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まちづくりと危機管理 ~地域の安全・安心をどう高めるか?~

概要

2006年11月15日(水)

挨拶(13時30分~)

主催者挨拶
大東文化大学学長 和田守

基調講演(13時40分~14時40分)

テーマ
まちづくりと危機管理 ~地域の安全・安心をどう高めるか?~
講 師
明治大学大学院教授 青山やすし

パネルディスカッション(15時00分~16時45分)

パネリスト
青山やすし(明治大学大学院教授)
石塚輝雄(板橋区長)
鈴木孝雄(板橋区町会連合会副会長)
山口鶴子(板橋区保健所長)
土井幸平(大東文化大学教授)
コーディネーター
中村昭雄(大東文化大学教授)
総合司会
中村年春(大東文化大学教授)
会 場
大東文化大学板橋校舎 多目的ホール

趣旨

地域の安全・安心に関心のある方を対象に、地域の危機管理をテーマとして、地震・洪水、ガス爆発・停電、O-157・新型インフルエンザ、テロ、子どもをまきこんだ事件……などわたしたちのくらしに重大な影響を与える緊急事態に対して、まちは、ひとびとは、何を準備し、どのように対処すべきかを考えます。

基調講演

地域デザインフォーラム・シンポジウムは2006年11月15日13時半より、まちづくりと危機管理をテーマに、第一部は青山やすし・明治大学大学院教授の基調講演、第二部は行政、地域などからの代表者によるパネルディスカッションを、中村年春研究員(大東文化大学経済学部教授)の総合司会で開かれました。パネリストには、青山教授のほか、石塚輝雄・板橋区長、鈴木孝雄・板橋区町内会連合会副会長、山口鶴子研究員(板橋区保健所長)、土井幸平研究員(大東文化大学環境創造学部教授)が参加し、コーディネーターの中村昭雄研究員(大東文化大学法学部教授)により進められました。シンポジウムには、多くの区民をはじめ、学生や区職員など300名を超える参加者があり、危機管理に対する意識を高めるものとなりました。

基調講演に先立ち、総合司会の中村(年)研究員から開会挨拶後、主催者を代表して、和田守・大東文化大学学長より挨拶がありました。和田学長は、板橋区の基本構想へ座長として参画した経験から「板橋区はマンションが多く立地するなど地域社会が変わりつつあります。危機管理は、新しく、そして大きな課題として位置付けられるもので、その趣旨を基本構想に採り入れました」。また、本フォーラム設立に深く関わった経緯と関連して「本学は、広い意味での地域社会の一員です。地域デザインフォーラムの成果を受け、学部や大学院での教育と結びつき、さまざまと取り組みをおこなっています。また、来年度には大学院に公共政策コースを設置し、地域に貢献する人材の育成に取り組みます」と大学の役割と共同研究の意義を示し、最後に「有意義なシンポジウムとなることを心より期待しております」と挨拶がありました。

青山教授の基調講演

引き続き、青山教授の基調講演に移り、調査訪問した米・ニューオーリンズ州の状況や東京都副知事時代に三宅島で陣頭指揮をとったご自身の経験などから、危機管理に対する総論的なお話を、多くの写真などを利用して視覚的にしていただきました。
まず、カトリーナ被害の調査から、青山教授は「日本で『海抜ゼロ 危機感薄』という記事がありましたが、ゼロ地帯住民の危機意識が薄いというのは、日常生活においてというよりは、実は字を読めない人が被災前に47%もいたということが影響しています。これは一方で、隣のアラバマ州では一人の死者も出さなかったこととは対照的です。市民活動家に聞いて分かったのです。被災者の多くはハリケーンが来ることが分からなかったのですから、復興(=教育を含め)するには30年は必要といわれています」と報道による誤解の可能性と教育の重要性を指摘します。危機管理全般に通ずることとして、「誰かがリーダーシップを発揮するのではなく、一人一人が意識して、いざというときには逃げるということを徹底すべき」と主張されました。

また、三宅島噴火では過去の経験が活かされ、「被災者は2年後には(仮設住宅から離れ)公営住宅に入ることになりますから、それを建てました」と限定的な仮設住宅建設のお考えを示されました。避難所運営については、「被災者は異常な心理状態ですから、マイナスの噂を信じるようになります。食の豊富さをみせることで、日常と同じような対応も可能になります」と自治体の役割の重要さを、また、そうならないためにもプレスへ「通常より時間をかけてきっちり説明すべき」ということを指摘されました。避難生活の面では、「孤独死をさせないためにも、都営住宅など既存のコミュニティで対応してもらいました。行政は口出しせず、ボランティア団体に島民ふれあい集会や帰島など全部任せました」と行政にはできない細かな対応は民間でしてもらうとの役割分担を示されました。
このほか、自然災害に対する印象と実態とがかけ離れていることや、危機管理に関する用語、ISO(国際標準規格)で策定中の危機管理の規格についても説明され、最後に、「復興は人が元々生きていた場所に帰ることです。危機管理はこのことを最後の視野に入れるべきです。日ごろから(教育や間違いをしないことを)きちんと積み重ねていることが危機管理に通じています」と日常の重要性を指摘されました。

パネルディスカッション

20分の休憩をはさみ、青山教授も交え、パネルディスカッションに移りました。コーディネーターの中村(昭)研究員から各パネリストの紹介後、問題意識についての説明をした上で、3つの質問がなされました。

質疑応答では、「公助が必要となる規模の判断基準は?」「障害者への対応と情報保護は?」「風化させない方法は?」などの質問がありました。最後に、中村(昭)研究員から、青山教授の著書の一節が紹介され、パネルディスカッションを締めくくりました。

最後に、本間修・地域連携センター所長から閉会の挨拶があり、3時間超にわたるシンポジウムを終えました。