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活動報告

「台北サイクル2023」を現地で視察/野嶋剛

 

 台湾で3月下旬から開催された「台北国際自転車見本市(台北サイクル2023)」を視察した。主催者であるTAITRAの好意で、開幕式典に来賓として参加する機会を得た。台北サイクルはアジア最大規模の自転車展示会であり、過去3年間は新型コロナの流行のために中止となっていた。久々の開催となった今回の台北サイクルでは「国際化」、「電動化」、「マイクロモビリティ」、「持続可能性」の4つのキーワードが主催者側に指定された。

 私(野嶋)が来賓として招かれた開幕式典では、蔡英文総統自ら登壇したほか、王美花・経済部長(大臣)、黄志芳・TAITRA理事長らが次々と演説を行い、その中には、台湾の自転車行政のポリシーや現状を理解するうえで有意義な内容も含まれていた。

蔡英文総統は「台湾では半導体がとても有名ですが、第二の産業は何かと聞かれたら私は迷いなく自転車を挙げるでしょう」と切り出した。

「昨年の台湾の自転車完成車および部品の総生産額は二千億円台湾ドルを超え、前年にくらべて 23%の成長を遂げ、世界二位の地位にある。過去3年の新型コロナの流行のなかで国民の運動、フィットネスへの習慣が変わり、戸外運動や室内運動に関わらず、台湾のスポーツ関連産業の発展はめざましい」「台湾の自転車産業およびスポーツ用品産業が大きく成長し、メイドイン台湾のブランドが国際社会でより広がることを期待している」

自転車産業を統括する王美花・経済部長(大臣)は「2022年の自転車完車と部品の輸出額は60億米ドルを超えており、完成車では輸出される三台のうち一台は電動車になっている。環境保護や省力化の流れから、人々が疲れずに乗れる電動自転車を選択するようになっており、今後もかなりの販売の成長が期待できる。我が国の自転車産業の優良な品質と整ったサプライチェーンは海外から高く評価されており、将来的に台湾の半導体技術と電動自転車が融合し、国際電動車市場に打って出ていくことに勝機が期待できる。自転車の部品についても輸出高は年々成長しており、古いタイプの自転車サプライチェーンが、次第に先端のものに生まれ変わり、チェーンの価格なども大幅に上がってさらなるビジネスチャンスの拡大を生んでいる」と評価。「政府は自転車産業の育成に国内業者を支援しており、特別条例によって企業のアップグレードを推進し、「IT化」「低炭素化」に期待している。最近自転車企業の愛では「中華自転車永続連盟協会」を設立しており、サステイナブルを合言葉に欧州などと協力して国際市場を目指していきたい」と期待を込めた。

黄志芳・TAITRA理事長は「コロナによる制限が解除され、最初のサイクルショーとなり、興奮を禁じ得ません。国内外の参加者、企業、そして政府に感謝をします。私たちは新しい可能性の世紀を迎えています。新テクノロジーは新しい時代の窓を開き、新しい発明は私たちの仕事、レジャー、エクセサイズで一つにつなげてくれます」「自転車とスポール用品産業はエコフレンドリーな行動に大きく貢献してくれるもので、今回の展示からグリーンビジネスや持続可能な取り組みへのヒントを発見してもらいたい。台湾は半導体の技術開発のリーダーですが、それが台北サイクルモードを部品展をユニークなものにしています」と述べた。

 台北サイクルではリアル見本市とオンライン見本市「台北サイクルデジタルゴー」が同時に行われ、リアル見本市では、メリダ、ジャイアント、スラム、シマノなどの大手ブランドを含め850社が3050のブースを使用して出展。同時に開催されるオンライン見本市でも206社が出展した。2023年の見本市は、“レジリエントなサプライチェーン(Resilient Supply Chain)”、“デジタル接続(Digital Connections)”、“力強いイノベーション(Vibrant Innovations)”、“ダイナミックなライフスタイル(Dynamic Lifestyle)”、“サステナブルムーブ(Sustainable Moves)”という5大テーマに沿って構成されていた。期間中はサステナビリティを主題としたさまざまな交流活動が目立った。

 国際化も一つのテーマで、台湾外から計31か国の参加があり、EUパビリオン、日本パビリオン、イタリアパビリオンなどの国別パビリオンも参加した。電動化の動きがさらに顕著となっており、電動自転車及びドライブユニットエリアの規模が2022年比で40%以上成長し、300近いブースが展開された。自転車や電動自転車はラストマイルのモビリティを達成できる交通手段である。そのマイクロモビリティとして新規に出展する企業は15%に達し、その中には自動車、オートバイメーカーも含まれる。見本市2日目には、自転車産業の持続可能な実践を主軸とした「台北サイクルフォーラム」を開催し、欧米や台湾から業界専門家を招いて、自転車産業が二酸化炭素削減からゼロカーボンへ着実に移行するためのビジョンと方法について交流した。

 見本市3日目の「台北サイクルワークショップ」では、台湾の自転車コミュニティリーダーを招き、型にはまらないマーケティング方法の共有を通じて、台湾自転車産業の豊富な地域エネルギーと多様な活力を示すものだった。

サイクルツーリズムにも力を入れた展示があったのが印象深かった。日本からもナショナルサイクルルート(NCR)に選ばれた茨城県(りんりんサイクルロード)と、静岡県(太平洋湾岸サイクリングロード)から出店していた。台湾では政府交通局傘下の台湾観光協会による16のサイクリングロードが推奨されており、各ルートごとのブースが設置され、サイクリングマップなどが参加者に配布されているほか、パネルを使った騎乗体験も行えるようになっていた。