字と書と、扱う対象・方法は多岐にわたった。にもかかわらず、それぞれの発表は最終的に各芸術形式の基層へと立ち戻り、東アジアの「美」を支える思考や技法、制度や交流のあり方を問い直すものとなった。
文学、書道、絵画の研究者が一堂に会して、こうした多様な切り口の研究が互いに照応しながら、「東アジアの美学」についての認識を深めることが本研究班の特色であろう。また、本年度の研究活動の成果をまとめた『中国美学範疇研究論集』第十三集が2026年3月末に刊行された。
活動の日程
- 2025年4月28日
- 第1回(オンライン) 今年度研究計画の打ち合わせ
- 2025年6月23日
- 第2回(オンライン) 研究発表「批評用語「升堂」「入室」について」(秋谷幸治)
- 2025年7月28日
- 第3回(オンライン) 研究発表「書学におけるデジタル・ヒューマニティーズの実践」(亀澤孝幸)
- 2025年9月22日
- 第4回(オンライン) 研究発表「西泠印社にまつわる日中書法交流」(川内佑毅)
- 2025年10月27日
- 第5回(オンライン) 研究発表「王羲之の「蘭亭詩」に詠まれる「真」」(三枝秀子)
- 2025年11月24日
- 第6回(オンライン) 研究発表「「哭○○」詩について」(鈴木拓也)
- 2025年12月22日
- 第7回(オンライン) 研究発表「《清明上河図》にみえる文字と書」(陳達明)
日本文学における歴史的事象
- 代表者
- 美留町 義雄
活動の内容
本研究班では、明治以降の日本文学を題材にして、近代化にともなう歴史的な変遷に目配りをしつつ、その時代性の中で文学テクストを読み直す作業を行ってきた。基本的には、研究員の専門とする作家を扱い、研究会で口頭発表を行い、質疑を通じて多角的に批評しながら、それぞれの研究を深めるという作業を行った。以下にその成果をまとめる。
5月18日にオンラインにて、山田悠介研究員による口頭発表「日本文学における声音の研究」を行った。石牟礼道子を中心として、言語表現の問題性と、人間と自然環境との関わりについて理解を深めた。
11月8日にオンラインにて、下山嬢子研究員による口頭発表「正宗白鳥『夏木立』に描かれたキリスト教」をテーマにして、研究会を実施した。白鳥の『夏木立』を題材に、キリスト教との関係を自己の生きる基盤の中心に置いて試行錯誤する主人公の姿が、上京青年を描いた『三四郎』『青年』をも交えて論じられた。
2月9日に催された今年度最後の研究会では、千葉一幹研究員の著書『失格でもいいじゃないの ―太宰治の罪と愛』(講談社メチエ、2023年2月)の合評が行われた。年度の最後の会は、大東文化会館にて対面にて実施され、会の後には懇親会も行われた。
研究会の日程とテーマ
- 2025年5月18日
- Zoomオンライン開催 山田悠介「日本文学における声音の研究」
- 2025年11月8日
- Zoomオンライン開催 下山嬢子「正宗白鳥『夏木立』に描かれたキリスト教」
- 2026年2月9日
- 大東文化会館開催 千葉一幹『失格でもいいじゃないの ―太宰治の罪と愛』合評会
古典文学の享受に関する研究
- 代表者
- 德植 俊之
活動の内容
本研究班は、文学作品がどのように享受されていったのかを、多角的に検討し、明らかにすることを目的とする。
文学作品の享受を考える材料としては、写本や注釈書、さらにはその作品を描いた絵、あるいは調度品の意匠なども検討対象に加える必要がある。本年度は、基本的資料の収集と分析を行った。具体的には、寂蓮を伝称筆者とする未詳歌集の古筆切を新たに入手したので、その出典の検討と、新出断簡から歌林苑の活動について明らかになる点を見いだし、その分析を試みた。その成果は、平安文学の会12月例会における德植俊之の口頭発表、及び『日本文学研究』第65号掲載論文に結実した。
次年度は、絵画資料などにも目を広げていきたい。
活動の日程
- 2025年4月26日
- 研究集会(研究方針の確認と具体的手順についての打ち合わせ)
- 2025年4月~7月
- 資料収集と整理
- 2025年8月2日
- 研究集会(研究発表及び討議①)
- 2025年8月~12月
- 資料収集と整理
- 2025年12月6日
- 研究集会(研究発表及び討議②)
- 2026年3月9日
- 研究集会(研究発表及び討議③ 2025年度研究のまとめ)
日本および中国の書の多角的研究
- 代表者
- 髙橋 利郎
活動の内容
2年間の研究期間では、日本書道・書道史、中国書法・書道史に関する多方面にわたる研究を並行して行うこととした。
具体的には、日本班と中国班を作り、次の4つのテーマについて各班が研究を進め、適時研究の進捗状況と成果を交換し合う。
- 日本近世の能書の書的事象の考察を目的に書状を解読する
- 中古から近世にかけての日本の書跡に関する書法的考察
- 中国秦漢時期の書跡を主たる対象に、鐫刻に関する事象の研究を掘り下げる
- 中国の書跡及び書人、璽印に関する新研究
日本班
本年度の日本班は、研究成果の公表を目標に、研究員個別のテーマを設けて研究活動を展開した。
中国班
本年度の中国班は、2026年3月末の研究成果刊行を達成し、各人の関心にしたがって研究を進めた。研究員の研究対象は以下のとおりである。なお、中国班班長は澤田が務めた。
安藤:『山東定陶漢墓出土文字萃編』所収の磚の文字整理
小西:骨簽の刻の整理と字体の簡略化の研究
権田:河井荃廬の研究史、及び『印印』の巻頭に収録された名品の研究
澤田:米芾・王鐸の書跡に対する初歩的研究と、鄧石如「笈游日記」の訓注
中村:陸耀遹『金石続編』米芾薬洲九陽石題名の読解と由来の練丹求仙薬との関連の調査
栗:二件の燕系璽印外司爐鍴の検証、及び印論にみえる趣字術語について
活動の日程
- 〈日本班〉
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2025年6月19日:研究発表会での発表者希望、『研究報告書』、「人文科学」投稿の問い合わせ
2025年7月4日:高田研究員の研究発表会における発表を決定
2025年9月20日:髙橋研究員の『研究報告書』投稿を決定
- 〈中国班〉
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2025年6月19日:『研究報告書』及び「人文科学」執筆申込の希望の問い合わせ
2025年7月6日:『研究報告書』の執筆予定者を安藤・権田・澤田の3研究員に決定。また「人文科学」の投稿は栗研究員に決定。
2025年9月20日:各人の研究現状、原稿進稿報告等を共有。
2025年12月10日:「研究報告書」の権田・澤田の両原稿を研究班代表に提出。
2026年3月7日:今年度の研究活動報告を共有。
- 〈日本・中国共通〉
- 2026年2月5日:丸山猶計研究員を代表とする2026年度研究班「日本および中国の書の多角的研究」の設置の要請