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「企業と雇用A」・特別講演Ⅱ「中小企業の魅力」報告

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 「企業と雇用A」の締め括りは「特別講演Ⅱ」7月22日(金)15時より、東松山図書館地下1階AVホールにおいて。「中小企業の魅力」と題して、埼玉中小企業家同友会の久賀きよ江代表理事にご講演いただきました。久賀代表理事は(株)メガネマーケット代表取締役。

 中小企業家同友会とは? 全国47都道府県に4万5000人の会員を擁する中小企業の経営者団体。「経営とは日々是勉強なり」を標榜し「良い会社・良い経営者・良い環境」の実現を目指す「社長の学校」です。基本理念は「人を生かす経営」「社員と共に育つ『共育』の実践」等。

中小企業は人材の宝庫

 「なぜ大企業への就職を希望するのか。就職後の仕事の場面、自分の働く姿をどんなふうにイメージしているのか?」。久賀代表は、企業の99.5%が中小企業という日本社会において、それにもかかわらず根強い「大企業神話」への疑問を提起します。大企業の「幹」となって活躍できる人はきわめて少数。ほとんどが「枝葉」であり、必要がなくなれば振り落とされる運命。

 中小企業はといえば「幹」は細いかもしれないけれど、風当たりが少なく、基礎体力と持久力がある。若いうちから「幹」として活躍できるから、入社後の働きについて絵が描ける。

 「採用の時点でできる人、優秀な人材を!」というのは、大企業の論理。仕事を通して個人を「人材」に育て上げることが、中小企業の大きな使命の一つ。「中小企業は人材の宝庫です」と、久賀代表。

潜在能力を引き出し、人を育てる

 社会で働くということはどういうことでしょうか? 久賀代表は「自分にできることは何か、誰のためにどのように役立つことができるか、を考えて行動することではないでしょうか」と語りかけます。頼まれたからやる、マニュアルに忠実に行動するのではなく、自分から仕事を見つけて、機転を利かせて動くということ。大量生産・大量消費の高度成長が終焉し、これからの経営は、どれだけ深く顧客の立場に立って、気遣い、智恵を絞ることができるかにかかっています。

 久賀代表は、ご自身の中小企業での販売部門の経験から独立(創業)までを振り返り、中小企業の魅力をこんなふうに表現します。「会社の中のほとんどの仕事ができるようになること」。中小企業の武器は大きさではなく、社員が行う仕事の多様性。多様化する仕事にどのような学びを取り入れられるかが大事。20数年の人生の中で「自分で得意だと自覚していること」は、実は、自己の能力のほんの一部にすぎない。人は自分が得意だと感じていないことには挑戦しないが、人を育てることは、その人が気づいていない潜在能力を引き出し、活かすことだと言います。ベンチャー企業の85%が5年で廃業に追い込まれる厳しい時代に、メガネマーケットが生き残ってきた理由を、久賀代表は「社員がそれぞれの能力に応じた役割をまっとうできる、輝ける職場があるから」と断言します。

 「Jobway 2017」(中小企業家同友会共同求人サイト)に掲載された「メガネマーケット」の新卒者へのメッセージを引用しておきます。「中小企業の魅力」が余すところなく披瀝されているように感じます。

 「『この会社はいい会社』と言っていただけるのは社長を見てではなく社員です。我が社は、誰のためにどのように役に立てるか、スタッフ一人ひとりが常に考えて行動しています。"人に優しく温かく"をモットーに心ある社員のお陰で地域の方々に信頼を得ています。メガネ、コンタクト、補聴器を通して目と耳と健康のお役立ちを考え予防、保護に力を注いでいます。社員が信頼され誇りをもって働く、その結果、企業の信頼に結びつき企業の発展があります。皆さんとそんな人材の最強集団を目指しましょう!」http://www.jobway.jp/co/1511941/index.html

就職に失敗しないために

  正社員になることの社会的な意義や、社会の中で人として信頼されることの意味を強調された後に、久賀代表には、就職に失敗しないための、後悔しない企業選びのためのポイントをご教示いただきました。社風のよい会社を!。どのように見極めればよいか? HPを比較して「大きさよりは、温かさを感じられるような企業を」、そして、会社の理念にも「社風」は確実に反映されるので、よく目を配ってください。とにかく、若いときに無理をしてください。20代で無理をすれば40代は明るいはずです。特別講演は、説得力に富んだ力強い言葉で締め括られました。

就職活動の頃、入社後のこと(島田恵子氏)

 久賀代表の講話に先立って、(株)メガネマーケット人事担当の島田恵子氏が、就職活動に向けた心構えを語ってくれました。

 

 就職活動というと、どうしても企業選びを優先しがち。しかも、大企業や有名企業ばかりが目につく。しかし、就職先を考える前に、まずは「就職した後の自分」に思いをはせてみてください。自分は、どんな社会人になりたいのか、どんな働き方をしたいのか、自分にはどんな働き方が合っているかを自問自答してみることです。

 また、得意なこと、自分で向いていると感じていることが「適性」とはかぎりません。自分を変えるために、あえて苦手な分野に挑戦するという仕事探しがあってもよいのではないでしょうかとも。

 島田氏も、久賀代表と同様に、企業選びに際しては「社風を意識する」ことが大事だと言います。社員の潜在能力を刺激し、成長させられる環境があるのかどうか。入社13年目の島田氏は、新入社員教育に携わって3年目。褒めたり叱ったりして指導した新入社員が、数年後に、仕事ができるようになっている姿を見ると、自分のことのように嬉しく感じるそうです。そんなとき、人前に出ると緊張して頭が真っ白になっていた自分が、人事という仕事を通じて、思ってもみなかった力を発揮していることに気づくのだといいます。さまざまな試練や経験により、自分を成長させてくれた会社への感謝を語ってくれました。

 最後に、就職活動を控えた学生に向けて一言。言いたいことを文章にして憶えておくと、一部分を忘れると全部を忘れてしまう。言いたいことの柱をきちんと整理して頭に残すこと。記憶のためにも、失敗を繰りかえさないためにも、メモを取る習慣をつけること。社会人として学ばなければならないことは、学生時代よりもはるかに多い(!)のだから。

 講話は、温かい激励の言葉で結ばれました。「就職試験の結果に一喜一憂しない。たまたま縁がなかっただけのことです。社会人になってからが正念場だということを忘れないでください。」

 

学生の感想から

 学生の感想にも、今回の特別講演を聴き、中小企業への関心が深まったという声や、就職活動に前向きになれたという声も少なくありません。その一端を紹介しておきます。

   ◆これまで大企業しか視野に入れていなかったが、中小企業では、自分のポテンシャルを輝かすことができるのではないかと感じた。

   ◆仕事には、稼ぐという面と、自分を成長させる面があることが実感としてわかりました。

   ◆社風と将来性を会社選びの鍵にしていきたい。

   ◆自分に合う仕事の見つけ方が講演を聴いてわかってきたような気がする。

◆潜在能力を引き出す中小企業というお話を聴き、今自分が漠然とやりたいと考えている仕事は、自分に向いている仕事とは違うのかもしれないと感じました。大企業ではどんなに挑戦しても所詮は枝葉で終わるのもかもしれません。

   ◆人一倍努力することは簡単なことではないが、小さなことでもいいから気づいたら動くことを心がけたい。

   ◆20代でサボっていると30代、40代で苦労する。とてもこたえました。

◆自分の成長のためには、自分の才能を見抜いて伸ばしてくれる人の存在が必要なのだとわかった。

   ◆中小企業が使命とする「育てる力」の話を聴いて、就職への不安が和らいだような気がする。

   ◆久賀代表の話を聴いて、就職活動に対する考え方を根本から見直そうと思った。

   ◆名前だけで大企業に魅力を感じていて、自分がずっとやっていきたいことをそっちのけにしていた気がします。

   ◆一人の人間の人生を大事にしてくれる中小企業に魅力を感じました。

   ◆中小企業についてもっと調べて就職活動に挑みたい。

   ◆嫌いな仕事は遠ざけたいという気持ちがありましたが、今後は潜在能力を引き出すためにも、どんな仕事にも挑戦することを心がけていきたいと思いました。

   ◆自分の能力を活かしたいなら中小企業を選んだほうがよいと思いました。

   ◆企業の大きさや知名度ばかりに気をとられていた自分が情けなくなった。

◆企業といっしょに自分も成長できるような会社で働きたいと思います。

◆一人一人の向上心や工夫が形になる中小企業の魅力がわかりました。

◆20歳の尺度で自分に向いている仕事を決めるなという話はとても心に残った。

◆学歴フィルター等で就職活動に不安をもっていたが、今回の講演を聴いて、少し自信をもつことができた。

まとめ

 もはや『大企業』や『一流企業』が、生活や人生の安定を保証する時代は終わりを告げ、社員数や営業利益の規模の他には何も意味しないアナクロな語彙に成り下がっている時代です。グローバル経済の必然性を叫びながら、業績悪化を理由に、1000人規模の大リストラを躊躇なくやってのける一握りの「大企業」の経営陣がいます。その一方で、大企業の五百倍の数の中小企業の経営者が、日夜「人を生かす経営」に智恵を絞っています。社員の潜在能力を引き出し「人材」に育て上げる環境。“人に優しく温かく”がモットーとされるような社風。実に魅力的ではありませんか。

 “よい会社”の条件とは何でしょうか? 生涯をかけるに値する企業の条件とは何か?

 人として信頼され、誇りをもって働けるような会社とは? 歯車のような存在ではなく、社員一人一人の工夫や努力が承認され、社員の成長が会社の成長となるような「共育」型の会社とは? 

 就職は、人生のスタートライン。就職で失敗しないためにも、学生諸君には、就職活動をはじめる前に、じっくりと真剣に考えてもらいたいと思います。

 

謝辞

 自社経営の傍ら、埼玉中小企業家同友会の代表理事としてもご多忙な中、久賀きよ江代表理事には、国際関係学部の「企業と雇用A」の趣旨をご理解いただき、締め括りの特別講演にふさわしい有意義な講話をしていただくことができました。記して深く感謝の意を表します。

 また、本学OGとして後輩たちの就職のために温かいアドバイスをしていただいた(株)メガネマーケットの島田恵子様、特別講演のために資料をご提供いただいた埼玉中小企業家同友会事務局の田ノ上哲美様にもお礼を申し上げます。