Education & Research

ものづくりと人材育成(シンポジウム)

日時
2004年12月18日(土) 15時~16時40分
内容
ものづくりと人材育成(シンポジウム)
パネリスト
(社)産業連合会会長 工藤民雄氏
(有)共栄工業会長 増田 孳氏
(株)デンテック社長 木村征夫氏
(株)エーディケイ会長 柴崎辰彦氏
会場
大東文化大学板橋校舎 3号館30101教室

2004年12月18日(土)15時より、上遠野研究員(大東文化大学経済学部助教授)の司会で、第2分科会シンポジウムが開かれました。

木村征夫氏(㈱デンテック社長)

まず、木村征夫氏(㈱デンテック社長)から製造している歯科治療関連商品の紹介がありました。治療から予防へのニーズ変化やグローバル化の進展などでも会社が存続しているのは、「新しい医療に新しい技術を提供できているからです。また、勝ち残れる新商品をつくり、『売上の10%を新製品で』という目標をもっているからです」と経営方針のお話しがありました。

柴崎辰彦氏(㈱エーディケイ会長)

続いて、柴崎辰彦氏(㈱エーディケイ会長)からは、経営方針とサラリーマンから独立した経緯についてお話しがありました。「商売は人間対人間という人の心でするものです。『よき人とのよき出会い』『ものづくりより、まずは人づくり』という方針で経営してきました。メッキ産業は中国へ移りましたが、得意先で困っていることをするという営業で、大手ではできない多種少量生産の仕事をしています。独立する以前から一生懸命仕事をしてきたことがとりえで、毎朝6:30に出社し、社員の顔色(健康)を見ています」。

増田孳氏(㈲共栄工業会長)

増田孳氏(㈲共栄工業会長)からは、ルイ14世時代からの手法で、オブジェや花瓶といった1個2個という少数のものを作るのに用いられるへら絞りの仕事についてお話しがありました。「多くの分野が中国など海外で作られるようになっていますが、へら絞りは生産数が少数であるため材料の運賃だけでできてしまいます。その一方で、その出来が悪いと客が来なくなるという側面ももちあわせており、品質の高さが求められる仕事です」。

工藤民雄氏((社)板橋産業連合会会長)

工藤民雄氏((社)板橋産業連合会会長)からは、会社設立の経緯や需要の変化についてお話しがありました。「会社設立は、父親からの影響を大きく受け、ボタンや電送管のキャップを作り始めます。トランジスタラジオブームで倒産した父親の会社の借金を返済しましたが、大手が作るようになり、テレビ部品で食いつないだ時期もありました。その後、自動車業界にはプラスチック業者が入っていなかったため、積極的に営業をしました。『品質という技術』が最大のセールスポイントだと自負しています」。

シンポジウムの様子

引き続き、「人材育成の位置付け」について、各パネリストからお話しがありました。「プロ意識をもつため、マナーなど一から生活習慣を身に付けることであり、ジョブローテンションの職場環境を目指し、技能検定2級取得を目標に掲げています」(木村氏)。「常に崖っ淵という意識をもち、『当たり前のことを当たり前に繰り返す』ということが人づくりには大切です。従業員教育は、階段掃除のようにトップから頭を切り替えなければいけません」(柴崎氏)。「家族経営は『情』が入るため、クビにできなく難しい」(増田氏)。「『従業員のレベルを知れば自分の企業のレベルを知る』ことができるため、スキルアップとして技能検定1級取得を目指しています。また、ISOよりやや厳しい自動車会社が採用している環境基準を取得しています」(工藤氏)。
上遠野研究員から「人材育成で行政に求められること」について意見が求められました。木村氏からは「単発的なプログラムでフォローがない」「企業への施策は延命措置に過ぎない」「大企業へ目が向いている」の3点が指摘されました。柴崎氏と工藤氏からは助成金の申請や受取、増田氏からは組織のあり方や担当職員についての見直しを求める意見が出されました。

最後に、起業を考えているサラリーマンから、どのような意識をもって起業すればいいのかといった質問がありました。