Graduate school

外国語学研究科

日本語学科20周年記念シンポジウムに約180人の来場者

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基調講演を行った鈴木教授

 日本語学科20周年記念国際シンポジウム「海外における日本語教育と日本研究の現状と展望」が、6月16日に板橋校舎多目的ホールで行われ、学内外から約180人の参加者が集った。
 午前中には、大学院日本言語文化学専攻の院生による研究発表が行われ、渡辺良彦外国語学部長が日本語学科・日本言語文化学専攻のあゆみを振り返り、さらに、外国語学会日本語部会の研究会および教職・日本語教師・就職のプロジェクトの院生・学生が活動の歴史と現況を報告、国内の小中高校で専門的日本語教育のできる国語科教員、海外の大学の日本語教員を輩出してきた20年の歴史を振り返った。
 シンポジウムでは、国際日本文化研究センター(日文研)の鈴木貞美教授による基調講演「日本研究の国際動向と今後-日文研での経験から-」を踏まえ、つづくパネル・ディスカッションでは、日本語学科の教員ならびに外国人研究者がアジア・欧米・中国の3つのグループに分かれ、それぞれの国や地域の日本語教育と日本研究について報告し、会場の研究者・学生を交えて活発な議論が行われた。

当日の議論内容は次のとおり

会場風景

 60年代の高度経済成長以降、日本企業の海外進出を背景に、アフリカ中南部を除く世界各地で日本語学習熱が急速に高まり、本学の日本語学科もその潮流の中で開設された。バブル崩壊後も、日本のまんがやアニメなど、サブ・カルチュアの人気で日本への関心は衰えるところを知らない。
 現在も、海外の大学では日本語の履修を希望する学生が増大し、日本語のクラスに受け入れきれないほどの活況を呈し、日本語教員の数が絶対的に不足している。
 各国ともに、大学の日本語教員は日本研究者であり、日本語教育と日本研究の下部構造は安定しているとみてよい。海外における日本語教育は、日本文化の教育研究と不可分であり、現地の事情に通じた日本語教員と連携して、文化面の充実をはかった教育方法・テキストの開発が期待される。日本語教育のテキストの各国語訳を望む声もあがった。
 一方、日本研究は、従来のJapanologyからJapanese studiesへの転換を迫られている。 かつて、Japanologyは、ヨーロッパにおいては19世紀後半から東アジア研究の一環として文献学的アプローチが、北米では、第二次世界大戦後、主に外交政策の一環として研究が行われてきた。しかし、高度経済成長期を経て、これらアジアの国々をどう捉えるかという観点が拡大・多様化し、Japanese studiesとして、日本における種々の文化現象に対する分野別アプローチに転換してきている。
 さらに、中国の台頭によって、日本研究は、アジア研究の一分野として相対的な地位が低下する傾向にある。これによって、海外の日本語・日本学教員の人事枠も、中国に取って代わられ、減少の傾向にあり、国や国際交流基金の援助が強く求められる。
 国際的・学際的な共同研究に立ちはだかる大きな壁は、「村社会」ともいうべき個別の研究分野の壁である。海外の日本学と連携してゆくためには、学術の総合化、すなわち、文化現象を総体的に把握しようとする新しい研究の観点に目を向ける必要がある。
 国際的な研究が大きな潮流をなし、海外の日本学との連携が求められるようになってきた現在、大正12(1923)年に漢学振興を目的として当時の国会にあたる帝国議会の決議で開設された本学の教育研究にも、研究分野の壁を超えた学際的な協力体制が必要となってゆくであろうとの意見も最後にあった。