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特別支援教育ゲスト講演会が開催されました。「私の歩んできた道〜世界に挑む、その土台となるもの〜」ゲスト:パラリンピック金メダリスト 木村敬一選手、デフリンピック金メダリスト 山田真樹選手

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【活動報告】見えない壁、聞こえない壁を越えて 〜パラアスリートたちが語る挑戦と多様性のリアル〜

去る7月3日、本学東松山キャンパスにて、パラリンピック金メダリストの木村敬一選手(パラ水泳)と、デフリンピック金メダリストの山田真樹選手(デフ陸上)をお招きし、特別講演会「私の歩んできた道〜世界に挑む、その土台となるもの〜」を開催しました。

 

本講演会は、中高教職課程「特別支援教育」の授業の一環として行われたものです。将来、教育現場で多様な背景を持つ子どもたちと向き合う学生にとって、障がいと向き合いながら世界のトップで活躍する両選手のお話は、共生社会のあり方を考える上で非常に貴重な機会となりました。

 

第1部:闇を泳ぎ続けた先に見えた光 - パラ水泳・木村敬一選手

橋本一郎先生(左)、木村敬一選手(右)

最初に登壇されたのは、パラ水泳の木村敬一選手です。生まれつき全盲の木村選手は、白杖や音声読み上げ機能付きのスマートフォン、点字ディスプレイといった日常のツールを実演しながら、ご自身の世界を学生たちに共有しました。

 

競技については、障がいの程度により公平性を保つ「クラス分け」や、壁の接近を知らせる「タッピング」など、パラ水泳独自のルールを解説。リオ大会で金メダルを逃した悔しさをバネに、練習拠点をアメリカへ移した経験にも言及し、自身の体質にあった戦い方を模索した厳しい日々を振り返りました。

 

そして話題は、21年間の競技人生の集大成となった東京2020パラリンピックへ。悲願の金メダルを獲得した瞬間は、「嬉しいというより、ほっとした」と当時の心境を吐露。メダルの色は見えなくとも、1位の表彰台で日本の国歌を聴いた時、初めて「世界で一番になれた」と心の底から実感したというエピソードが語られました。その後も苛酷な訓練を通じて泳法を改良し、2024年のパリ・パラリンピックでも再び金メダルを獲得。その飽くなき探究心は、目標達成への弛まぬ努力の重要性を示してくれました。

 

第2部:静寂の世界から、世界へ - デフ陸上・山田真樹選手

山田真樹選手

続いて登壇したのは、2017年のサムスンデフリンピック陸上金メダリストの山田真樹選手です。イギリス人の母と日本人の父を持つ山田選手は、家族内で英語、日本語、手話、口話、指文字が飛び交う複雑な環境で育ったご自身の生い立ちをユーモアたっぷりに語り、会場の心を一気に掴みました。

 

デフリンピックでは、ピストルの音の代わりに光でスタートを知らせるランプが使われるなど、聴覚障がいに対応した様々な合理的配慮がなされていることを紹介。また、紛争下にあるウクライナのライバル選手を支援した経験に触れ、「スポーツが国境を越えた友情と絆を深めてくれた」とその意義を力説しました。

 

講演の最後にはサプライズ発表が。なんと講演の2日前に第一子が誕生したことを明かし、会場はこの日一番の温かい祝福の拍手に包まれました。

まとめ:未来の教育者たちへのメッセージ

山田真樹選手(左)、木村敬一選手(中央)、橋本一郎先生(右)

「見えない選手」と「聞こえない選手」。二人のトップアスリートが同じ壇上に立つという、本学ならではの貴重な機会となりました。障がいを乗り越える強さだけでなく、それぞれの違いを認め、補い合い、時には自身の弱さもさらけ出す両選手の姿は、学生一人ひとりにとって、「多様性とは何か」「挑戦とは何か」を改めて考える、深く温かい学びの場となりました。

 

特に、身体の動きを言語化して伝えることの難しさや、複雑な環境下でアイデンティティを確立していく過程は、将来教員を目指す学生たちにとって、多様な子どもたち一人ひとりの特性を理解し、その可能性を最大限に引き出す支援とは何か、そのヒントと深い示唆を与えてくれるものでした。

 

講演会後には、両選手と学生たちとの記念撮影が行われました。参加者の中にはスポーツ科学を専攻する学生も多く、講演終了後も多くの学生が写真撮影やサインを求めて列をなし、ゲストのお二人と熱心に対話を続ける姿が印象的でした。

 

木村選手、山田選手、感動的なお話を誠にありがとうございました。最後になりましたが、本講演の企画者・手話通訳者として、学生たちに貴重な学びの機会を与えてくださった橋本一郎先生に、心より感謝申し上げます。