起業に対する理解を深めるためには、実際に起業を経験した人との接点を持つことが重要です。起業家を大学に招き、体験談や困難、やりがいについて語っていただくことで、学生たちは起業の現実的な姿をより具体的に理解することができます。こうした直接的な出会いは、教科書や講義だけでは得られない気づきや刺激をもたらし、起業を将来の選択肢として前向きに捉える契機となります。したがって、学生が起業を身近に感じ、主体的に学べる教育環境を整備することが今後ますます求められます。
こうした背景のもと、関口ゼミでは2025年5月28日に「起業」に関する特別講義を実施しました。講師には、2024年12月18日に続いて風間崇志様(まなびしごとLAB代表、比企起業大学学長、一般社団法人ときがわ社中理事)をお招きしました。風間様は地方公務員として14年間勤務されたのち、2020年に起業し、現在は埼玉県を拠点に行政・地域企業・教育機関をつなぐ事業を展開されています。その豊富な実務経験に裏打ちされたお話は、学生にとって大変刺激的であり、起業という選択肢を具体的に考えるうえで大きな学びとなりました。
講義では、「起業とは何かを考えること」と「起業するうえで大切にしたい価値観を考えること」の二点が主な目的として掲げられました。学生たちは「埼玉県内で起業するとしたら?」という課題に取り組み、3年生と4年生の混成グループで仮想法人の提案を行いました。東松山市での公園活用イベント事業、深谷市のスクールバス代行事業、県内大学でのレンタカー事業など、地域の課題や資源を活かした多様なアイデアが発表されました。講師からは各提案に対して実践的な視点からのフィードバックがあり、学生たちは起業のプロセスと地域との関係性について深く考える機会を得ました。
さらに、講義の中では風間様が重視されている四つの価値観も紹介され、学生たちにとって今後の人生やキャリアを考えるうえでの重要な指針となりました。それは、①やりたいこと×できること×必要とされることの重なりを意識すること、②最後は自分で決めるという覚悟を持つこと、③身近な人を大切にすること、④プランドハプスタンス(計画された偶然)を楽しむこと、という四つの考え方です。これらのメッセージは、学生一人ひとりの経験や価値観と自然に結びつき、講義後も心に残る内容となりました。学生たちはこれらの価値観を通して、自分自身のあり方や将来について改めて考えるきっかけを得たようです。
このように、今回の特別講義は、学生たちが起業を含めた将来のキャリアについて主体的に考える貴重な学びの機会となりました。講義後のアンケートでは、ゼミ生の約8割が起業に対する理解が深まったと回答し、約6割が起業に興味を持つようになったと述べています。もともと起業に関心を持っていた学生にとってはもちろんのこと、これまで関心を持っていなかった学生にとっても、自らの進路や将来像を見つめ直す有意義な時間となりました。今後もこのような実践的な学びの場を継続的に提供していくことが、次世代の可能性を広げるうえで重要であると考えます。