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篠田隆教授の「最終講義」が行われました。

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 1月19日午後1時15分より、東松山キャンパス7号館314教室において、篠田隆教授の最終講義、「カルチャーショックからの学び、足の裏で考える-体験的アジア理解のすすめ-」が行われました。授業履修者や卒業生、教職員など総勢80名近く(オンライン配信参加者も含む)の方々にご参集いただきました。

「カルチャーショック」

 本講義の最初は、篠田先生の海外体験から始まりました。海外に行くことによって、文化の違い、人々の生き方の違い、価値観の違い、などに対して抵抗感を持ち、精神的あるいは肉体的な衝撃を受けることが大事だと強調されました。カルチャーショックを受けることによって自分や自国文化の客観視、自分と違う価値観の存在という価値観の多様性というものも理解できます。これによって、鏡を見るように自分の顔というものがよくわかるようになります。

 篠田先生は学生時代に20万円を持って一年間バックパッカーでインドに旅行されました。ガンディーの運動がどうなっているかということに興味を持たれて、一年間インドの各地を旅行されました。これによって受けたカルチャーショック、とくにトイレで初めて水を使って洗浄したことや、寒い冬の時にバケツでお風呂に入ったこと、などがユーモアを交えて紹介されました。その他、インド人から聞かれた宗教やカーストについて、自分が何も答えられないということに大きなショックを受けられました。

 今後グローバル化が進む日本では、訪日外国人が増え、日本企業も外国に進出して行きます、外国との接触機会が増加する中で、多くの学生にカルチャーショックを体験して欲しい、そして海外との摩擦を楽しんでほしいという熱いメッセージを残されました。

「足の裏で考える」

 続いて、篠田先生の研究遍歴のお話しに移られました。篠田先生は本学部が設立されて以来の古参の先生です。ご自分が研究を進める上で当時本学部に来られた多くの重鎮、大内先生、大野先生、小島先生から多くの気づきと影響を受けた話が紹介されました。そしてインドで、たくさんの調査を行う中で、篠田先生が気づかれたのは、インド社会を語る上で牛とカーストがとても重要だということだそうです。牛はインドの経済、社会、宗教、政治に関わっています。経済が発展するにつれて、牛自体の役割も変わってきたこと、土着の品種から外国産との交配種に代わってきた結果、社会では農民と牧畜民の間の相互依存関係が対立までつながっているという状況になってきたといいます。

 二つ目のカーストについて、その機能と制度の変化についてお話されました。カーストは結婚や伝統的職業、そして上下関係などを支える機能を持っています。村の中で伝統的職業はそれぞれのカーストが担うことによって相互に分業し、お互いに仕事を分け合う形になっていました。ところが市場状況の変化によって、これらの伝統的な仕事が消えていっています。残ってきている仕事は公衆衛生関連、清掃、洗濯、葬祭のようなものだけだそうです(これらを担当するのがダリトと呼ばれるカースト)。しかしこのダリトも伝統的職業からの離脱の動きがあります。一つは教育を受けること、もう一つは都市へ移動すること、などです。これらによって別の職業に就けるチャンスが広がってきています。結論として、牛でインド社会が分かること、カーストは今後も強く残っていくだろうという見通しが示されました。

 講義を締めくくるにあたって、村の人に支えられたというお話がありました。研究を進める上で調査に協力してくれた村人に感謝を示すとともに、度量衡の調査を行ったときに、村の中で使われている長さの単位がわかっていなかったこと、これらは、村人の支えと自分は無知であるいう戒めとしてこの写真があると、振り返られていました。 

 講義終了後、国際関係学部篠田ゼミの卒業生で本学法学部事務室勤務の藤原さんより、篠田先生に花束が贈呈されました。

篠田先生の近年の研究成果