グローバル化の時代に入り、アジア地域は、中国やインドをはじめとする各国の経済発展に伴って国際的な発言力も高まり、世界的にも注目を集めるようになりました。特に中国の急速な経済発展と近年の政治大国化は、アジアだけでなく世界秩序の枠組みに大きな変更を迫っています。一方で、アジア地域には大きな格差が存在し、貧困や環境など生存基盤をめぐる問題、宗教や歴史認識をはじめとするアイデンティティをめぐる対立など、地球的な視野で協力して取り組むべき課題も横たわっています。さらに、日本を訪れるアジアからの観光客や在留外国人が増加する中で、国際協調や多文化共生の意義が改めて問い直されています。
以上のような世界情勢の変化に応えて、アジア地域研究科は、1999年に博士課程前期課程、2001年に博士課程後期課程を設置しました。日本とアジア諸国を取り巻く歴史的経験をふまえ、複雑化する世界情勢を的確に捉えつつ、多角的な視野から政治、経済、社会、文化などにかんする今日的課題に取り組むことのできる人材の育成をめざしています。地域に根差し、地域の人々と共に歩み、世界に発信する——そのためには、長い時間をかけてアジア地域が育んできた固有の伝統の価値を理解し、尊重する姿勢と、新しい時代の変化を読み取り、適切に対応する柔軟性も重要でしょう。アジア地域研究科で院生指導にあたる教員は、東アジア、東南アジア、南アジア、西アジアをフィールドとし、長期の現地滞在と調査経験を持つ専門家ばかりです。
「地球的視野で考え、フィールドから行動する」——そのために、アジア地域研究科では、フィールドワークを奨励し、院生の皆さんへのできる限りの支援に尽力しています。アジア地域研究科発足以来、ほとんどの院生が大東文化大学大学院フィールドワーク奨学金の交付を受けて調査を行い、論文を作成してきました。また、教員と院生の研究成果発表の場として、年一回『大東アジア学論集』を発行し、論文、書評、研究ノート、調査報告、学位論文の要旨などを掲載しています。2014年からは以下のような国際会議を開催し、海外の研究者との学術交流にも取り組んでいます。
- 2014年「台頭する中国とアジアの新秩序」
- 2015年「Social Transformation and Cultural Change in South Asia」
- 2017年「東アジアの戦争と歴史認識」、「第9回『東西文化の融合』国際シンポジウム」
- 2018年「カンボジアの政治状況と日本の関わり」
- 2021年「アジアのマイノリティをめぐる諸問題—多文化共生への道」(東京外国語大学南アジア研究センターとの共催)
- 2022年「在日南アジア系住民との共生を考える」(東京外国語大学南アジア研究センターとの共催)
教員と院生が一体となって、アジア地域の人々と共に行動し、考える——フィールドに根差した研究にチャレンジしたい皆さんを待ち望んでおります。