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レポートアジア・ヨーロッパ圏

【インドネシア】ガジャマダ大学

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こんにちは。国際関係学部国際関係学科4年の秋山英里香です。私は現在インドネシアのガジャマダ大学へ奨学金留学を行っています。今回で最後の留学レポートとなり、この留学生活を振り返りたいと思います。

 

 

【授業のレベルについて】
私の所属する文化科学部は、文学をはじめとした人文科学を幅広く学べる学部であり、授業は基本的にインドネシア語で行われます。現地の学生と同じ教室で学ぶため、語学力を実践的に高めたい方や、現地社会に深く入り込みたい方には特におすすめです。言語を「学ぶ」のではなく「使う」環境に身を置けるのが、この学部の大きな魅力の一つです。
私はその中で観光学科に所属し、インドネシア国内の観光地の課題や政策に加えて、世界各地の観光の在り方や持続可能な観光についても学ぶことができました。例えば、マスツーリズムによる環境や地域文化への影響、観光と経済開発のバランスなど、日本の観光と比較しながら学びを深めることができました。国際的な視点を持って観光を考えることができたのは、非常に貴重な経験でした。
学科の雰囲気もとても明るく、学生たちはみな積極的で、学びに対して意欲的です。グループワークやディスカッションの中で、相手の意見を尊重しつつ自分の考えを伝える姿勢に刺激を受け、自分も積極的に参加するようになりました。また、一つの学科に所属しながらも他学科の授業を履修できる柔軟な制度があり、幅広い分野に興味を持つ学生には非常に魅力的な環境です。多様なバックグラウンドを持つ学生と交流する中で、異なる視点を学ぶこともできました。
授業の評価方法も多様で、記述試験、レポート提出、プレゼンテーションなどがありました。中でも最も大変だったのはプレゼンテーションです。現地の学生とのグループワークの中で、専門的な内容をインドネシア語で議論・発表するのは想像以上に難しく、最初はなかなか意見を言い出せずにいました。しかし、留学生としての異なる視点を強みとして捉え、積極的に意見を伝えることを意識するようになってからは、徐々に自信を持って発言できるようになりました。この経験を通じて、「間違いを恐れずに伝える姿勢」の大切さを学びました。
留学生活の初めは、先生の話している内容がほとんど聞き取れず、授業についていけないのではないかという不安と焦りに襲われました。毎日が手探りの中での生活で、正直、絶望的に感じた時期もありました。しかし、先生方も学生たちもとても親切で、困ったことがあれば気軽に相談できる雰囲気があり、次第に自分の居場所を感じられるようになりました。
この経験から、「分からないことを分からないままにしないこと」「恥をかくことを恐れずに質問や発言をすること」が、語学力の向上だけでなく人間関係の構築にもつながると実感しました。積極的に話しかけ、関わることで、自然と語学力も伸び、自信にもつながりました。
大変なことも多い留学生活でしたが、それ以上に得られる学びと成長がありました。知識だけでなく、異文化の中で主体的に行動する力、困難に向き合う力、そして「伝えようとする意志」の大切さを身をもって体感することができた、かけがえのない経験でした。

 

 

【生活について】
インドネシアでの生活は、日本にいた頃に比べ、忙しすぎず穏やかに過ごせていますが、その中にも日本とは異なる新鮮な感覚や発見がたくさんあります。日本では、1ヶ月以上前からスケジュールを立てて予定通りに動くことが多く、効率や時間管理を重視する傾向がありました。しかし、インドネシアではその日のうちに連絡を取り合い、すぐに会うということが日常的で、予定に縛られすぎない柔軟なスタイルが根付いています。最初はこの違いに少し戸惑いましたが、次第にその場の流れや偶然の出会いを楽しめるようになり、今ではこのリズムにも心地よさを感じています。
また、人とのつながり方にも大きな違いがあります。友達と集まっていると、その友達がさらに他の友達を連れてきて、気づけば10人以上の大所帯になることも珍しくありません。こうした自然な輪の広がりがとても楽しく、人との出会いが重なっていくごとに、自分の世界もどんどん広がっていく感覚があります。人と関わることに対してオープンな雰囲気があり、初対面でも温かく迎えてくれるため、安心してコミュニケーションをとることができています。
移動の面でもとても便利で、特にバイクタクシーが発達していることに驚きました。アプリを使って呼ぶとすぐに来てくれて、渋滞の中でもスムーズに目的地にたどり着けるため、日常生活において欠かせない存在です。交通手段が自由で迅速であることは、日々の行動範囲を広げ、思い立ったときにすぐ出かけられるという点でとても魅力的だと感じています。
また、インドネシアではカフェ文化が非常に盛んで、朝から深夜まで営業しているカフェが多く、どの時間帯に行っても人でにぎわっています。特に学生や若者にとっては、勉強や課題、友人との語らいの場として欠かせない場所になっていて、「街が眠らない」という印象を持ちました。私も現地の友達とよくカフェに集まり、夜遅くまで話し込んだり、一緒に課題に取り組んだりしています。そんな時間の中で自然と友情が深まり、互いに支え合いながら過ごせる環境にも感謝しています。
このように、インドネシアでの生活を通じて、時間の使い方や人との関係性、生活スタイルの多様性を実感することができ、自分自身の価値観にも良い変化が生まれていると感じています

 

 

【人との交流】
インドネシアには日本語学習者が多く、私も現地で日本語ボランティアの活動に参加する機会がありました。現地の大学やコミュニティセンターでは、多くの学生が熱心に日本語を学んでおり、その真剣な姿勢に驚かされました。日本のアニメや文化に興味を持ったことがきっかけという学生も多く、日本に対する関心の高さを肌で感じました。
彼らと会話をする中で、母国語以外の言語を学ぶことの難しさと楽しさを改めて実感しました。そして、自分自身もインドネシア語を学ぶ立場として、「間違いを恐れずに話すことの大切さ」や「言葉が通じたときの嬉しさ」を共感し合える関係性が生まれました。お互いに教え合う中で、言語スキルの向上はもちろん、文化の違いや考え方の違いに気づき、それを認め合う姿勢も自然と身についたように思います。
ときには、日本語で行うフリートークや、簡単な日本文化紹介イベントなども企画し、参加者からの「ありがとう」「もっと話したい」という言葉に励まされました。教える立場でありながら、学ぶことの多い貴重な時間でした。このような経験を通じて、言語は単なるコミュニケーションの道具ではなく、「人と人をつなぐ橋」なのだという実感が深まりました。
また、インドネシアの学生はとてもフレンドリーで、学校ですれ違うときには、ほとんどの学生が笑顔で「Halo!」や「Apa kabar?(元気?)」と声をかけてくれました。名前を知らない学生であっても自然と挨拶を交わす文化があり、その温かさが日常の中に溶け込んでいました。
さらに、大学の外に出ても、人々の親しみやすさは変わらず、街を歩いていても通行人が目を合わせて微笑みかけてくれる場面が多く、インドネシアの人々の優しさと心の余裕を強く感じました。言葉がうまく通じないときにも、身ぶり手ぶりや表情で丁寧に伝えようとしてくれる姿勢には、何度も救われました。
こうした日常の中で、「人と人との距離が近い」文化に触れることができ、異文化でありながらどこか懐かしさを感じるような安心感も得られました。インドネシアでの生活を通して、言葉を超えたコミュニケーションの力、人とのつながりの温かさを強く実感し、この経験が今の私の価値観にも大きな影響を与えています。

 

 

【最後に】
長いと思っていた1年間の留学生活も、気がつけば残りわずかとなりました。この1年間は、振り返れば本当にさまざまな出来事が詰まった、かけがえのない時間だったと感じています。言葉の壁や文化の違いに戸惑うことも多く、時には自分の無力さを感じて落ち込むこともありました。しかし、その一方で、現地の人々の温かさや、思いがけない出会い、そして日々の小さな成功体験が私を何度も励まし、前に進む力を与えてくれました。
特に、自分の殻を破ってさまざまなことに挑戦してきた経験は、自分自身を大きく成長させるきっかけとなりました。授業での発言や現地の人との交流、日本語ボランティアとしての活動、友人とのディスカッション、すべてが私にとって新しい挑戦であり、その一つひとつが積み重なって、「やってみれば案外できる」「まずは行動してみよう」という前向きな姿勢を育ててくれました。
「何事も挑戦してみることが大切だ」という学びは、今後の人生にも深く影響を与えると思います。そして、この留学を通して得たのは語学力や異文化理解だけでなく、自分の可能性を信じる力、そして他者との関わりの中で支え合い、学び合う姿勢です。今では、どんな環境においてもきっとやっていけるという自信を持てるようになりました。
この貴重な経験は、ここで出会い、支えてくださったすべての人たちのおかげです。先生方、友人、ボランティア活動を通じて出会った日本語学習者、そして日常生活の中で関わったすべての人々に、心から感謝しています。
残りの留学生活も、一日一日を大切にしながら、悔いのないように過ごしたいと思います。そして最後まで、この経験を自分の成長につなげられるよう、全力で取り組んでいきたいです。