News

国際関係学科国際文化学科

2018年度現地研修報告ーモロッコ

  • Facebookでシェア
  • LINEでシェア
  • Xでシェア

 8月17日から9月7日までの約三週間、モッロコで、アラビア語の現地研修を行いました。参加者は3年生3名、2年生4名、引率の吉村先生の計8名です。参加した学生全員が、モロッコはもとよりアラビア語圏へ行くのは初めてでしたが、それぞれに多くの学びを得ることができたたいへん素晴らしい研修になりました。

入国

 現地時間の8月18日、モロッコ国内のカサブランカ空港に到着しました。飛行機での移動時間が約20時間と非常に長く少し疲れましたが、モロッコに到着すると、日本とは大きく異なる雰囲気に、徐々に気持ちが高まっていったのを覚えています。

ラバト

 カサブランカ空港から移動して、最初の二週間はラバト市内にあるQalam Wa Lawhという語学学校でアラビア語や現地文化の講義を受けました。語学学校には宿泊設備があり、そこに入寮し生活をしました。

 授業は午前中に約4時間、午後約2時間半で、休憩を交えながらも集中的に行われました。授業中、ネイティヴの先生が話すのは基本的にはアラビア語のみでしたが、学生が理解できない部分は、時々英語を交えながら丁寧に理解できるまで教えてくれました。

 イスラーム圏にはイスラーム暦で12月10日からعيد الأضحى(イード・アル=アドハー)日本語で犠牲祭というイベントがあります。犠牲祭は名前の通り、各家庭で牛や羊を神への捧げものとして殺し、その肉を家族や親戚と食べたり、貧しい人に恵んだりします。偶然、今年の犠牲祭が現地研修の時期と重なったことで、私たちもイスラームの文化に間近で触れることができました。モロッコではイード中は学校もレストランもほとんどが休みになります。そのため、語学学校も授業が無く、私たちは現地の方の家を訪問して、伝統的な犠牲祭の風景を見せてもらいました。

 ついさっきまで元気に鳴いていた羊が、あっという間に解体され食肉になっていく様子は少し異様でした。日本人は牛も鳥も豚も食べますが、自分たちで殺して食べる人はほとんどいません。しかし、イスラームの国々ではこうした行事を行うことで神への感謝と共に、食に対しても感謝をしているのだということを学びました。日本ではなかなか味わうことのできない貴重な体験でした。

 卒業セレモニーは、語学学校の他のコースで学んでいる学生達と合同で行われました。語学学校には、世界各国から留学生が来ていて、留学期間もさまざまでした。二週間という短い期間でしたが、他国の学生との交流もすることができて、とても有意義でした。

タンジェ シェフシャウエン

 吉村先生が語学学校のスタッフの方に提案し、イード期間の休みと土日休みを利用して、急遽、タンジェとシャフシャウエンの視察を2泊3日で行うことになりました。

 タンジェはモロッコの北端に位置し、西側は太平洋、北側は地中海に面した都市です。ガイドに案内してもらい、かつて要塞だったカスバと呼ばれる場所を視察しました。タンジェの港からは、フェリーに乗って約1時間でスペインに行くことができるそうです。

 街はとても西洋的でヨーロッパに来たかのような感じでしたが、所々にイスラーム的要素も混ざり、多文化の融合を街並みから感じることができました。

 シャフシャウエンは、タンジェからバスで約5時間東へ移動したところにあります。青い街と呼ばれ、最近、日本でも注目されている観光地です。実際に行ってみると、想像していたよりも青く美しく、みんな感動していました。しかし、ラバトとは比べものにならない程の暑さに参っていまいました。

 かつて、アマジク(ベルベル)と呼ばれるモロッコの伝統民族が、暑さを視覚的に和らげるために、民家や商店の壁を統一して青くしたことがシャウエンの青い街と呼ばれる所以だそうです。みんなで街を歩き回りましたが、同じような建物が並んでいて、何度も道に迷ってしまいました。

フェズ

 語学学校を卒業して、電車で約4時間かけて、フェズという街へ移動しました。フェズは、かつて、イドリース朝など多くの王朝が首都に定めていたところです。現在では、革製品などが有名な観光都市として存在しています。

  フェズの歴史はとても深く、カラウィーン・モスクと呼ばれる、世界最古の大学をはじめとする伝統的で歴史的な建物を、ガイドに案内してもらい見学しました。しかし、自由行動の際には、シャウエン以上に複雑な街並みに、同じ場所に二回行くことはできませんでした。

 現地には、道案内をすると言って自分の知り合いや家族の店へ連れて行き、お金を請求してくる、日本で言う客引きのような人がたくさんいました。注意はされていましたが、捕まってしまい、どこだか分からないお店に連れて行かれて戻れなくなるという苦い経験をした学生もいたようです。また、観光地なのでぼったくりが多く、買い物をするにも値引きに苦労し、大変疲れました。

 フェズは、今回の現地研修で訪れた都市の中でも最もアフリカ大陸、モロッコを感じる街でした。一つ一つの建物に現地ならではの工夫が施され、人びとの生活も日本とは異なる点が多々あり、大変興味深かったです。

カザブランカ

 フェズの旅も終わり、最終地点カサブランカへと向かいました。カサブランカはモロッコ随一の経済都市です。また、観光地でもあるため、外国人が多い印象を受けました。

 カサブランカでは、ハッサン2世モスクを見学しました。モロッコではモスクは基本的にはムスリムしか入ることができないのですが、このモスクは唯一、異教徒でも入ることができます。大西洋を背景に、高さ約200メートルの巨大なミナレットがそびえたっており、その壮大さに圧倒されました。中へ入ると、広大な空間に神秘的な雰囲気が漂っており、言葉にできないパワーを感じました。建物のいたるところに、アラベスクの模様が施されており、とても綺麗でした。

出国

 入国の時と同じカサブランカ空港から出国をしました。食べ物によるものか、疲れからか、お腹を壊してしまったり、気分が悪くなってしまう人は出ましたが、大きく体調を壊したり、事故も起こすことなく無事にモロッコを後にすることができました。

最後に

 今回の現地研修で、大きく語学力が伸びたり、イスラーム文化を深く知ることができた実感は、正直ありません。しかし、モロッコの人や、語学学校のたくさんの国の人と拙いアラビア語や英語で話そうと努力をしたり、多くの現地の方のやさしさに触れることで、今後の学生生活での目標を見つけるきっかけを得ることができました。このきっかけは、日本で、ただ机に向かって勉強をしているだけでは、決して得ることのできないものだと思います。

 語学学校には、自分と同じ年で5か国語を話すことができる人もいました。その人に夢は何なのかと聞くと、世界中の本を言語の壁を感じずに読めるようになりたいと言っていました。一方で、夢を聞かれると、自分の夢をアラビア語でも英語でも、うまく説明することができませんでした。もし、またその人と話す機会があるなら、夢を堂々とアラビア語で説明したいと思います。

 わたしたちが多くの学びを得ることができたのも、存分に楽しむことができたのも、多くの人の助けがあってこそでした。現地で、学生全員が無事でいられるよう常に配慮してくださった先生や、見送ってくれた親への感謝を忘れず、それに応えるためにも、今後の生活で現地研修を本当の意味で有意義なものにしていきたいと思います。