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パートナーシップを基本理念とした地域社会のあり方について

2001年3月10日13:30~、「パートナーシップを基本理念とした地域社会のあり方について」と題して講演とシンポジウムを開催しました。

概要

第1部 基調講演

テーマ
パートナーシップを基本理念とした地域社会のあり方について
講師
山岡 義典

第2部 シンポジウム

テーマ
魅力ある地域活動からみる新しい地域社会
パネリスト
鎌倉の会
トライアル
大東文化大学の留学生
株式会社 タニタ
神田流神明ばやし
コーディネーター
中村昭雄(大東文化大学)
シンポジウムの様子

今回の『地域デザインフォーラム』のテーマは、「パートナーシップを基本理念とした地域社会のあり方について」であります。パートナーシップという言葉から分かりますように、これには地域社会の(例えば、板橋区の)多くの人々や団体が協働、連携して、ともに住みやすい地域社会を作り出していこうという、願いが入っております。
さて、本日の基調講演は日本NPOセンター常務理事の山岡様からお話がありました。山岡様のお話は、21世紀の社会は、市民・住民が社会を動かす主体である、ということを言っているのではないかと思うわけです。そういった、市民や住民が主体となる時代がやってくるとき、NPOやNGOは、市民の代表としての役割をどう担っていくか、その可能性を考えてみるというのが基調講演のテーマであったと思います。
ただいまのシンポジウムは、5人のそれぞれのお立場から地域との関わりについてお話をして頂きました。 父親、文化・祭り、企業、NPO、外国人、という立場から地域との関わり、地域への貢献について報告がありました。
ところで、NGOという言葉が登場するようになったのは、80年代初頭であったと思います。一方、NPOという言葉は、NPO法【特定非営利活動促進法】の成立との関連で、94年あたりからだと思います。
もう既にご案内のこととは思いますが、NGOの名称の由来は、国連の場に政府の代表ではない、市民の代表としてという意味から「ノン・ガバメント」になったわけで、政府に反対するとか、政府にたて突くという意味ではありません。これは、よく誤解されるところであり、注意しなければなりません。
そして、実は私はここのところがこれからの地域社会、コミュニテイを作っていく場合、重要な点だと思うわけであります。つまり、言い換えるならば、行政の関わり方、行政とのパートナーシップの作り方であります。

大東文化大学法学部政治学科教授 中村昭雄

私は政治学を専門にしていますので、少しばかり今日本が向かっている方向と今日のテーマを関連させて話してみたいと思います。
わが国は、今「分権型社会」の創造に向かっています。それは変動する国際社会への対応、個性豊かな地域社会の形成、少子・高齢社会への対応など、国際社会と国内社会の急速な変化に伴う時代の要請であります。その動きは具体的には、従来の中央集権型行政システムから地方分権への移行であります。地方分権の基本理念は、国と地方公共団体が分担すべき役割を明確にし、地方公共団体の自主性・自立性を高め、個性豊かで活力に満ちた地域社会の実現を図ることであります。そして、その分権型社会の姿は、従来の上下・主従の関係から、対等協力の関係へ、中央主導の画一的な行政から、地域の実情に応じた多様な行政へ、国の指導による受身行政から、住民本位の能動行政へ、地方公共団体が権限と責任を持って、住民ニーズに応じた施策を展開し、住民の知恵や創意工夫を活かした地域やくらしづくりを行っていくことであります。
これを私なりに解釈すると、これから心豊かにいきいきと生活できる板橋を創造するためには、従来のように行政主導、政治家、官僚任せではなく、住民を中心に、学校、ボランテイア、企業、NPO団体、商店街などがいかにネットワークを作り出していくかにかかっていると思います。行政は、前面に出るのではなく、これらのネットワークを支える役割、あるいはコーディネーターの役割に徹しなければならないと思います。これが、これからのまちづくりの基本的なスタイルになっていくものと考えられます。
今、家庭、学校、地域など、いたるところで「人間の心と心が通じる」ことが、一番求められ、一番大切なことではないでしょうか。山岡さんの言葉を借りれば、「心あわせ」のプロセスであります。 それこそが、パートナーシップを基本理念とした、地域社会のあり方にとって、非常に大切なことだと思います。
私ども、板橋区と大東文化大学は、そういう地域社会の実現を目指して、共同研究を進めています。これからも区民の皆さん方とお話をし、区民の皆さん方に参加して頂き、豊かさとゆとりを実感できる社会を目指していきたいと思います。

(大東文化大学法学部政治学科教授 中村昭雄 終わりの挨拶より)

基調講演

講師 / 山岡 義典(日本NPOセンター常務理事)

山岡 義典(日本NPOセンター常務理事)

1941年生まれ。大学で建築学を修め、大学院に進んで都市計画を専攻。69年から77年まで都市の計画や設計の実務につき、トヨタ財団に転職。92年にフリ-になるまで研究助成や市民活動助成で新しい領域を開拓。同時に民間非営利活動の大切さを痛感してその発展のための調査研究や仕掛けづくりに携わる。96年11月、多くの関係者と協力して日本NPOセンターを設立。

シンポジウム

シンポジウムでは、板橋区の地域社会で活動している団体の代表者に活動の内容を紹介していただきました。
地域社会では、今までに見られなかった新しい活動が個人や団体によって営まれています。 その代表が行政に変わる新しい第三セクターとして注目されているNPOです。 また地域社会では、歴史や文化を青少年に伝える活動や、PTAのお父さん、企業・工場、外国人の方々による新しい活動も生まれています。
このような団体や区民の方々が、地域社会の創造を進めています。 今後は、それぞれの主体性や自主性を基本としながら、緩やかなネットワークの構築を進めることが重要になってきます。共同研究では、そのネットワークの方向性についての新しい指針を模索していきたいと考えております。

鎌倉の会

前野小学校の父親の集まりで、「いざ、学校へ」ということで鎌倉の会という名称にした。1学期に1から2回の集まりがあり、主に野球、ソフトボール等のイベントを開催している。昨年、学校のコンピューターのLAN設置を行なった。コンピューターや配線に詳しい父親を募集し、約15名の父親が1日がかりで9クラスのLANを設置した。

トライアル

シンポジウムの様子:トライアル

自転車が快適に走行できる空間の整備及び放置自転車対策に対する事業を行ない、まちづくりの推進と環境の保全に寄与することを目的として設立されたNPO法人(特定非営利活動法人)である。現在、大きな住宅地域と歴史街道をもつ板橋区と、賑わいの副都心である豊島区を結ぶ、自転車道網を整備するまちおこしにチャレンジしている。

大東文化大学の留学生

シンポジウムの様子:大東文化大学の留学生

大東文化大学には、世界各地から多数の留学生が学んでいます。平成12年度は327名が在籍し、アジアからの留学生が多くなっています。卒業生は母国で活躍し、大学院経済学専攻後期課程を満期修了したトンガ王国からの留学生は、現在通産大臣の要職にあります。また、留学生は大学に深く溶け込み、学生生活をエンジョイしています。

株式会社 タニタ

シンポジウムの様子:株式会社 タニタ

(株)タニタは、脂肪計やヘルスメーターなど家庭用計測器のトップメーカーで「健康をはかる」をキーワードに企業展開を図っている。94年の創立50周年には“世界から肥満と飢餓をなくす”ことを願い、公益信託「タニタ健康体質基金」を設立、また、毎年地域の人たちと一体となって「ふれあいの広場健康まつり」を開催するなど地域交流に務めている。

神田流神明ばやし

シンポジウムの様子:神田流神明ばやし

板橋の地に神田から祭りばやしが伝わって130年程になり、この間、各地区でこのはやしを保存伝承してきた。神明ばやしもその一つ。昭和34年以降中断していたが、昭和54年1月、南常盤台天祖神社の周辺の子供たちを中心に復活した。毎週土曜日、神社でけい古を続けている。昭和63年板橋区指定の文化財になっている。