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全学プロジェクト事業・「問題解決学入門」報告(3)

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 「問題解決学入門」は、「初年次教育としての企業連携型PBL授業の展開」として2017年度全学プロジェクト事業に採択されています。前半をProject A、後半をProject Bとし、両プロジェクトともに、4~5名のグループで、企業の提示する「課題(ミッション)」の解決に取り組みます。企業への提案を行い、企業からのフィードバックを得ることが柱となります。

 

  第3回報告では、Project-Bの課題出しから第一次提案までのようすをレポートします。

Project B・課題出し(6月16日)

 「T-Differ」「T-Right」「T-ボスカトーレ」「T-肉まん」。6月9日にProject Bのために、新たに編成された4チームが、6月16日、新しいボスの下に集結しました。密かにProjectAのリベンジを狙っている学生も少なくないはずです。

 Mission(課題)をご提示いただくのは、株式会社KSPさいたま支社の石井利典支社長です。石井支社長は、水球競技で小中高校において全国制覇を果たした実力者。“何のために”と問い続けることが大事!元アスリートの体験に根ざした「努力」「成果」「自信」の方程式には説得力があります。

 「会社概要」や「社員と共に実現する経営理念」の説明に続き、具体的な業務内容をご説明いただきました。一口に警備と言っても、警備会社が請け負う警備業務は「常駐警備」「イベント警備」「ドアネット(身辺警護)」と多様です。

 「100点が当たり前。事故が起これば0点」。警備事業のきびしさをこう表現した石井支社長。社員のモチベーションを維持するのは「地域の安全を守っているのは警備会社である(安全を守るプロ集団)」という自負と、そして「明るく楽しく元気よく」を実践してくれる多くの女性社員の方々のささえだと強調しました。

課題(Mission)

 石井支社長は、警備会社が直面しているのは「黒字倒産の危機」だと言います。仕事はあるが、人手不足で事業を受注できず収益が低下するという問題です。

 こうした危機を乗り超えるにはどうすればよいのか? 次のような課題が提示されました。

 

 「みなさんは、KSP人事課のメンバーです。半年後、100名規模の人員が必要となる案件を受注しました。この案件をスムーズに実行するために、100名の採用を可能にする「採用戦略」を検討しなさい。」

 

 課題には3つの条件が付されています。(1)採用のための予算は1月20万円。(2)現状の所属人数は60名スタートとする。(3)単なる頭数ではなく、KSPとして信頼して顧客に提供できる人材の採用・育成の観点も考慮すること。さらに、検討・提案にあたっては、警備業務や警備業法をきちんと調べることがもとめられています。

質疑応答

 課題提示の後、数々の現実的な質問が出されました。「女性職員はどのような経緯で入社したのか?」「『課題』になっている『100人の携わる警備事業』とは何か?」「採用する100名の男女比はどう考えればよいか?」「時給はいくらで見積もるのが妥当か?」等々。

 「正社員雇用がきわめて困難な状況で、KSPが本当に悩んでいる課題です」。「ネットでは見つからない『斬新な提案』を期待します」。石井支社長は、真剣な表情で学生たちに語りかけていました。

 

 課題出しは、埼玉中小企業家同友会事務局の田ノ上哲美氏と中小企業家同友会全国協議会事務局の冨永択馬氏にご参観いただくことができました。

第一次提案に向けて(6月23日)

 課題出しの翌週の授業では、細田先生から、ProjectAでの失敗を振り返りながら、とりわけ「難問」の解決に取り組む「姿勢」や「意識」に関して、徹底的な指導がなされました。

 課題の解決を左右するのは「チームワーク力」。全員が課題に真剣に取り組めるような体制をどうつくるか、一人一人が、まずはじめに、真剣に考えなければならない問題だと思います。

 警備のプロ集団が考えに考えても妙案が出ない難問です。4つのチームには、まず「警備会社が人材不足に悩んでいるのはなぜか? なぜ警備事業で求人に苦戦しているのか?」。漠然とした一般的なイメージからいったん離れ、もし負の要因があればそれらを一つ一つ潰していく作業を通じてしか、石井支社長の期待する「斬新な提案」にはたどり着けないのではないでしょうか。険しい道程です。

第一次提案(6月30日)

 6月30日、2週間の取り組みを報告する第一次提案です。石井支社長の他、代表取締役の三角武一郎社長とドアネット事業部の岡庭将主任にもお越しいただきました。

 課題出しに引き続き、中小企業家同友会全国協議会事務局の冨永択馬氏にもご参観いただきました。

 

  「T-Differ」は、外国人留学生を対象とする採用戦略を提案。学内の留学生に行ったアンケート調査の結果では「警備への印象はそれほど悪くない」。しかし、保証人など就労のためにクリアしなければならない制度的課題がある。また、留学生向けの求人広告に「漫画」が有効であるといった指摘もありました。

 石井支社長からは「この戦略で、はたして100人を集めることができるのか?」といった疑義が提示されました。

 大学のアルバイト紹介制度の活用を提案したのは「T-Right」。石井支社長や岡庭主任からは「すでにやっていることで、斬新ではない!」「20万円の予算を有効に使って戦略を再検討せよ」「人集めであればイヴェント企画などのほうが有効ではないか?」といった指摘がなされました。

 「T-ボスカトーレ」も、「スムーズに大人数を採用する」方策として、大学生の「インカレ」(サークルなどの大学を超えた集合)を活用した警備アルバイト情宣を提案。しかし「すべてが予測」に基く提案で、課題は山積。

 「T-肉まん」の提案は「YGYプロジェクト」。YouTubeの「Y」。6秒ほどの「バンパー広告」を活用した警備事業の情宣。「G」は「ごほうび」=紹介による褒賞金制度。「Y」は「呼びかけ」で、特定の学生団体をターゲットに警備事業の情宣を行うというもの。予算の具体化や「特定の学生団体」の選定など、課題も少なくないようです。

 石井支社長の総評。「とにかく発想が狭すぎる!自分の周囲だけに目を向け、大学生の視点だけで考えていたのでは、斬新な発想には繋がらない」「『たぶん』『おそらく』は厳禁。最終提案では、しっかりとした数字の根拠のある提案を!」。

 

 最後に、三角社長から一言。「求人戦略を考えることは、新商品の開発と同じこと!」「人を雇うことの意義や大切さをふまえて、再検討をお願いしたい。最終提案を楽しみにしています」。

 「第一次提案に優劣はまったくない!4チームが横一線に並んでいます。今日から(!)の2週間でどこまで頑張れるかにかかっています」。第一次提案は、細田先生の激励の言葉で締め括られました。

 

  最終提案は7月14日。60周年記念図書館地下1階AVホールで実施されます。