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国際関係学科国際文化学科

2015年度第2回FD研修会が行われました(11月10日)。

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 11月10日(火)16時30分より、管理棟三階第二会議室において、国際関係学部・第2回FD(Faculty Development)研修会が開催されました。2013年度より「学生を成長させる学びとは?」「正課(授業)における『ジェネリックスキル』育成の課題」「初年次キャリア教育の課題」等、「アクティブ・ラーニング」に焦点を当てて研修を行ってきましたが、今回は、視点を「企業」に据えました。ずばり「企業が大学教育に期待すること」。株式会社エービーシー商会・株式会社エービーシーエデュケーションから、山本みどり氏を講師にお招きし、大学教育に対する「企業の本音」を伺おうという企画です。学部の教職員(18名)の他、東松山キャリア支援課(国際関係学部担当)の川瀬龍彦氏にもご参加いただきました。

新卒採用の観点

 人事課長として実際の選考にあたっている経験をふまえた、具体的で説得力に富んだ講話でした。山本氏によれば、企業の選考における学生評価には、三つの観点があるといいます。第一は「商人になれる人物であるかどうか(客に話を聞いてもらえる人物なのかどうか)」という観点。第二は、企業の宿命でもある「同業他社との差異化」に貢献できる人材であるかどうか。第三は、企業は内定段階で「完璧な学生」をもとめてはいないということ(入社3年程度の伸び白に期待している企業が多い)。

選考をめぐって

 学生の「印象」(声の大きさ、ビジネスマナー、年長世代への対応力など)が大きく影響する選考の初期段階と、働く意欲や熱意に注目する最終段階。選考を通じて大事なことは「人前で堂々と簡潔に話せる力(対峙できる力)」だといいます。簡潔な話し方とは、端的に、文末(句点)を意識する話し方のこと。異論や反論にひるむことなく、発展的に議論していける対話力と、緊張感に対するストレス耐性も不可欠です。
 緊張状態に脆い学生には、面接時の企業側の質問の掘り下げを一概に「圧迫面接」とネガティブに捉える向きがあります。しかし「圧迫面接」には、企業が学生に関心をもっていることの“サイン”という一面もあるので、せっかくのチャンスを見逃すことのないよう、冷静な見極めを学生にご指導いただきたいと、山本氏。
 最近の面接における学生の特徴的な言葉遣いも紹介されました。自分の行動に対して用いる「絶賛された」「見事に成し遂げた」「成長を期待したい」という表現や、ひとりよがりな「自分らしく(ありのままに)」の連発(自分らしい生き方、自分らしく働ける職場)など。

「企業がもとめる人材」への誤解

 山本氏は、よく目にする「企業がもとめる人材」にも大きな誤解があるといいます。たとえば「コミュニケーション能力」は、英語力や聞く力というよりは「反応する力(応答する力)」のこと。「主体性」「チャレンジ精神」は、やりたいことではなく、やらなければならないことを前提とした能力。すなわち、労苦をともなう仕事や新しい課題に対する積極的な態度を意味します。興味や関心のあること、好きなことに主体的になるのは当たり前!のことです。

大学に期待したいこと

 最後に、大学で働く教職員への二つの期待が語られました。第一は、学生が大学に帰属意識や誇りをもてるような環境をつくってもらいたいということ。自分の大学を悪くいう学生を採用する企業はない!とも。第一希望で入学した学生が必ずしも多いとはいえない本学部にとって、真剣に取り組まなければならない大きな課題です。第二は、学生が「働くことに憧れをもつ」雰囲気づくりを心がけてもらいたいということ。「大学の教職員は、学生にとってもっとも身近にいる『社会人』です」「学生は意外と教職員の仕事振りをしっかり見ているものです」――意表を突く山本氏の言葉に、学生の職業観の形成における教職員の責任の重大さを再認識させられた次第です。

質問

 実に明快な山本氏の講話に対して、参加した教職員からは数々の積極的な質問がなされました。「大学に対する肯定感をもたせるにはどのようなことをすればよいか」。学生の基本的なマナーの教育をめぐっては賛否両論がありました。「『躾』は大学教育でやることではないし、やろうとしてもできないのではないか」という意見。一方で「大学は『躾』の指導を高校にもとめ、高校は中学に、中学は小学校に、小学校は家庭にもとめることになる。けれども、責任を回避しても何の問題も解決しない。やはり就職に必要であり、指導で何とかなるのであれば『躾』に配慮していくことも教職員の課題のひとつなのではないか」。

 「教員から見て必ずしも学業に真面目に取り組んでいない学生(いいかげんな学生)が複数の内定を得ることがあるが、これをどう理解すればよいか。企業の評価はどうなっているのか」「英語力は不可欠だというが、どの程度の英語力が必要なのか」「大学で学んだ授業の内容や卒業論文は、企業ではあまり評価されないということか」「最近『問題発見力』や『問題解決力』が「もっとも必要な能力!」といわれることがあるが、こうした能力を企業の選考面接ではどのような方法で評価・測定するのか」。さらに「女子学生の就職の今後の可能性」や「転職の問題点」など、学生のキャリア(人生)や就職を熱心に考えている教職員ならではの質問が続き、山本氏からは丁寧な回答がなされました。
 
 「企業が大学教育にどのようなことを期待しているのか」。まさに「企業の本音」を窺い知ることができた、有意義な研修会になりました。研修会の終了後、参加した教職員からは、講話への「絶賛!」とともに「山本先生の話を、学生にもぜひ聞かせたい」という声が上がっています。「企業と雇用」など、2016年度のキャリア講座の中で実現していきたいと思います。

ご多忙の折、研修会の講師を快諾された山本みどり氏には、記して深く感謝の意を表します。