2021年12月23日(木)13時~15時、2021年度大東文化大学歴史文化学会秋季大会が行われた。
コロナ禍の状況に鑑み、今回もZoomでの開催となった。
宮瀧交二教授(歴史文化学会会長)による開会挨拶のあと、3コースから1名ずつ4年生が登壇し、提出を終えたばかりの卒業論文をもとに、研究成果を発表した。なお今年度の4年生は第1期生であり、学科として初めて卒業論文の作成に取り組んだ。試行錯誤・悪戦苦闘・七転八倒のすえ、卒論を完成した全員の健闘をたたえたい。
日本史コースの赤尾佳祐さんによる「視覚的史料による北陸巡幸の考察」は、明治11年北陸巡幸に焦点をあて、当時の新聞記事や『明治天皇紀』、「御巡幸日誌」といった文字史料と、錦絵などの視覚史料との比較対照を通して、巡幸をめぐる情報や明治天皇のイメージの伝播といった点で、六大巡幸における転換点となったという見解を打ち出した。
東西文化コースの齊藤稜さんによる「明朝における国家祭祀体系と官僚の関係性―弘治年間の事例を中心に―」は、明朝の三教一致政策を主題とし、『明実録』『明史』などの文献史料の読解を通して、儒教官僚による三教一致批判の背景に宦官との政治的対立があった一方で、儒教以外の神による霊験を認め、三教一致政策に必ずしも反対しない儒教官僚も存在したことを明らかにした。
観光歴史学コースの黒井敬太さんによる「川越市の新しい観光分野発掘―川越の銅像・石像を観光に―」は、川越市役所前にある太田道灌の銅像への注目を出発点として、このような屋外モニュメントを観光資源として活用するための問題点、および多様な媒体による発信といった可能性について指摘した。
以上3名による学生発表のあと、大野新特任教授による講演「水俣病事件を後世に伝える」が行われた。大野氏はこれまで社会科の授業で水俣病事件を取り上げ、2010年からは高校生を引率し水俣で3泊4日のフィールドワークを行ってきた。その大きなきっかけとなった1996年「水俣・東京展」最後の展示室に掲げられた死者の写真は、社会における関心を喚起する一方で、ときに事実とかけ離れた憶測をもって語られることにより、被写体となった故人の遺族に苦しみを与えるものでもあったという。大野氏は長年社会科教育で水俣病を扱ってきた経験から、事件が起こった時代背景や科学的知見にもとづく事実を伝えること、事実を弱者の立場から取り上げることの重要さや、現地における事件の風化と、ダークツーリズムを含む記憶伝達の方法の可能性と現状などについて述べた。たいへん臨場感のある、印象的なお話であった。
今回の大会では本学科の3年生を中心に90名以上の参加があり、質疑応答も活発に行われた。