Asia education

「旅行産業論(キャリア特殊講義)」の取り組みをレポートします。

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7月9日(木曜日)、60周年記念講堂において「旅行産業論」のツアープラニング発表会が行なわれました。3ヶ月にわたる「旅行産業論」の取り組みをレポートします。

 「旅行産業論」は、「企業と雇用」や「世界遺産講座」「インターンシップ・イン・アジアⅠ」と並ぶ「キャリア講座」(2015年度新カリキュラムで新設)の目玉授業の一つ。(株)風の旅行社で企画開発室長を務める水野恭一先生の指導の下、海外や地域の文化財、遺跡、食などを観光素材に、実際にツアーをプランニングし、旅行産業の意義と面白さを経験することを目指しています。

 初回授業(ガイダンス)には120名を超える学生が押し寄せ、早くも“超人気授業”の観を呈しましたが、PBL型授業(Project Based Learning)の運営上、履修者を35名に制限せざるを得ませんでした。(残念ながら抽選にもれてしまった学生には、ぜひ来年度に受講してもらいたいと思います)。

 旅行産業論の前半期では、旅行を産業化する具体的な事例を通じてツアープラニングの基礎を学習し、前半のまとめとして、グループごとに思い思いの海外ツアープランを発表しました。 

 

 後半の授業では、東松山市(比企地域)に焦点が当てられました。その多様な文化、歴史、食などの素材から観光素材として活用できるものを発掘し、インバウンドの視点に立ってツアーをプランニングすることが課題です。

 5月28日の授業では、東松山埋蔵文化財センターの宮島秀夫所長による「東松山市の文化財と歴史」と題する講演が行われました。「三角縁神獣鏡」(『魏志倭人伝』に記述のある「銅鏡」。いわゆる卑弥呼の鏡)が、高坂で発掘されたことをはじめて知った学生も少なくなかったはずです。

 6月18日には、宮島所長の案内で、講演で取り上げられた指定文化財のいくつかを、4時間かけて実際にバスで巡りました。土砂降りの雨の中、岩殿観音の大銀杏、雨に煙る門前町の佇まいやまっすぐにのびた山道を眺めた後、マイクロバスに乗り、玉太岡神社にある市指定天然記念物ムクノキを経て、光福寺の国指定重要文化財「光福寺宝篋印塔」と「板石塔婆」を視察しました。

若宮八幡古墳にて

 日光東照宮と同じ権現造である箭弓稲荷神社の重厚な社殿を観た後は、若宮八幡古墳に向いました。ここでは、全員が実際に古墳の中に入ることができました。「死後の世界」の次は、東松山市埋蔵文化財センターの展示室で「三角縁神獣鏡」をじっくりと観察しました。宮島所長には、指定文化財についての興味深い説明にとどまらず、視察する文化財の選定、視察先への事前連絡からバス駐車の手配まで、全面的にご協力いただきました。記して感謝の意を表します。

 有意義なフィールドワークから2週間余り、「感じてもらい、学んでもらい、調べてもらう」という水野先生の指導方針の下、グループごとにアイディアを出し合い、智恵を絞り、考えに考えて、次のようなツアープランを発表することができました。

 9日の発表会には、東松山市の商工観光課や観光協会、鳩山町の産業振興課、埼玉県の東松山農林振興センターからもご参集いただき、学生のツアープラニングについて、数々の貴重なご意見や激励の言葉を頂戴しました。「いずれのプランも季節感がよく出ている」「ツアープランをどこでどのように販売するのか」「文化財に注目した点は高く評価できるが、少し盛り込みすぎのきらいがあるのでは」「古墳や箭弓神社を取り上げたグループが多いが、三角縁神獣鏡その他の資源にも目を向けて欲しかった」「今後は、地域の食、さらには食を提供する地域の農業生産にも注目してもらいたい」等々。

 2016年度には、「旅行産業論」のクラスを増設するとともに、2015年度「旅行産業論」の既習者を対象とする「旅行産業論Ⅱ」、そして「観光資源開発論」が新たに開講される予定です。「世界遺産講座」や「インターンシップ・イン・アジア」のコンテンツもさらに充実します。旅行産業や観光業への就職を目指す学生には、こうした機会を積極的に活用してもらいたいと思います。

受講した学生たちの声

・グループ学習(PBL型授業)でワークショップなども経験し、チームビルディングやチームワークの面白さを感じることができた。

・旅行をプランニングすることの難しさを経験し、旅行会社の企業努力はすごいことだと思った。さすがにプロの指導は違うと思った。

・グループ活動では、それぞれが率直に意見を言うことがいかに大切かということを学んだ。

・もっと東松山市のことを知りたかったが、時間が少なかった。

・ツアープランニングには、予想もしていなかったほど綿密な計算が必要だった。

・文化財など、大学周辺にも観光資源がたくさんあることを再認識した。

・人をどれだけ楽しませることができるのか、旅行プラン作りは難しい。

・グループ学習(PBL型授業)でワークショップなども経験し、チームビルディングやチームワークの面白さを感じることができた。

・旅行をプランニングすることの難しさを経験し、旅行会社の企業努力はすごいことだと思った。さすがにプロの指導は違うと思った。

・グループ活動では、それぞれが率直に意見を言うことがいかに大切かということを学んだ。

・もっと東松山市のことを知りたかったが、時間が少なかった。

・ツアープランニングには、予想もしていなかったほど綿密な計算が必要だった。

・文化財など、大学周辺にも観光資源がたくさんあることを再認識した。

・人をどれだけ楽しませることができるのか、旅行プラン作りは難しい。

授業を担当して(水野先生より)

 民俗学者の赤坂憲雄さんは『旅学の時代のために-----〈特集に寄せて〉』という文章の中で「汝の足元を深く掘れ、そこに泉あり―――。(省略)・・・・・もはや、世界のどこにも秘境は存在しない。そうして旅学の時代が幕を開ける。・・・・・」 と語っています。
 もう情報として知らない世界は存在しない、ただ足を踏み入れていないだけである、という時代に私たちはいます。そこで「旅学」という学問が、私たちの前に再び浮上しようとしています。
 今回の授業は、海外、国内二つの旅行プランを企画するというテーマで始まりました。受講生が35名という大人数でグループ学習(PBL)をするという授業は、私にとって初めての経験でした。そして、その35名の学生にわずか四ヶ月しか接することが出来ないということは、それぞれの受講生の個性を知ることもかなり難しいことではないかと心配もしていました。
 しかし、海外プランニングのプレゼンテーション、そして埋蔵文化財センターの宮島秀夫所長による「東松山市の文化財と歴史」の講演とバス見学会を経過していくなかで、学生たちは、授業中の反応とは違う一面もそれぞれに見せてくれるようになりました。
 この授業では、旅行業としての煩瑣な業法や約款などの約束事は省き、実際に旅行商品を企画し創ることを実践してもらいました。そのような過程の中で、最後の国内企画のプレゼンテーションで発表されたものは、限られた時間の中での多少荒削りなプランニングでしたが、受講生の感じる力と調べる力は相当なものだと思います。私にとっても予想を超えた企画の発表に、驚きとともにとても印象に残りました。「旅を企画する」、いっけん難しいように思われますが、「感じて、学んで、調べる」を実践できれば、楽しいこと請け合いです。

 民俗学者の赤坂憲雄さんは『旅学の時代のために-----〈特集に寄せて〉』という文章の中で「汝の足元を深く掘れ、そこに泉あり―――。(省略)・・・・・もはや、世界のどこにも秘境は存在しない。そうして旅学の時代が幕を開ける。・・・・・」 と語っています。
 もう情報として知らない世界は存在しない、ただ足を踏み入れていないだけである、という時代に私たちはいます。そこで「旅学」という学問が、私たちの前に再び浮上しようとしています。
 今回の授業は、海外、国内二つの旅行プランを企画するというテーマで始まりました。受講生が35名という大人数でグループ学習(PBL)をするという授業は、私にとって初めての経験でした。そして、その35名の学生にわずか四ヶ月しか接することが出来ないということは、それぞれの受講生の個性を知ることもかなり難しいことではないかと心配もしていました。
 しかし、海外プランニングのプレゼンテーション、そして埋蔵文化財センターの宮島秀夫所長による「東松山市の文化財と歴史」の講演とバス見学会を経過していくなかで、学生たちは、授業中の反応とは違う一面もそれぞれに見せてくれるようになりました。
 この授業では、旅行業としての煩瑣な業法や約款などの約束事は省き、実際に旅行商品を企画し創ることを実践してもらいました。そのような過程の中で、最後の国内企画のプレゼンテーションで発表されたものは、限られた時間の中での多少荒削りなプランニングでしたが、受講生の感じる力と調べる力は相当なものだと思います。私にとっても予想を超えた企画の発表に、驚きとともにとても印象に残りました。「旅を企画する」、いっけん難しいように思われますが、「感じて、学んで、調べる」を実践できれば、楽しいこと請け合いです。