前期学位記授与式が9月14日板橋校舎多目的ホールで行われ、51人が学部を卒業、ならびに博士課程前期課程・後期課程を修了した。
学位記授与者の詳細は以下のとおり。
外国語学研究科 博士課程後期課程日本言語文化学専攻1人
経済学研究科 博士課程前期課程経済学専攻1人
外国語学研究科 博士課程前期課程日本言語文化学専攻2人
文学部 日本文学科1人、英米文学科4人、教育学科3人
経済学部 社会経済学科5人、現代経済学科6人
外国語学部 中国語学科2人、英語学科2人、日本語学科1人
法学部 法律学科5人、政治学科1人
国際関係学部 国際関係学科4人
経営学部 経営学科3人、企業システム学科5人
環境創造学部 環境創造学科4人
スポーツ・健康科学部 スポーツ科学科1人
学長告辞・門脇廣文学長
本日の前期学位授与式を迎えられた卒業生・修了生の皆さんに、大東文化大学の教職員を代表してお祝いの言葉を贈ります。
ただいま「学位記」をお渡しました学部生47名、大学院生4名の卒業生・修了生の皆さん、おめでとうございます。心よりお祝い申し上げます。
今日の卒業式を迎えるまでに、単位の取得のため、また卒業論文や修士論文、博士論文の完成のために、さまざまな努力を重ねて来られたものと思います。その中にはつらく苦しいこともあったことと思いますが、そういったときに相談に乗り、あるいは指導に当られた先生方、また誠心誠意対応してきた事務職員の方、全ての方々が、皆さんの卒業、そして修了を心より喜んでおります。
【1】大東文化大学について
さて、皆さんはこのたび大東文化大学を卒業し、あるいは修了することとなった訳ですが、そのような時に当たり、皆さんが学んだ大東文化大学とはいったい、どういう大学なのか、そのことを、改めて認識しておいていただきたいと思います。
さて、これが、大東文化大学での「最後の最後の講義」なりますので、しっかり聴いてください。
今日の講義の内容ですが、一つは「大東文化大学について」ということで、「建学の経緯」や「現在の大東文化大学の規模」について再確認しておきたいと思います。
もう一つは、大東文化大学の「建学の精神」と「教育の理念」について、確認しておきたいと思います。
(1)建学のいきさつ
まず「建学の経緯」について見ていきましょう。
大東文化大学は、戦前は、「大東文化学院」と言いました。戦後になって「大東文化大学」となりましたが、大東文化大学の前身である大東文化学院は、いつ創られたのでしょうか。
大東文化学院は、1923年、大正12年に設立されました。本学の創立記念日は9月20日ですので、6日後に、96周年を迎えます。 さらに、あと4年で100周年を迎えますが、長い歴史と伝統を持った大学と言って良いでしょう。
それでは、どのような経緯で創られたのでしょうか。
私立大学には、一般的には「創立者」と言われる人がいます。例えば、慶應義塾大学は福沢諭吉が創り、早稲田大学は大隈重信が、同志社大学は新島襄が創りました。
あるいは、宗教団体、例えばキリスト教の団体が大学を創ることもあります。いわゆる「ミッションスクール」です。上智大学や立教大学などがそうです。仏教の団体が作った大学があるのもご存じのことと思います、
しかし、大東文化大学はそうではありません。大東文化学院が創られたとき、日本は「大日本帝国」と言っていました。したがって、そのときの国会は「帝国議会」と言いましたが、大東文化学院は、その「帝国議会」において議決して創られたのです。一種の国立大学のようなものでした。このような大学は他にありません。非常に特殊な大学だと言って良いと思います。
それでは、大東文化学院は、なぜ作られたのでしょうか。
明治維新が起こって、明治時代になると、西洋の文化が津波のように押し寄せて来ました。そして、それに反比例するように、日本の文化はどんどん顧みられなくなっていきました。
そのような西洋の文化だけを尊重する時代の傾向を是正し、「自国の文化」や「東洋の文化」を見直しもう一度盛んにさせるために、大東文化学院(大東文化大学)は創られたのです。この伝統は、現在も脈々と受け継がれています。
このような大学は、世界中で大東文化大学おいて、外にはありません。皆さんが過ごされた大東文化大学は、そのような世界唯一の大学だということです。
(2)規模
次には、大学の規模について、確認しておきたいと思います。
先ず学生数ですが、現在の大東文化大学には、約11,500人の学生が学んでいます。全国には800近い大学がありますが、この800近い大学の中で、大東文化大学は、学生数ではだいたい30番目から40番目の規模の大学です。そして、皆さんご存じのように、現在は9つの学部があり、さらに、その中に21の学科があります。大学院も、7つの研究科、14の専攻あります。今日卒業、あるいは修了を迎えた皆さんは、その中のそれぞれの学部学科に、研究科専攻に所属されていたということです。
大東文化大学は、このように多くの学部、学科、研究科、専攻を備えた大規模な総合大学なのです。
【2】「建学の精神」と「教育の理念」
次に本学の「建学の精神」と「教育の理念」について見ておきたいと思います。
さて、皆さんは「建学の精神」というのを聞いたことがありますか。「建学の精神」とは、大学を創るときに、その大学をどのような目的で作ったのか、その考え方を文章にして記したものです。私立大学には、どの大学にも、この「建学の精神」というものがあります。もちろん大東文化大学にもあります。
もう一つの「教育の理念」とは、今述べました「建学の精神」に基づいて、学生にどのような教育をして、どのような人材を育成するのかということについて述べたものです。
(1) 「建学の精神」
先ず本学の「建学の精神」は次のようなものです。
漢学(特に儒教)を中心として東洋の文化を教授・研究することを通じて、その振興を図ると共に儒教に基づく道義の確立を期し、更に東洋の文化を基盤として西洋の文化を摂取吸収し、東西文化を融合して新しい文化の創造を目ざす。
まず「漢学(特に儒教)を中心として」とあります。この「漢学」というのは、中国の古典の学問のことです。この「漢学(特に儒教)を中心として、東洋の文化を教授・研究することを通じて、その振興を図ると共に儒教に基づく道義の確立を期し」と続きます。ここで重要なのは「東洋の文化を教授・研究する」とあることです。大東文化大学の最も重要な教育、研究の対象は「東洋の文化」だということです。
その後に「儒教に基づく道義の確立を期し」とありますが、ここにある「道義」というのは、「人として行うべき正しい道」のことです。「モラル」のことです。
その「モラル」を身に付け、「更に東洋の文化を基盤として西洋の文化を摂取吸収し、東西文化を融合して新しい文化の創造を目ざす」ことが、大東文化大学の「建学の精神」です。まず「東洋の文化」を基盤とします。しかし、「東洋の文化」だけを重視するのではありません。「東洋の文化」を基盤とした上で「西洋の文化」を取り入れて「東西の文化」を融合して、さらに「新しい文化」を創造するということです。キーワードは「文化」です。大東文化大学は「伝統文化」と「新しい文化」の中心にあり、「東洋の文化」と「西洋の文化」「世界の文化」の中心にあり、そして「真ん中に文化がある」大学です。
これが、大東文化大学の「建学の精神」の意味するところです。
(2) 「教育の理念」
このような「建学の精神」のほかに、もう一つ、大学にとって最も重要な基本方針があります。それは、「教育の理念」です。「教育の理念」とは、すでに述べたように「建学の精神」に基づいて、学生にどのような教育をして、どのような人材を育成するのかということについて述べたものです「教育の理念」には次のように書かれています。
大東文化大学は、建学の精神に基づき、東洋の文化を中心として広く全世界の文化に関する諸学を研究・教授し、その振興を図ると共に、東洋固有の文化を尊重し、その伝統的美徳を身につけて豊かな人格の形成に努め、併せて国際的な視野を持ち、世界の文化の進展と人類の幸福の実現に寄与できる有為な人材を育成することをめざす。
先ず、「大東文化大学は、建学の精神に基づき」とあります。「建学の精神」は、大東文化大学の最も大事な基本方針であり、言わば大東文化大学の「憲法」のようなものです。 そのような「建学の精神」に基づいて、「東洋の文化を中心として広く全世界の文化に関する諸学を研究・教授し」と続きます。「西洋文化」というところを「広く全世界の文化」と言いかえていますが、これは先ほど見た「建学の精神」の内容とほぼ同じです。
そして、「東洋固有の文化を尊重し、その伝統的美徳を身につけて豊かな人格の形成に努め」と続きますが、この部分は先ほどの「建学の精神」の「儒教に基づく道義の確立を期し」というところに相当します。
さて、ここからが大事なところです。続きを読んでいきましょう。「併せて国際的な視野を持ち、世界の文化の進展と人類の幸福の実現に寄与できる有為な人材を育成することをめざす」とあります。ここでは、「東洋文化」に伝えられてきた「伝統的美徳を身につけて豊かな人格の形成に努め」た上で「国際的な視野」を身につけて「世界の文化」の発展や全人類の幸福のために寄与できる人間を育てるということです。
(3) 一見相対立するように見える「二組の概念」
本学の「憲法」とも言うべき「建学の精神」、それと、「建学の精神」に基づいて、「建学の精神」を教育という視点から捉え直した「教育の理念」という二つの文章に込められているのは、次のような 一見相対立するように見える「二組の概念」です。
最初の一組は、「伝統の尊重」と「新しい文化の創造」です。二組目は、「伝統的美徳」と「国際社会への貢献」、今の言葉で言えば「グローバリズム」です。
最初の一組、「伝統の重視」と「新しい文化の創造」で言っているのは次のようなことです。つまり、東洋、特に日本の伝統文化を尊重し、その上で、新しい文化を創ること。もう一つの「伝統的美徳」と「国際社会への貢献」というのは、東洋、日本の伝統的な「モラル」を身につけた上で、世界の文化の進展を図り、人類の幸福に貢献するということです。
このような「建学の精神」や「教育の理念」を持っている大学は、もちろん他にありません。本学のみが持っている突出した「個性」、あるいは「特長」だと言えます。
皆さんは、この大学を去るに当たり、もう一度、この「建学の精神」と「教育の理念」を読み直し、自分は、このような個性や特長をもった大学で学んでいたのだということを再認識してほしいと思います。そしてそれを誇りに思ってほしいと思います。
また、皆さんが社会に出たら、必ず訊かれます。「あなたが出た大東文化大学って、どういう大学なのですか」と。その時には、胸を張って、私がいま言ったことを話してください。
ポイントは三つです。一つは、帝国議会の議決によって作られた100年近い歴史と伝統を持つ大学であること。二つ目は、たくさんの学部・学科がある総合大学であること。三つ目は、伝統を尊重し、それを踏まえた上で新しい文化の創造を目指す大学であること。伝統的モラルを持って国際社会に貢献する人材を育てる大学だということです。
むすび
皆さんは、今日からそれぞれの道を歩いて行きますが、皆さんが歩いて行く道には、必ず苦しいこと辛いことが待っているでしょう。しかし、大東文化大学で学んだこと、経験したことが、それぞれの道において必ず役に立つはずです。
今日で本学を卒業される全ての皆さん、修了される皆さんには、大東文化大学を卒業した「大東人」であることに自信と誇りを持って、社会において大いに活躍されることを願って止みません。
最後になりましたが、本日の卒業式にご臨席賜りました保護者の皆様に、心より厚く御礼を申し上げますとともに、今後とも、これまでと変わらぬご協力、ご支援を賜りますようお願い申し上げまして、私の「告辞」といたします。