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国際関係学科国際文化学科

「大学生のための県内企業魅力発見事業」報告・問題解決学入門(1)

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  問題解決学入門では、細田咲江先生(株式会社ベネッセi-キャリア担当講師)の指導の下で、4月に大学生になったばかりの40名の1年生が、二つの企業の経営課題に取り組みます。4月8日の初回授業で、6つのチームが編成されるや、22日には、早くも前半セッション(Project A)の課題出しが行われました。埼玉中小企業家同友会の田ノ上哲美氏他、埼玉県産業労働部就業支援課の金田剛氏と石井悠史にもご参観いただきました。

課題出し

 前半セッション(Project A)で課題出しをご担当いただく企業はCSリレーションズ株式会社です。増田恭章代表取締役社長による、「新幹線型経営スタイル」という経営理念や「社会人として必要な問題解決能力」に関する講話の後に、以下のような課題が提示されました。

 あなたは、CSリレーションズの社員です。配属先はアメニティ事業部で行政とのネーミングライツ事業の推進責任者です。和光市駅前「トイレ診断士の厠堂」のニュースを知り、東京都足立区から「竹ノ塚駅前トイレでもネーミングライツ事業をして欲しい」というオファーが来ました。社会貢献活動を継続できる仕組みを構築し、我が社の経営理念であるALLWINを実現する企画を提案せよ。

 すべてのチームが竹ノ塚駅前トイレを現地視察し、「ALL WIN」の施策を考案するためにブレストやKJ法など習ったばかりの問題解決のフレームワークを駆使して、智恵を絞り準備を進めました。

第一次提案

 5月13日には、第一次提案(中間報告)が行われました。増田社長を前に、学生たちはやや緊張した面持ちでプレゼンを行いました。前日の締切時刻までにプレゼン資料を提出できなかったチーム、意見がまとめきれず、肝心要の提案を課題としてしまっているチームがありました。辛うじて提案をまとめたチームにしても、増田社長からは、具体性と現実性(採算性)を欠いていて「企業提案としては通用しない」と手厳しく批評されました。第二次提案では、どこまで、実現可能性のある具体的な提案ができるかが課題となります。埼玉中小企業家同友会事務局の田ノ上哲美氏古川佳子氏、埼玉県産業労働部就業支援課の石井悠史氏にご参観いただきました。

第二次提案

 5月27日、CSリレーションズ増田社長への最終提案が行われました。フィールドワークやヒアリングの成果でしょうか、第一次提案とは較べものにならないほどに提案が具体的になっていました。

 CSリレーションズがトイレ診断士の技術を提供し、足立区はCSリレーションズの実績を外部に広報・宣伝するというWin-Winのかたちを提案した「Team-ドナルド」。トイレ改装は最低限に止め、修繕費用700~900万円をSNSにより調達することを提案した「Team-ポンジュース」。「Team-前田」は、地元の収穫祭などのイヴェントに着目した地域参加型の解決を、「RASH」は、 ボランティアによる「トレイ周辺+トイレ+竹ノ塚駅清掃」による解決を提案しました。「Complete green」は、高圧洗浄や光触媒塗装の業者にネーミングライツパートナーを依頼するという提案。「Team-M」は、日常の清掃費用500万円に着眼し、保護剤の塗布などで清掃経費を削減すること、さらに、足立区内の企業をネーミングライツパートナーとして活用することにより改善資金を捻出するというきわめて効果的な提案を行いました。

講評および審査

 増田社長からは、SNSによる資金集めや、ネーミングライツパートナーなどの「コラボ」の視点が評価されました。ただし、ネーミングライツパートナーをトイレや清掃関連企業に限定する必要はない。どんな業種の企業でもパートナーの可能性はあるが、問題は、パートナーになることのメリットをいかに説得的に提示できるかだとも。年間の清掃費用を調査し、その削減を検討した取組がとりわけ高く評価されました。

 プレゼンの終了後、学生の投票により「Team-ポンジュース」と「Team-M」が最高の得票となり、増田社長の総合評価により「Team-M」の提案が、第1位となりました。学生の投票用紙に記されたコメントには、「Team-ポンジュース」のSNSと「Team-M」の提案の「実現可能性」を絶賛する声が少なくありませんでした。第1位に輝いた「Team-M」へのコメントのいくつかを紹介しておきます。「数字の表記が一番明確だった」「落ち着いた雰囲気で、話し方がよかった」「スライドの工夫がよい」「チーム全体が団結して一体感が感じられた」「現実的に一番成功しそうなチームだった」「500万の清掃費用に注目したところはすごい!」「一番具体的な提案だったし、実行できそうな提案だった」等々。

 「Team-M」の提案はもちろんですが、それ以上に、多くの学生の的確な評価には驚くばかりです。他者を正確に評価し、それを率直に表明できていることにも(他者承認)、成長の証を感じました。

増田社長より

 最後に、増田社長から「Project A」を振り返っての講評と後半(Project B)に向けての激励のお言葉が語られました。「参加型の学び」「チームでの学び」「現場での学び」。課題に真剣に向き合うことにより、自ら考え動くことの楽しさ、そして達成感を実感できたのではないでしょうか。第一次提案後のチームワークにより、プレゼンのレベルは向上し、成長も感じられます。

 前半戦(Project A)を終えた今、「あの時(4月初旬に)自分は何のためにこの授業に参加しようとしたのか」。当初の目的を再確認し、その上で、社会で活躍している(できる)自分をイメージしながら、後半戦(Project B)に臨んでもらいたい。

 社会人としてする仕事は面白く楽しいものです。みなさんには、将来「日曜の夜になるとわくわくしてくる社会人になって欲しい」。そのためにも、大学の4年間が何のためにあるのかを考え、常に自分の「目的と目標」を点検しながら、楽しく、しかし本気で、何事にも取り組んで欲しいと思います。

 本授業のレポートを掲載した増田社長のブログは、次のような有難く、心強い言葉で結ばれていました。「これからのみんなの大学生活が価値あるものになることを願っていますし、応援してます。もし何か悩んだり、困ったことがあったら遠慮なく連絡してきてください。教え子には全力で関わりますので。」

謝辞

 増田社長には、ご多忙の折、3回にわたって授業にご参加いただき、熱心に学生をご指導いただきました。また、学生の質問や調査にも快くご協力いただきました。記して深く感謝の意を表します。

 埼玉中小企業家同友会の田ノ上氏と埼玉県労働産業部の石井悠史氏にも、毎回、有益なご助言と励ましのお言葉をかけていただきました。ありがとうございました。

 

 次回の授業からは後半セッション(Project B)。新たに編成される6つのチームが、県内企業から提示される経営課題に取り組むことになります。