2020年に文部科学省が新設した称号「社会教育士」。大東文化大学 教職課程センターでは、資格取得を目指す学生向けに7月11日(土)の午後「2026年度 社会教育士キャリアガイダンス」を開催しました。民間企業、行政、市民センターの現場から3名のゲストが登壇し、それぞれの実践と想いを語りました。
1.「川下りキャリア」の先に見えた景色(民間企業/自治体コンサルタント・津田さん)
津田さんはまず、キャリアには目標を定めて計画的に登る「山登り型」と、偶然の出会いに身を委ねる「川下り型」があると述べ、みなさんのキャリア形成はどちらに近いかという問いから始まりました。津田さん自身は「激流を下るような川下り型」。編集プロダクション、広告代理店、区役所を経て、現在は民間の自治体コンサルタントとして全国を飛び回っています。
転機となったのは、お子さんの不登校でした。引っ越し直後で頼れる人もおらず、思考停止に陥った津田さんを救ったのは、お子さんの同級生に誘われて訪れた地域の子ども食堂。大学生や高校生がカレーを作り、ボードゲームで一緒に遊ぶその場で、お子さんはわずか3か月で10人の友達ができたと言います。「行政が介入したわけではない。地域の人々の自然な繋がりが、子どもを暗闇から救ってくれた」。そして、社会教育士とは、誰かの人生が停滞したときに、新しい流れを一緒に見つける「水先案内人」のような存在だと語りました。
2.「みんなでワクワクする」が学びの起点(名古屋市教育委員会 生涯学習課・竹内さん)
元小学校教員の竹内さんは、「今の20歳の半分は107歳まで生きるとも言われている。学校教育だけでなく、家庭や地域で多く学んでいる。」と切り出しました。社会教育のキーワードは「みんなでワクワクすること」。主体的な学びと、互いに学び合う関係性が、その核心にあると言います。
現場ではその理念が細部に宿ります。講座の座席ひとつとっても、講義形式から円卓に変えるだけで参加者同士の学び合いが劇的に変わる。「巻き込む」ではなく「共感してもらう」、「担う」ではなく「作り手」と言い換える——学習者を主語にする姿勢が社会教育の根幹だと言います。名古屋土曜学習プログラムでは地域住民や大学生がサポーターとして参加し、かつて子どもとして体験した人が今度は講師として戻るという循環も生まれています。「人と人が学び合うことで繋がりが生まれ、それが地域づくりに発展していく」という、社会教育のダイナミズムを教えていただきました。
3.人との縁を紡ぐクリエイティブな仕事(藤沢市民センター・海老名さん)
金融機関での勤務、9年間の専業主婦を経て公民館の現場に立つ海老名さん。「人生の目標は、周りの人を笑顔にすること」と語る海老名さんが紹介したのは、2〜3歳児の保護者を対象とした家庭教育学級の実践でした。
この講座の最大の目的は知識の伝達ではなく、「仲間づくり」です。保育ボランティアが子どもを見守り、保護者は学びに集中する。毎週同じ曜日に顔を合わせるうちに、不安げだった参加者が仲間に変わっていきます。さらに卒業生が「今度は自分が保育ボランティアをやりたい」と支援する側に回ったり、後輩の講座運営に先輩ママとして関わったりする循環も生まれています。
「人が生きるのに必要なものは何か。お金も健康も大事。でも、人との繋がりがなかったら寂しい」。その繋がりをサポートし、何もなかったところから新しい関係性や学びを生み出すこと——それは「とてもクリエイティブな仕事です」と力強く語りました。
■参加学生たちの声
ガイダンス後のアンケートには、学生たちの率直な気づきが綴られていました。
「資格がキャリアにどのように繋がるかのイメージが湧かず困っていたため、今回の講義で資格とキャリアの繋がりを学ぶことができてとても助かった」(文学部教育学科・1年)
「私は教師になりたいと考えているが、社会教育にも興味があるため、教師という立場でも社会と子どもたちをつなげるような働きができるように考えていきたい」(文学部日本文学科・3年)
「坪田さんの山登りと川下りの例がとてもわかりやすく、川下りのキャリアスタイルに社会教育士の柔軟さを感じた。学校教育と社会教育の違いも詳しく知ることができ、参加してよかった」(文学部教育学科・2年)
「お役所や民間の垣根を越えて、社会の進歩や発展のために働いている人を知ることができた。社会の発展に役立つ人になりたいと確信を強めた」(文学部歴史文化学科・4年)
■社会教育士は一つの職業に限定されない資格
閉会にあたり阿部先生は、「社会教育士は一つの職業に限定される資格ではなく、それぞれの立場や仕事の中で、人をつなぎ、地域や学びを支える力として生かせる資格であることを実感できたのではないか。今日の話を一つの答えとしてではなく、『自分ならこの資格をどう生かせるか』と考えるきっかけにしてほしい」と学生に呼びかけました。
大東文化大学 教職課程センターでは、学生や社会人の皆様が多様なフィールドで活躍できるよう、引き続き充実したサポートを行ってまいります。
