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国際関係学科国際文化学科

「企業と雇用A」・第4セッション(旅行業界の魅力と将来性)報告

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 「企業と雇用A」第4セッションのテーマは「旅行業界の魅力と将来性」です。講師には、昨年度に引き続き、株式会社風カルチャークラブから嶋田京一氏(代表取締役社長)をお招きしました。

1時間目(12月8日)

 「旅行業とはどんな仕事?」「旅行業のように見えるが旅行業に該当しない仕事」「一口に旅行社といっても、総合旅行社から専門旅行社、現地オペレーター、ネット販売旅行社まで多種多様」「どんな専門旅行社があるか?」等々。わかりやすい「旅行業概論」に続いて「専門旅行社=風カルチャークラブ」が企画した国内外の「テーマ派生型の旅行商品」が紹介されました。100枚以上の写真が次々に投影されていく十数分。モンゴルからネパール、ブータン、モロッコ、そしてペルーへ、いつの間にか、教室にいることを忘れ、駆け足で世界中を旅行しているようなそんな気分になりました。

「旅行の仕事は自己表現、ツアーは舞台」

  このような旅行商品を、どんな人が、どのように企画しているのか? 学生たちがもっとも興味を惹かれるトピックです。テーマ、人、場所-着想のきっかけはさまざま。しかし「常に意識していることは『本物であること』と『本質に触れること』」。企画、宣伝告知、受付、添乗といった旅行業に共通する業務にふれたくだりでは「仕事は自己表現、ツアーは舞台」。ツアーは、旅行会社と顧客が協働で創造する藝術作品だとも。なかなか奥が深いのです。

旅行の仕事を目指す人へ

 旅行の仕事に向いている人の条件として、嶋田社長は3つの事柄を指摘しました。すなわち、第一は「人が好きであること(仕事は人とするもの)」、第二は「あらゆることに好奇心。何でも試す、確かめる(まずい料理も食べてから語れ)」、第三は「行動力があり、フットワークが軽いこと」。

 旅行業に進もうという人には、若いうちに、現場に出て多くの人と会い、たくさんの失敗をすることを薦めます。今からいろんな遊びや体験にチャレンジしてください。「面白いと思うことは、楽しいから好きになる。好きになればもっと知りたくなる。知ればさらに面白くなり、のめり込んでいく。それがいつしか得意分野となり、必ず自分の仕事に活かせる時がくるはずです」。とにかく、勇気をもって一歩前に踏み出さなければ、いつまでたっても「やりたいこと」は見つかりません!

旅行業の魅力と将来性

 旅行業の将来性と魅力。人間が物理的に動くことをやめない限り、そして未知の世界への憧れを失わない限り、旅行業がなくなることはない。旅行業の可能性は無限大。アイディア一つで何でも出来る。こんな楽しい仕事はない。人々の交流が増えれば、人々の理解が進み戦争はなくなる。旅行産業は平和産業であるとも。

 嶋田社長は、旅行業(旅行社)の役割をこんなふうに語って、講話を締め括りました。「人々の興味が細分化していく中、それを整理し価値付けをし、新しい市場を創造するのが旅行社の役割ではないのだろうか。人々の興味と好奇心の数だけ、旅行業の可能性はある」。

課題

 海外ツアーを扱っている会社に入社した途端に、会社の経営が危機的になりました。会社を立て直すために、この旅行社は、これからどのような方向を目指したらよいでしょうか? 

A、B、Cから一つの方向を選び、1から5の問題について検討してくだい。

  A 訪日外国人向け(インバウンド)にシフト

  B 国内旅行にシフト

  C 海外旅行を維持しながら、テコ入れをはかる

1. その理由は?(市場分析、現状認識、将来のビジョン、etc.)

2. 具体的にどんなサービス(商品)を売るのか?

3. 既存のサービスとの比較(すでにどんなサービスがある? 競合他社の商品は?)

4. 試算モデル(ひと月に100万円の利益を生むための試算)

5. 販売戦略(どうやって売るのか?)

2時間目(12月15日)

 12月15日には、嶋田社長から提示された「課題」に、5つのグループが取り組みました。前回セッションの「農業」と較べると、一見とっつきやすそうな課題ではありますが、いざ検討をはじめてみると、出てくるアイディアは陳腐で斬新さに欠けるものが多いようです。

 旅行社を存続させるための方針を決定し、その方針をささえるだけの魅力ある商品を開発しなければなりません。それだけではありません。一月100万円の利益という採算性の課題や、販売戦略も検討することになっています。

 

 これまでのすべてのセッションで最優秀賞をとっている学生がいます。4連覇なるか? 次回ないろいろな意味でスリリングな授業になりそうです。

3時間目(12月22日)

 G1の提案は「暇カンリアプリ」。旅行は「どこに行くか」ということ以上に「いつ誰と行くか」がポイントなのではないか! このような着想から、大学生をターゲットに「暇な時間」が合う仲間同士を繋げ、その仲間の趣向にあった旅行プランや旅行地を提案するアプリです。

 G2は「これまでの海外旅行路線を維持しながら、てこ入れを行う」方針を選択。提案プランは「お祭り観光プラン」「弾丸お祭りツアー」。世界のお祭りに特化した、顧客参加型の海外旅行プランで、学生や若年層が対象です。嶋田社長からは集客計画に難があるとの指摘がなされました。

 G3は「マニアとともに行く話題獲得ツアー」。特殊な資格や趣味をもつ人を講師とした、日帰り低コストツアーだと言います。「特殊な地名を巡るツアー」「登山ツアー」「ソムリエと行く勝沼ワイナリー巡り」が具体的なプランとして提示されました。採算性を突き詰める必要があるとの指摘が。

 G4の提案はずばり「死ぬまでにやりたいことツアー」。お金に余裕のある高齢者層をターゲットに、さまざまな希望を叶えるプランです。「絶叫系アトラクションツアー」などが提示されました。なかなか動こうとしない高齢男性をどうやって惹き付けるかが課題であると嶋田社長。

 G5は、海外の高齢の富裕層に限定した贅沢な国内旅行プランを提案しました。採算はとれるかもしれないが、継続的な顧客の獲得が課題になりそうです。

講評

 最優秀に選ばれたのはG4の「死ぬまでにやりたいことツアー」。「人の夢を叶える」という旅行業者が忘れてはいけない思いが感じられたと嶋田社長。

 準優秀はG3の「マニアとともに行く話題獲得ツアー」。ワイナリー巡りなどたいへん練られた提案ではあるが、3つの提案の関連性が希薄であったことが惜しまれると指摘されました。

 最後に、嶋田社長は、学生に向けて「好きなことを仕事にすること」の功罪について語られました。「旅行が好きだから旅行業界」という発想に関して「旅行会社に就職すれば旅行ができる」という前提はほとんど間違いである。旅行会社の仕事の大半は添乗以外の仕事だからである。しかし、旅行会社に旅行が好きな人が集まっているのは事実。旅行には行けないかもしれないけれど、旅行が好きな人といっしょに仕事をする楽しみはもちろんあり、それが生活や人生の励みになることは大いにあると思う。旅行業への就職を目指す学生には、こんな自覚と覚悟をもって頑張ってもらいたいと思います。

 嶋田社長のあたたかい笑顔と学生たちの拍手で、今年度最後のセッションは締め括られました。

 

 多忙なスケジュールを縫って、二年連続で本講座にご協力いただきました株式会社風カルチャークラブの嶋田京一社長に深く感謝する次第です。