2023年6月24日(土)に教職課程センター主催で「教員養成コロキアム2023」が板橋校舎多目的ホールにて開催されました。
”コロキアム”とは、ラテン語のコル(一緒に)とロキアム(話す)に語源を持つ単語で、「人と人との対話を大切にする学びの場」のことです。教職を目指す学生や教育関係者の教養を深めることを目的に、市民公開講座という形式で毎年実施され、教職課程センター発足の2016年から数えて今回で14回目となります。今年は大東文化大学創立100周年にあたり、本学の100周年記念イベントとして位置づけられました。
今回は認定NPO法人Dialogue for People副代表でフォトジャーナリストの安田菜津紀さんを講師にお招きし、第1部「境界線を乗り越えた平和な世界を目指して ~紛争地、被災地に生きる人々の声~」というテーマで講演をしていただきました。第2部は学生参加のパネルディスカッションを行いました。
オープニングは、高橋進学長から「本学の建学の精神は、新しい文化を創ること、多文化共生にあり、本日のテーマは重要だと考えます」という趣旨の挨拶がありました。
次に靜哲人教職課程センター所長から、コロキアムの趣旨説明と講師紹介がありました。
第1部 講演
講師紹介
安田菜津紀さん
1987年神奈川県生まれ。認定NPO法人 Dialogue for Pepole(ダイアローグフォーピープル/D4P)フォトジャーナリスト。同団体の副代表。16歳のとき、「国境なき子どもたち」友情のレポーターとしてカンボジアで貧困にさらされる子どもたちを取材。現在、東南アジア、中東、アフリカ、日本国内で難民や貧困、災害の取材を進める.東日本大震災以降は陸前高田市を中心に、被災地を記録し続けている。著書に『国境と遺書、兄への手紙 ルーツを巡る旅の先に』(2023年5月 ヘウレーカ)、他。上智大学卒。現在、TBSテレビ『サンデーモーニング』にコメンテーターとして出演中。
「境界線を乗り越えた平和な世界を目指して ~紛争地、被災地に生きる人々の声~」
安田さんは、2011年3月の東日本大震災の陸前高田市の写真と、同じ2011年に端を発したシリア内戦の写真を交互に見せながらお話を進められました。震災で被災された方々が行方不明になった家族をどのように探し続けたか、仮設住宅での生活はどのようであったか。未だに内戦が収まらないシリアでは、爆弾によって片足を失った少女が「私たちは何も悪いことはしていない。だからこんなことをしないで、と『大っきい人たち』に伝えて」と安田さんに語ったエピソードが紹介されました。
第2部 パネルディスカッション
パネリストは、安田菜津紀さん、学生3名、センターの小池由美子特任教授、ファシリテータは本センターの渡辺雅之特任教授が務めました。
学生からは、「次世代の意識を育てるために、子どもたちに何を伝えたら良いか」「沢山情報があふれている中で、どのように情報を選択していけば良いのか」「風化をさせないで継承するにはどうしたら良いか」などの質問が出され、安田さんが丁寧に答えてくださり、教職を学ぶ学生に大変参考になりました。パネルディスカッションでの議論が深まるにつれ、来場者の方々も大きく頷くなど、会場は共感の空気に包まれました。
クロージングは学生から謝辞を述べ、盛況のうちにイベントの幕が降りました。
当イベントの参加者は、本学の学生を中心に他大学の学生や教員、本学教職員、市民を含めて約100名。アンケートでは沢山の感想が寄せられましたが、その一部を紹介します。
アンケート一部紹介
- 今回、「被災地」「紛争地」「平和な世界」というテーマのコロキアム内容だと聞いて、どこか遠い話であり、私とは馴染みのない、ましてや教育とはあまり関係のないものだと思っていた。しかし、安田さんの話や経験を聞き、最後には「自分には何ができるのか」「教師となった後にどう子どもと触れ合っていくのか」ということを深く考え、自分と向き合うようになっていた。シリアにいる同年代、またはそれ以下の子どもたち、東日本大震災で被災した人たちの写真を通じて私は心の距離が縮まった気がした。短い時間で多くの出来事や考えが詰め込まれていたが、本当にお話を聞くことができて良かった。ありがとうございました。(本学学生)
- 「(紛争地は)最初から戦場ではない、日常は存在した」という言葉にはハッとさせられた。どこの国にも日常は存在し、自分の身にもいつかその日常が無くなってしまうかもしれないと思うと心が痛んだ。本日は貴重なお話を聞かせていただきありがとうございました。(本学学生)