Web会議システム(ZOOM)にて定例の人文科学研究所報告会を開催いたします。研究班員以外にも聴講可能です。希望される方は、①所属、②氏名、③メールアドレスをご記入の上、人文科学研究所(jinbunken★ic.daito.ac.jp)※まで申し込みください。後日招待リンクをお送りいたします。
※メールを送る際は★を「@」に変更してお送りください。
日時 | 2024(令和6)年11月30日(土)13:00~ |
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会場 | オンライン( Zoom ) 開催 |
所長挨拶
報告1 13:05~13:35
題目 | 学校と学問共同体に同時に参加する教育実習の未来像 |
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報告者 | 田尻敦子・今井崇恵/学びと育ちの共同体班(代表:田尻敦子) |
研究発表内容
現在、教員の多忙化と教員不足の悪循環が指摘されている。教育実習を経験した若者達が、その悪循環から抜け出る方法を模索し、「教員ひとりひとりを幸せにしよう」と創設したティーチャーエイドは、いかにして立ち上げられたのだろうか。
創設者ら十数人へのインタビューから、海外体験を経た後の教育実習が日本の教職のあり方を問い直すことにどのように影響を与えたのかを探究する。創設者の櫃割仁平氏は、ニュージーランドへのワーキングホリデーの時に学校を見学した体験を経た後に、教育実習に行ったところ、それまで「当たり前」だった学校が異なる世界に見えて「違和感の嵐」を感じたという。「それでも教師になりたい」と働く大切な人達をケアしたいとティーチャーエイドを立ち上げたと語る。どのようにしたら教師をケアできるのかを探究する過程で、多様な研究者に自ら連絡をとり、大学院進学を決めたという。その過程を考察することで、学問共同体に参加しながら実践の現場に参加する「参与観察」としての教育実習のあり方を再構築する試みを行う。
報告2 13:40~14:10
題目 | 〈道〉は会意字か? |
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報告者 | 亀澤孝幸/東アジア美学史研究班(代表:河内利治) |
研究発表内容
『説文』は〈道〉字を〈辵〉と〈首〉とに従う会意字と説く。〈辵〉は道路を進むことをあらわす意符であることは明白であるが、〈首〉が何を意味するのか『説文』は説明していない。白川静はこれを異族の首を手に持って邪気を払いながら道を進む呪的儀礼を文字化したものだという。〈道〉字は殷代甲骨文にはみえず、西周初期の金文にはじめてみえる。甲骨文では、〈𧗟〉字が〈道〉字の代わりに用いられていたとみる説も有力である。しかし、甲骨文にみえる〈首〉字の用例を検討すると、同字が仮借字として、すなわち表音的用法として、〈道〉をあらわしていた可能性が浮かび上がる。ここから〈道〉は会意字ではなく、形声字であることを論じる。
報告3 14:15~14:45
題目 | 森鷗外とドイツの貴族文化 ―『文づかひ』の背景― |
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報告者 | 美留町義雄/日本文学における歴史的事象の研究班(代表:美留町義雄) |
研究発表内容
森鷗外は、ドイツ留学時代(1884-88)に多くの人々と交流している。軍人や医学者はもちろん、大学生や芸術家、そして一般の庶民にいたるまで、彼の交遊圏は実に広範にわたっている。なかでも特に際立つのは、彼が王侯や貴族に接する機会に恵まれた点であろう。彼が留学した19世紀の80年代は、前世紀に花開いたヨーロッパの宮廷文化が、近代という時代の波に揉まれながらも、まだかろうじてその体裁を保っていた時代であった。
本発表では、鷗外が実際に会った王族について報告する。さらに、彼の体験をもとに書かれた小説『文づかひ』(1891)に表現されているザクセン王国の宮廷文化、特に舞踏会の描写を対象とし、ヒロインのイーダ姫の個性的な人物像について、当時の王侯貴族をめぐる文化史的文脈の中で論じたい。
報告4 14:50~15:20
題目 | 『徒然草』翻訳攷 ─近代以降の翻訳書目、研究史を中心に─ |
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報告者 | 小枝駿/近世絵入り本の研究班(代表:德植俊之) |
研究発表内容
『徒然草』は、C.S.イービによる英訳 Meditations of a Recluse(1883年)以降、英語・ドイツ語・フランス語を中心に翻訳が進み、日本国内においてもそれらが断片的に参照されてきた。しかし『徒然草』の翻訳研究の基盤となる翻訳書や翻訳研究史の包括的な整理は、これまで十分には進展していない。そこで本報告では、近代以降における『徒然草』の翻訳書を可能な限り網羅的に整理し、その実態を明らかにしたい。また、日本における翻訳研究史については、初めて翻訳『徒然草』について言及したと考えられる芝野六助『日本文学史』(1908年)以降の翻訳研究動向を、準備期・停滞期・発展期の三段階に分類し、各期における研究の進展および特徴を明らかにする。これにより、『徒然草』翻訳研究の基盤を構築し、今後の研究の発展に寄与することを目指す。