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レポート中国語圏

【台湾】国立台湾芸術大学

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こんにちは!文学部中国文学科の林です。私は3年次秋学期から4年次春学期までの1年間、台湾新北市にある國立台灣藝術大學の書畫藝術學系に留学しています。学科の奨学金留学制度を利用しましたが、協定校のためこちらでは交換留学生という扱いです。中国文学科から台藝大への留学は前例がなく、入学許可が下りた喜びと同時に不安も抱えての留学でした。今回のレポートでは、渡航から7ヶ月経った4月までの留学生活についてご紹介します。


《学習について》
・授業
書畫系には大きく分けて絵画・書道・篆刻の授業があります。中でも絵画の授業はレベルが高く、クラスメイトも今までずっと絵画を勉強してきた人が多いです。交換留学生はどの学年の授業にも参加することができるので、自分のレベルや目的に合わせて自由に授業を選べます。私の場合は1年生の基礎クラスで絵画・書道・篆刻を幅広く学びつつ、2年生の少し応用的な絵画の授業も選択しました。
また、語学学校ではないため中国語の単位が出る授業はありません。代わりに國際處主催の留学生向け中国語クラスが前期と後期にそれぞれ開講されています。留学生の中には中国語があまり得意ではない人も多く、授業はピンインの読み方等の基礎的な内容から始まりました。
授業は基本的に全て中国語で進みます。特に実技の授業は口頭での説明が多く、聞き取りが苦手な私にはかなり厳しいものがありました。ただ、先生方や学科事務室の方が何かと気にかけて下さるので、困った時はすぐに相談できる環境です。

・課題
授業がない日はほとんど寮で課題を進めています。私は基礎クラスを中心に履修しているので、課題の内容は創作よりも臨書や模刻のような練習に近いものが多いです。水墨画では先生が授業中に描いた絵をまねたり、植物や風景を写生したりしながら基礎を固めます。なかなか作品と呼べるようなものは作れませんが、日常的に書や絵に触れ、できなかったことがどんどんできるようになっていくのはとても楽しいです。
大東書道学科の課題の量が分からないのであくまで体感ですが、こちらの方が課題は多いと思います。毎日コツコツ進めないと徹夜するはめになってしまうので、なかなか遊びに行けません…

 

・語学
私の留学前の語学力はHSK4級程度です。台藝大に留学を申し込むための必須条件だったため、留学を決めた2年生の夏頃に取得しました。しかし、台湾の中国語は大東で教わるものとは違って繁体字を使うほか、発音にも独特の癖があります。文字に関しては書道を学んでいればほとんど読めますが、私は大東の授業でしか中国語を学んだことがなかったため、渡航直後は馴染みのない発音にとても苦労しました。分からない時は言い換えてもらったり文字に起こしてもらったりと、周りの人にいつも助けられています。
こちらでの語学の勉強は週1回の授業+独学という感じで、勉強時間としては授業やその予習復習よりも自習の方が多めです。留学生の中にはオンラインでレッスンを受けている人もいますが、私は日常から単語や構文を拾って覚えることに専念しています。幸い大東の授業やHSKの勉強で基礎がある程度固まっていたので、語彙不足で苦労することはあっても文法で躓くことはあまりありません。
日本人や日本語が話せる現地の人との関わりも意外とありますが、日本語だけで生活できるほどではないので、語学力を伸ばすには良い環境かと思います。


《生活について》
・住環境
私は大学内の学生寮に住んでいます。4人1部屋で、1人あたりの生活スペースにはロフトベッド・机・椅子・クロゼット・本棚・スーツケース置き場があります。シャワー・トイレ・キッチンは共同です。共有スペースには大きな机やテレビもあり、作品制作や楽器の練習をしている人たちで昼間はかなり賑やかです。設備が古い上にところどころカビているのであまり良い環境とは言えませんが、寮費が1学期9500元(約43000円)と安く、何より教室まで徒歩2分なので特に文句はありません。ネズミはきっと気のせいです。あと数年で建て変わるそうなので、このレポートを読んでいる方が留学する頃にはある程度きれいになっていると思います。たぶん…

 

・食事
台湾は食べ物がとても安く、外食しても1食100元(約450円)前後でお腹いっぱい食べることができます。私は自炊よりも外食やテイクアウトをすることが多いですが、食費は奨学金の生活費でやりくりできる範囲内で抑えられているので、食事に関してはあまり節約を意識することはありません。
学校内にはコンビニ・学食・カフェ・バーガー店がありますが、学校の外にもたくさんの飲食店や夜市があります。チェーン店よりも個人店の方が多いので、他には無い味や隠れた名店を探すのがとても楽しいです。

・休日の過ごし方
授業がある時は課題が多いのであまり外出できませんが、長期休みなどの時間がある時には旅行に行くことがあります。知り合いが増えてからは日帰りの展覧会や観光に誘われることも多くなりました。交通機関は比較的整っており、新幹線やバスでは学割も使えるので移動はかなり便利です。
学校内でも時々イベントがあります。國際處主催のものがほとんどなので基本的には留学生同士の交流がメインですが、学科の生徒が開いたパーティーではクラスメイトや先生方とも交流することができました。寮内のイベントは少ないですが、他のイベントで知り合った人と寮内で話したり、一緒にご飯を食べに行くことは多いです。
遊び相手や行き先に困ることはなく、むしろ休日が足りないくらいです。

《その他》
・留学期間について
私は元々3年次春学期からの留学を予定していましたが、新型コロナの影響で半年ほど延期になりました。中国文学科には通年科目が多く、3年次秋学期〜4年次春学期で留学した場合卒業が1年遅れることになります。また、卒論や就活は帰国後に取り組むことになるため、準備期間が短くなります。様々なリスクがある中でこの期間での留学を決めましたが、結果的には良かったのではないかと思っています。
台湾の大学は秋学期から新年度が始まります。そのため、秋学期から留学した場合授業が始まるタイミングで留学を開始することができ、初めて学ぶ内容であっても授業についていきやすいです。春学期から留学した場合は通年科目に途中から参加することになりますが、こちらに来て早々いきなり難しい内容から始まってしまうと慣れるまでがとても大変そうでした。秋学期は新しいクラスが始まったばかりのタイミングでもあるので、友人を作りやすいという点でも良かったと思います。
卒論や就活がほぼ手付かずの状態で留学することに関しては、帰国後への漠然とした不安はあるものの、留学の経験をもとに研究テーマや進路を決められるのは大きいと思っています。台湾で新しい学びや価値観を得て、留学前の自分と今の自分では成長した部分や意識が変わった部分が多いです。もし留学前に研究テーマや進路を決めていたら、留学前の自分と帰国後の自分のズレで苦しんでいたかもしれません。といっても実際に帰国してみないと分かりませんが、台藝大の勉強や留学中ならではの体験に集中できるのは良かったです。あとは帰国後の私が何とかします(笑)

 

・資格履修との兼ね合い
私は社会教育士課程を履修しています。社会教育士課程では3年次夏頃に実習に、冬頃に実習報告会に参加する必要があるのですが、秋学期からの留学となったことで予定通り履修することができなくなってしまいました。実習を延期して帰国後に参加するという選択肢もありましたが、卒論と就活に加えて実習まで帰国後に回すと手が回らなくなってしまうと感じたため、留学前に実習に参加し帰国後に実習報告会に参加するという形を取りました。無理のあるスケジュールにも関わらず対応して下さった先生方や実習先の担当の方には頭が上がりません。
確かに留学することで資格履修のスケジュールに影響が出るのは事実ですが、先生方をはじめとした周りの方は留学に肯定的な方ばかりですし、相談すれば意外と何とかなります。他の資格のことはあまりよく分かりませんが、少なくとも社会教育士に関しては資格履修を理由に留学をためらう必要はないと思います。

 

・中文から書畫系への留学について
前述の通り、中国文学科から書畫系への留学は前例がありませんでした。ただ、実際に留学してみてハンデを感じることはほとんどありません。
私は元々書道を学んではいましたがそれほど技術は高くなく、篆刻や絵画に関しては完全に素人でした。そのためこちらに来てすぐの頃は授業についていけるか不安でしたが、経験がない場合は基礎から学ぶこともできますし、1年生の授業であればクラスメイトとスタート地点はそんなに変わりません。成績や単位に関しても、真面目に取り組んでさえいれば多少技術が低くても単位を落とすことはありません。困ったことを挙げるとすれば、大東書道学科の知り合いが少ないため大東の話をされてもいまいち盛り上がらないことと、中国文学科だと言うと漢詩や文学の話題を振られやすいこと(中国語で言われると全然分かりません)くらいです。書道学科以外の方であっても、書道や絵画が好きで学びたいという意思があるのならチャレンジする価値は十分あると思います。
ただ、書畫系には中国文学科のような文学や哲学の授業がないので、留学中に履修した単位は中国語の語学科目に振り替えられる可能性が高いそうです。これに関しては帰国後に決まるのでまだ分かりませんが、事前に確認しておいた方がいいと思います。


以上、私のこれまでの留学生活について簡単にですがご紹介しました。台湾や留学に興味がある方の参考になれば幸いです。
留学生活も残り2ヶ月となりましたが、少しでも多くのことを学び取れるよう引き続き頑張りたいと思います。
ここには書ききれなかった情報や帰国後のことなどを知りたい方は私と直接連絡を取ることもできますので、国際交流センターまでお問い合わせ下さい。