2024年11月9日(土)午後、板橋校舎にて教職課程センター主催「2024年度秋季教員養成コロキアム」が開催されました。
教員養成コロキアムは、本学教職課程センター主催のイベントです。コロキアムとは、ラテン語の「コル」(一緒に)と「ロキアム」(話す)に語源を持つ単語で、「人と人との対話を大切にする学びの場」を意味します。
夏に教養系、秋に教職系の年2回開催しており、2017年に始まり、今回で通算17回目となります。今回も500名近い学生・教職員が参加し、教育現場の実際について情報交換や交流を行いました。
第1部 働いて分かった教職の実際
第1部では、本学の卒業生お二人にご登壇いただき、新任教員としての教員生活についてお話を伺いました。
1.齋藤璃七先生
最初にお話しいただいたのは、2022年度に本学中国文学科を卒業され、現在、定時制高校の書道科教員として2年目を迎えている齋藤璃七先生です。

齋藤先生は、今年度から担任を務めるようになり、責任が増える中で、不登校経験のある生徒への対応に追われる日々を過ごしています。例えば、欠席した生徒への連絡や遅刻生徒へのプリント配布など、細かな業務が多いそうです。また、書道を専門とする教員が一人であるため、卒業証書や大会の賞状作成といった業務が集中するとのこと。そうした仕事にやりがいを感じる一方で、体育祭で教員リレーを走った直後に賞状作成の仕事があり、手が震えて字が書けなかったといったエピソードも語られました。
授業では、生徒の成長を間近で見守ることができる点がやりがいだそうです。「先生のアドバイス通りに書いたら上手に書けた」といった生徒の言葉に励まされ、卒業後も連絡をくれる生徒がいることに喜びを感じているとのこと。また、自己肯定感が低く、すぐ諦めてしまう生徒が多いため、「ここはできてるよ!」とポジティブな声かけができるように、授業の目標を明確に提示したり、欠席の多い生徒には、校内で見かけた際に積極的に声をかけるよう心がけているそうです。
学生からは「齋藤先生が教員を続ける理由として挙げていた“やりがい”に共感しました。教育実習中、私も生徒が正直にできたこと・できなかったことを話してくれ、頼りにされていると感じたことが嬉しかったです」といった感想が寄せられました。
2.村上陽向先生
次にお話しいただいたのは、2022年度に歴史文化学科を卒業した後、中学校社会科の臨時任用教員として1年間勤務され、今年度から東京都の特別支援学校高等部で正規教員として働いている村上陽向先生です。

村上先生は、昨年度は中学校で社会科の授業に加え、女子テニス部の顧問や駅伝大会のサポートを務め、体育祭や文化祭の運営にも携わりました。教材研究や授業準備に追われながらも、生徒の成長を支えることのやりがいを感じていたそうです。
村上先生は、今年度からは特別支援学校で1クラス8人の生徒を担当しています。本学では特別支援の免許を取得することができないため、大学では学ばなかった新しい環境に適応することが求められています。
それでも、村上先生は新たな経験を前向きにとらえており、教員が多い環境で教材研究の時間を十分に取れることや、一人ひとりの将来を考えて、丁寧に指導できることに充実感を感じているそうです。
授業では、国語、数学、音楽など幅広い教科を担当する必要があるそうですが、生徒が理解しやすいようにスライドを活用したり、タイマーで残り時間を示すなどの工夫を凝らしています。こうした工夫が生徒の集中力を高めるのに効果的だと感じているとのことです。
学生からは「村上先生の授業での工夫は、普通学級でも参考になると思いました」といった意見が寄せられました。
3.クロストーク
お二人の報告後にはクロストークが行われました。お二人からは、次のような意見が挙げられました。「教員として実際に働いてみて、生徒が怪我をしないような練習メニューを組む必要性があるなど様々な配慮がなされていることを理解し、改めて自分を担当してくださった先生に感謝の気持ちを抱いた」「教師として失敗や同僚への失礼を避けたいと最初は思っていたが、最近は先輩に助けを求めることが大事だと感じるようになった」などです。
お二方の話に対して、学生から多くの感想が寄せられました。「今回登壇されたお二人は、定時制高校や特別支援学校といった、自分の教育実習先とは異なる環境で働いていらっしゃり、そのお話を聞いて、自分の将来の選択肢が広がりました」「お二人ともキラキラした眼差しで語っており、自分も教師としての将来を前向きに考えられるようになりました」という意見が印象的でした。
第2部 行って分かった教育実習の実際
第2部では、本学で取得可能な免許の多様性を反映し、中学国語・高校国語・中学保健体育・高校保健体育・中学社会・高校社会・外国語・書道の8つの分科会に分かれました。
各分科会では、教育実習を終えた4年生と、来年教育実習を控えた3年生が小グループを作り、教育実習の体験報告会を行いました。
以下に学生の声を紹介します。
教育実習は大変で辛いものだと思っていましたが、どの先輩も思っていたよりも全然辛くなく、楽しく終われたと振り返っていて、自分がしっかりと生徒に授業したり関わったりできるのかと不安が大きかったのですが、少し実習に対して明るく前向きに考えることができました。 |
分科会では、自分が高校生の時に来た教育実習生は必ず全員の生徒と一言は交わすようにしていた記憶があり、生徒との関わり方はどうしていたのかお聞きしました。ですが、思ったより時間が無かった、朝のホームルームくらいにしか関われなかったという声が多かったです。質問箱を教室の後ろに設置して、ホームルームで質問を数個答えるといったシステムを作った先輩もいらっしゃいました。生徒も好きな時間に書けて、自分についても知ってもらえる良い案だと思い、とても真似したいと思いました。 |
分科会では、先輩方から教育実習に関する有益な情報をいくつもいただくことができた。例えば、教育実習でどのような授業を行えばよいかについては、指導教諭の授業を8割踏襲した授業づくりをすれば、生徒を混乱させずに簡単に自分の色を出せることや、実際に自分で現地に赴いて見た資料、史跡などの自分の足で稼いだ教材を活用することで、よりよい授業づくりができることを教えていただいた。 |
分かったことは、担当教員や学校によってとにかく差があること。指導案は研究授業のみのところもあれば、全授業略案を作った方もいた。授業の持ちコマ数にも大きな差があると分かった。3週間で6回という先輩もいたが、20回以上の先輩もいた。帰宅時間は早いと18時だったが、最後の授業の前日に22時まで残ったという人もいた。 |
授業中の生徒への指示の話が特に印象的で、勉強になった。授業中の教師の指示が曖昧だと、ゆるい空間になってしまい、生徒の集中力や意欲が薄れる。生徒が「今って何する時間?」となってしまうような指示はだめで、何を何時までするのか、明確な指示が必要だと学んだ。 先輩の「生徒は思っているよりちゃんと先生を見てる」という言葉が印象に残った。 |
参加した4年生からも、肯定的な感想がたくさん寄せられました。
後輩たちが意欲的に質問してくれたので、こちらも熱心に応答することができた。少しでも私たちの経験が後輩たちの力になればいいなと思った。 |
3年生にアドバイスをするなかで、一年前は私も向こうの立場だったのか…と時の流れを実感しました。 |
他の教育実習生の話を聞くことは、4年生にとっても有益であり、自分と同じところ、違うところなどを聞きながら、実際にこれから教員を目指す上で、自身と違うミスや見習いたい点などを見つけることができた。 |
3・4年生のみなさん、本当にお疲れさまでした。
本学教職課程センターでは、今後もこうしたイベントを通して、教育の本質に迫るための活動を推進するとともに、学生・既卒生に対するキャリア支援を探求し、地域や本学卒業生との交流・連携を推進していきたいと思います。