2024年7月18日(木)、大学院法学研究科・法政学会共催の講演会、「震災に向き合うということ~311から13年の視点~」が開催されました。
武田真一先生(宮城教育大学特任教授、311メモリアルネットワーク代表、元河北新報社報道部長)をお招きし、防災と復興をテーマとした講話をしていただきました。
今年度は1月1日に起きた能登半島地震後の被災地の様子を撮った写真を含める形で、13年分の被災地を記録した写真のスライドショーをお見せいただき、被災地がどのように復興するか、あるいは何が課題として残るのかという点について問題提起がされました。 私たちは被災地の13年間の記録を通し、ハード面においてこのように実際に「復興」していくことができたという現実にある力について理解し、同時に、どれだけ時間とお金と人手をかけることができても取り戻せないものがあるということについて知ることができます。被災後すぐに予算を投じ、政策が議論されるにあたっても、あるいは十数年を経て復興ということが語られるにあたっても、見過ごされがちなソフト面の復興――心のケアや生活の再建――をどのように問題にしていくことができるのかということはこれからもたびたび「被災」を経験するであろう私たちの課題です。学生が抱いた感想や彼ら自身が持っていた被災地への印象や関心等についてもときに意見を求めながら、講話は進められました。
「避難したがらない高齢者にどのように声がけするか」という問題は学生にとって印象的であったのではないかと思います。武田先生は被災が人間の尊厳に関する問題なのだ、ということを強く訴えられました。被災による死が想像以上に過酷であること、「弔い」すら難しくすること、ゆえに、生と死の双方において「尊厳」を問題にしながら防災を論じなければならないということでした。この観点から、災害に直面したときにどのように行動すべきかということだけでなく、なぜ私たち(被災者および語り部だけではなく)は被災について話すのだろうかという視点からもお話しいただきました。復興ということが出来事をきちんと振り返って総括ができるということならばいまだ私たちは途上にあるのであり、実際に被災地を訪れる、あるいは被災地や被災の経験について語られることを聞くということを通して事実に触れ、私たちが話しあう中で、教訓に留まらない何かを理解するだろうし、そのことが風化を防ぐことにも繋がるということでした。その何かこそ「尊厳ある死」を迎えるための防災という武田先生が繰り返し説かれていることでもあります。
今年度は、能登半島地震に関して、東北被災地研修に参加された本学法学部政治学科の卒業生が現地ボランティアとして復興支援に取り組まれていたというエピソードも紹介されました。このことも含めて、被災地研修に参加する予定である学生にとって事前学習として大きな意味を持つ講演であったのではないでしょうか。また、その他の参加者にとっても、大小を問わず多くの災害の発生する日本に暮らすうえで、防災という問題について今一度問い直し、考えるための重要な視点を提示していただいたと思います。これからも講演会や科目の実践を通して防災・復興の問題に取り組んでいくことが重要であるだろうと思います。