学生取材企画
2024.02.29
「創立100周年記念製作 記念碑・モニュメント」製作秘話:製作チームに学生取材スタッフが深堀りインタビュー
2023年9月25日、100周年記念事業の一環として製作(建立)された記念碑・モニュメントの除幕式が行われました。今回は記念碑・モニュメントの製作を担当したプロジェクトメンバーを代表して、監査室事務長の大嶋さん・書道研究所職員の得丸さん・総務課職員の解良さんに、製作過程についてインタビューしました。
記念碑の製作が決まった時の思いをお教えください。
大嶋さん:当時の100周年記念事業推進室の所属長から、「このたびの100周年記念事業では、沢山の事務職員の方々に様々なプロジェクトに参画してもらい、皆で記念事業を盛り上げていきたいと考えているので、是非とも大嶋さんには記念碑・モニュメント製作プロジェクトの幹事をやってほしい」と声を掛られ、正直戸惑いがありました。「どうして監査室の私に…?」と率直に思いました。
また、記念碑・モニュメントを製作するにあたり書家で本学名誉教授の髙木聖雨先生に揮毫していただく準備があるとのお話があり、当時は髙木聖雨先生によって揮毫された文字を石(プレート版)に記し、校内の然るべき場所へ建てるというシンプルなプロジェクトだと想定し引き受けたというのが本音でした。
得丸さん:100周年を記念する記念碑・モニュメントに書作品を掲載でき、芸術院会員であり日本を代表する書家である本学名誉教授の髙木聖雨先生に揮毫いただけることになり、書道に携わる職員として非常に興奮を覚えました。しかし、そのプロジェクトチームに私が携わると決まったときには重責を感じ、果たして務まるのだろうかと不安でいっぱいだったことを鮮明に覚えています。
監査室事務長 大嶋さん
書道研究所職員 得丸さん
今回の記念碑が製作された意味、意義についてどのようにお考えですか。
解良さん:100周年記念事業の一環として、板橋キャンパス内に記念碑・モニュメントを建立し、本学に在籍する学生・教職員を主とする学園関係者や来校者といったステークホルダーに対して、本学が創立100周年という節目の年を迎えたことをアピールするとともに、100周年のシンボルとして末永く学園関係者の目印や拠り所になることを期待しています。
総務課職員 解良さん
製作する上でこだわった点や注目してほしい点をお教えください。また、今回の記念碑のコンセプトについてもお教えください。
得丸さん:こだわった点・注目してほしい点として、100周年を迎えた重き歴史を尊重し、また多彩な文化との出会いの場としてのキャンパスにふさわしい趣きのある落ち着いた色調を基本としています。モニュメントとして、パッと目を引く奇抜なものというよりは、今ある空間に調和して人が集まれるような、一緒に写真を撮れるようなものにしました。また、学生たちが「ここ集合ね」と言って集まれる、日常に溶け込み、普段使いされるモニュメントになってほしいといった思いも込めました。そして、本学の「文化(書)」と「歴史(歩み)」を永遠に伝え続ける記念モニュメントとなっています。
コンセプトは、「これまでの100年の振り返り」、「シンボル的なもの」、「待ち合わせの目印に」をテーマに、“大東文化らしさ”(伝統と文化)を表現するために、①“The大東書道”として指定した揮毫作品を軸にデザインをすること。②本学100周年ロゴマークを入れること。③学園の沿革を入れること。を主たるデザイン要件としました。
複数の制作会社からの提案(コンペティション)により、仕様書に基づくプレゼンテーションが行われ、①「100周年記念碑・モニュメントにふさわしいデザインであるか、新たなシンボルとして認知され得るデザインであるか、といった『デザイン性』」、②「学生・教職員の集合場所(待合せの目印)となるなどの機能性や象徴としての存在感を有しているか、といった『提案力・訴求力』」、③「メンテナンスをしなくても劣化しにくい材質を使用しているか、といった『メンテナンス性』」を満たしているかを評価基準に、業者選定を行いました。
製作する上で大変だった点をお教えください。
大嶋さん:大変だったことはいくつかあります。
❶デザイン・レイアウト変更
コンペにて提案いただいた選定業者さんからのデザイン・レイアウト案から、プロジェクト内での検討及び業者さんとの協議を重ねることにより、レイアウト変更が11回にも及びました。
多くのレイアウト変更案
❷揮毫いただいた書作品の繊細かつ最大限のモニュメントへの表現(反映)
今回の肝である髙木聖雨先生の揮毫作品を業者さんの特殊コーティング加工(EB コートプリント)にて高耐候・高精細印刷にて忠実に表現し、ガラスコーティングの様な光沢感と高級感溢れる印刷技術で表示していただきました。特に実際の書作品よりも縮小版となるため、繊細な文字の擦れ具合や単なる書作品の縮小したものにならないような配慮(大きくみせるための工夫)を追求し、当初のサインの横幅を拡張させました。これにより、新たな予算対応や手続きを要することになりました。また、キャプション(表題や短い説明文など)内容やフォントのあり方、書作品とキャプションを仕切るラインの有無や色・幅などへの"こだわり"を最後の最後まで追求しました。
❸100年の歩み(学園の沿革)の掲出
これまでHP等に掲出されていた沿革をそのまま載せることができず、何をどこまで載せるかを具に確認していくと、記されていない沿革が散見され、この沿革を入れる(入っている)のであれば、これも入れておかないといけないなど新たな気付きや発見が出てきてしまい、掲出情報が増えてしまって、どうすればよいのか、最終的に誰がこの責任を負うのかといった困難に陥ってしまいました。思った以上に余分な手間が掛かってしまいました。
「弘毅」という文字が揮毫された理由をお教えください。
得丸さん:「本学の校舎に建立するのであれば、『論語』から撰文するのが本学らしさを出せるのではないか」という髙木聖雨先生からの提案をいただき、プロジェクトチームから、「和為貴(調和を得る。和合することがもっとも大切。)」「天道(天の道理。)」「文質彬彬(人格の完成。)」「仁者壽(仁者は安静で天寿を全うする。)」「徳行(行い正しい。)」「剛毅(意思が強く果断で我慢強い。)」「文徳(学問、文教の徳。)」「弘毅(心が広く志が高い、包容力と強固な意志。)」「多聞(博識をいう。)」「三益友(交わって益となる三種の友。正しい人、誠実な人、多聞な人をいう。)」「聞達(名声が世に聞こえる。)」といった候補を出しました。
また、文句の意味や伝えたいこととしてどの文字がふさわしいかを考え、当初プロジェクトチームとしては、「三益友」の3文字が良いのではないかと申し上げましたが、この文字候補の中から、最終的には髙木聖雨先生がモニュメントにするにふさわしい書作品となり得る文字をお選びいただいた上で揮毫していただきました。
この作品は、今年度の『読売書法展』への出展作品ともなったことから文句の意味だけでなく、書作品としても芸術性の高い「弘毅」という文字を揮毫されることとなった次第です。
記念碑下部に「X(クロス)」が描かれている理由をお教えください。
解良さん:「X(クロス)」については業者さんからの提案でした。アクセントカラーとして大東文化大学100周年ロゴカラー※1,2を使用し、3つのパネル(サイン)が独立タイプでありながらも、モニュメントとしての調和性を持たせています。近代的な建築を取り入れた都市型キャンパスに溶け込むように金属質かつ直線的なデザインを取り入れています。
この提案に対する私たちの解釈として、「X (クロス)」は「CROSSING (世界の文化の交差点)」を意味しています。
本学は創設時から、世界中の人や文化が国境を超えて交差する場所(大学)でありたいと考えてきましたので、まさしく本学の建学の精神になぞらえています。
※1…100周年ロゴは、大東文化大学で象徴的に用いられる「青桐」をモチーフとして活用し、シンボル化したもので、樹木の持つ、蓄積(歴史)と成長(若さ)を強調したデザインで、CROSSING+を表現しています。
※2…テーマカラーは、青桐の色をベースとして、“Daito Future Green”(「新しい文化が芽吹くこれからの大東」の象徴)と称し、緑が持つ「自然」「芽吹き(躍動)」「調和」といった印象を保ちながら、普通の緑とは異なる青みが「独自性」「多様性」「進化」を表現しています。
赤枠の部分が「X (クロス)」を表している
このプロジェクトに携わった皆さんの想いをお聞かせください。
解良さん:100周年の時に在籍している職員であることの自覚を改めて持つとともに、今後も残り続けるモニュメントを作成するプレッシャーを感じました。
結果的に多くの方と協力し、沢山の意見を出し合って考えながらできたものなので、実際に完成したものを見ると感動しましたし、素敵なものができたと思います。
得丸さん:初めはこんな大きなプロジェクトに自分が携わっていいのかという気持ちでした。
髙木聖雨先生の作品を入れたモニュメントを作るため、粗雑なものは作れないなというプレッシャーがありました。私は、アイディアを出すのが苦手でしたが、皆さんと話し合い助けられながらデザインやレイアウトを決めていく過程はすごく楽しかったです。期限や金銭面を気にしながら作るのはとにかく大変でしたし、完成するまでドキドキしましたが、素敵なものができ、見た人たちに喜んでもらえたのがすごく嬉しかったです。これからもずっと良い形で残っていくと考えると、このプロジェクトに携われて良かったと思っています。
大嶋さん:初めのうちは、有名な書家の先生の揮毫作品の文字を刻んだ記念碑を建てるというシンプルなプロジェクトと捉えていましたが、プロジェクトチームの皆さんや業者さんと話し合いを重ねる中で、より良いものを作らなくてはならないと身が引き締まり、いい加減なものは作れないと思うようになりました。私たちはとても責任のある大切なものを作っているという重圧をひしひしと感じ、デザイン・レイアウトが確定するまでの間、業者さんに責付かれながら胃が痛くなるような日々を過ごしました。しかしながら、最終的にとても良いものを作り上げることができ、モニュメントが夕暮れ時にライトアップされた姿を見ると、昼間とはまた違った趣きがあって、本プロジェクトに携わって良かったと心から思っています。もっと多くの方々に、近くでモニュメントを鑑賞し、楽しんでもらえたら嬉しいです。
最後に、モニュメント製作にあたり、管理部や書道研究所の皆様からいただいたご助言やご支援に感謝申し上げます。
夕方以降はライトアップされる
おわりに
大嶋さん、得丸さん、解良さんありがとうございました。
100周年記念事業には多くのプロジェクトがありますが、特に今回製作された記念碑・モニュメントはこの先いつまでも形として残っていくものなので、これからも大切に守っていってほしいと思います。
学生取材企画ディレクター:西脇港斗 マネージャー:佐藤美樹 クルー:小林桃子・廣瀬駿